7月26日夜、李登輝総統は6日間にわたる訪日を無事終了し、台湾桃園空港へ到着しました。
訪日3日目の7月23日昼、李登輝総統は東京有楽町の日本外国特派員協会において講演を行いまし
たが、質疑応答の席上、「尖閣列島はどこの国のものでしょうか」と問われ「尖閣列島は台湾のも
のではありません。日本のものです」と発言したことに対し、国民党や総統府を含め、台湾国内か
ら反発の声が上がっています。
また「外患罪を適用せよ」、「退任総統として政府から受けている優遇措置を剥奪せよ」といっ
た過激な批判をする輩もいます。
しかし、李登輝総統が「尖閣列島は日本の領土」と発言したことはこれが初めてではなく、2008
年9月に沖縄を訪問した際も、仲井眞弘多(なかいま・ひろかず)知事(当時)が出席する昼食会
で発言していますし、著書『日台の「心と心の絆」 素晴らしき日本人へ』(宝島社)や『李登輝
より日本へ 贈る言葉』(ウェッジ)などでは、より詳しく「尖閣列島は日本の領土だ」という根
拠を説明しています。
李登輝総統事務所では、帰国翌日の27日、こうした批判に対する声明を発表しています。下記に
日本語訳を掲載します。
◇ ◇ ◇
上述しましたように、李元総統は沖縄を訪問された2008年9月24日、仲井眞知事との昼食会にお
いて「尖閣列島はまちがいなく日本の領土」と明言しています。その後、本会は『誇りあれ、日本
よ─李登輝・沖縄訪問全記録』(まどか出版、2009年)を編纂、その第5章に「尖閣諸島は日本
領」を設け、柚原正敬・本会常務理事が「『尖閣発言』の衝撃」と題して詳細を記しています。
当時の台湾外交部は「個人的意見に過ぎず、歴代政府の立場と反する」と表明しましたが、個人
的見解として容認する表明ともなり、台湾内に尖閣諸島を日本領とする見解が存在することを認め
ざるを得ない立場に追い込まれる形となりました。
また、柚原常務理事もその「『尖閣発言』の衝撃」で紹介しているように、李元総統は13年前の
2002年9月24日付「沖縄タイムス」紙のインタビューで「尖閣諸島の領土は、沖縄に所属してお
り、結局日本の領土である。中国が、いくら領土権を主張しても証拠がない」と述べています。
以来、いろいろなところで何度も同じ発言を繰り返されています。「なにを今さら」の感が深い
国民党や新党による批判です。
今回の訪日が円満かつ成功裏に終わり、関心を寄せて下さった国民の皆様に対し、大変感謝申し
上げます。今後、日台両国における各方面の交流や協力がさらに緊密化することを期待していま
す。
しかし、国民党や新党による批判は、明らかに党の生存、存続を意図する選挙のためのショーに
すぎない。退任総統に対する優遇措置の剥奪や告訴などといった妄言と歩調を合わせる必要はな
く、メディアや司法、立法の資源を無駄に消費しないよう求めるものである。
「尖閣列島は日本の領土」という李登輝総統の発言は、すでに国内外の公開の場で何度も発せら
れてきたものである。よって、李登輝総統を批判する人々の「密約があった」「取り引きした上で
の発言」などという妄言は笑止千万である。
自分のものでないものを、欲しいからといって対外的に放言し続けるのは自らを催眠術にかけて
いるようなものである。台湾と中国の関係のように「台湾は台湾、中国は中国」という現状はすで
に国内外で認知されており、疑いの余地はない。尖閣列島の問題も同様である。
台湾の主体性を確立する道は、これからも国民の継続的な努力を必要としている。
李登輝総統はこれまで発言してきたのと同様「私は台湾のために全力を尽くすことを決心した。
台湾を外来政権の軛から解放し、自由な国家に生まれ変わらせようとしてきた。そして『台湾人に
生まれた悲哀』を『台湾人に生まれた幸せ』に転換させる、それが私が全力でやってきた目標だ」
と発言している。
良心を忘れた一部の政党が、史実をねじ曲げて国民を欺き、有権者の票を騙し取ろうと意図する
ならば、昨年11月29日の惨敗が再び繰り返されることになるだろう。政治に携わる者は、今一度あ
の教訓を思い返すべきである。
李登輝総統弁公室
2015年7月27日