台湾を代表するオーケストラ、台湾フィルハーモニック(National Symphony Orchestra、NSO)は、4月末から日本で演奏会を開催する。演奏会は30日に、音楽の殿堂として国内外に名高い東京文化会館(東京都)で、5月6日に、ザ・シンフォニーホール(大阪府)にて行われる。また、5月3日から同5日に石川県・金沢市で開催される「風と緑の楽都音楽祭 2019」にも招きを受けて出演する。
台湾フィルハーモニックは日本演奏会に先駆け20日、「NSO日本演奏会出発前コンサート」を台湾北部・台北市の国家音楽庁(ナショナル・コンサートホール)で開催、台湾のファンの前で一足早く東京と大阪で演奏する4曲を披露する。
今回の演奏会で指揮も務める台湾フィルハーモニックの呂紹嘉(リュウ・シャオチャ)音楽監督は、15日の記者会見で「今回の演奏会のプログラムを通して、台湾と日本の歴史や文化における関係を表現したい。また台湾出身の作曲家・声楽家、江文也の管弦楽曲『台湾舞曲』も曲目に入っている」と紹介した。
呂紹嘉音楽監督は江文也について、「日本占領時代に台湾で生まれ、現在でも最もアピールする価値のある台湾の作曲家。日本で音楽を学び、日本の数々の音楽コンクールで受賞した経歴を持つが、いつも2位止まりだった。1936年に日本代表としてベルリンオリンピックの芸術競技で『台湾舞曲』を出品し、銅メダルを受賞した。これはこれまで同競技に参加した日本の作曲家で、唯一の入賞者という快挙だ」と説明した。
呂紹嘉音楽監督が台湾舞曲を選んだのは、ベルリンオリンピックの受賞曲という経歴からで、2020年に東京でオリンピックが開催されることにリンクしている。
台湾舞曲は、非常に独創性豊かで、リズムや演奏に使われる楽器も独特だという。呂紹嘉音楽監督は、「台湾舞曲は台湾の民謡に起源するものではなく、ジャングルが生い茂っている台湾を彷彿とさせるような原始的なイメージを抱かせる楽曲。作曲者が故郷をどれだけ愛しているかが伝わってくるが、作品のメロディには日本の音楽要素が数多く引用されており、とても興味深い。わざとらしさのない自然な、当時の台湾と日本の文化的な雰囲気が反映されている」と指摘した。
その他の曲目には、日本の作曲家・指揮者、芥川也寸志の「交響管弦楽のための音楽」も入っている。「交響管弦楽のための音楽」は「台湾舞曲」よりも後に作曲されたが、ほぼ同年代に発表された楽曲といえる。芥川也寸志は日本の文豪、芥川龍之介の三男で、ロシアで音楽を学んだ。「交響管弦楽のための音楽」の曲調は、ドミートリー・ショスタコーヴィチ(DmitryShostakovich)、セルゲイ・プロコフィエフ(Sergey Prokofiev)など20世紀に活躍したロシアの作曲家の影響を強く受けている。
そのほか、数々のコンクールで優勝して注目を浴びている、台湾系米国人のヴァイオリニスト、リチャード・リン(林品任)も出演し、メンデルスゾーンのバイオリン協奏曲ホ短調を披露する。