の一部は、蔣介石の遺体が置かれている桃園県大渓鎮の慈湖には「慈湖紀念雕塑公園」があり、数
百体の立像や座像の蒋介石像が展示され、なんともおぞましい光景が繰り広げられている。奇観と
言っていい。夜は薄気味悪く、とても一人で行く気にはならないところだ。
評論家の黄文雄氏は自著『蒋介石神話の嘘─中国と台湾を支配した独裁者の虚像と実像』(明成
社、2008年)の表紙に、蔣介石像が立ち並ぶこの「慈湖紀念雕塑公園」の写真を使っている。
◆黄文雄『蒋介石神話の嘘─中国と台湾を支配した独裁者の虚像と実像』(明成社、2008年)
http://www.amazon.co.jp/%E8%92%8B%E4%BB%8B%E7%9F%B3%E7%A5%9E%E8%A9%B1%E3%81%AE%E5%98%98%E2%80%95%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%81%A8%E5%8F%B0%E6%B9%BE%E3%82%92%E6%94%AF%E9%85%8D%E3%81%97%E3%81%9F%E7%8B%AC%E8%A3%81%E8%80%85%E3%81%AE%E8%99%9A%E5%83%8F%E3%81%A8%E5%AE%9F%E5%83%8F-%E9%BB%84-%E6%96%87%E9%9B%84/dp/4944219709
ところで、台湾各地の学校に設置されている蒋介石の銅像の撤去を求める高校生の動画が7月14
日に投稿され大きな反響を巻き起こしている。動画の再生はすでに3万6000回を突破している。
これは、戒厳令の解除が発表された1987年7月14日に合わせ、建国高級中学や成功高級中学、台
北第一女子高級中学などの高校生たちが「今こそ蒋介石の銅像を撤去する時」と訴えかけている動
画だ。
台湾随一の進学校、建国高級中学出身の林建良氏がその動画を「蒋介石は、我々台湾人の最大の
敵」とコメントして紹介している。下記にメルマガ「台湾の声」から紹介したい。
なお、日本の蒋介石観の中には蔣介石が言ったという「以徳報怨」を高く評価する向きがあり、
「天皇制を護持してくれた」「対日賠償請求権を放棄してくれた」「支那派遣軍と在留日本人を無
事に送還してくれた」「国土分割を救ってくれた」というような「神話」が未だにまかり通ってい
る。
しかし、それについては、すでに黄昭堂氏や宗像隆幸氏によって完膚なきまでに論駁されてい
る。詳しくは台湾独立建国聯盟のホームページに当たっていただきたい。
また、黄文雄氏の『蒋介石神話の嘘』の紹介文でも、下記のように解説している。
<しかし、これらの蒋介石神話が半ば虚偽であったことは今日既に明らかにされている。蒋介石の
幕僚は、天皇を戦犯リストに加えているし、蒋は日本へ賠償を要求している。大陸から日本の兵隊
や民間人を急いで帰したのも、蒋の軍隊が百戦百敗した強力な支那派遣軍を刺激せぬためだ。多く
の罪もなき日本人を戦犯裁判で処刑したのも蒋の政府である。>
台湾の総統府國史館でさえ、2万とも3万ともいわれる前途有為な台湾の青年たちを虐殺した「二
二八事件の最大の責任者は蒋介石だった」と指摘していることも忘れてはならない。
◆台湾独立建国聯盟
http://www.wufi.org.tw/
【メルマガ「台湾の声」:2014年7月18日】
映像・台湾高校生の訴え 蒋介石の像を追い出せ(転載自由)
https://www.youtube.com/watch?v=RkEJYG88PQc#t=68
台湾では1987年7月15日に38年にわたる世界最長の戒厳令がようやく解除された。戒厳令時代に
は無数の台湾人エリートが蒋介石政権の弾圧によって投獄され、虐殺された。
その残酷な蒋介石は、我々台湾人の最大の敵である。
ところが、今でも彼の銅像が台湾の各高校の校庭に置いてある。私の高校時代には学校常駐の軍
事教官が学生たちを監視し、蒋介石の銅像に一礼してからでないと学校に入ることが許されなかっ
た。
戒厳令解除27周年に合わせて台湾の高校生たちが映像を作り、蒋介石の銅像を校庭から撤去する
ように訴えている。
尚、映像の冒頭は私の母校「建国中学」の正門であり、後ろにある赤レンガの建物は日本統治時
代に建てられたものだ。その建物は日本と台湾との師弟の絆とみてもよいだろう。
しかし、少なくない日本の保守派が今でも蒋介石のことを美化して彼の記念碑まで建てている。
それは台湾人の心を踏みにじるものだ。
そのことは台湾の歴史への無関心だけでなく、傲慢さによるものだと私は感じる。
「台湾の声」編集長 林 建良