日までに手続きを終える必要があるという。2009年から「中華台北(チャイニーズ・タイペイ)」
の名称でオブザーバー参加してきた台湾に、今年はなかなか招待状が届かなかった。
例年なら開催1ヵ月ほど前には届くマーガレット・チャン事務局長(香港出身)から台湾への招
待状は、5月6日になってようやく発送されたという。
しかし、今年の招待状には、例年と異なり、「一つの中国」の原則を強調する特記事項が記され
ていたことが明らかとなった。次期政権与党の民進党は5月8日、「WHAへの出席を決める一方、
中国による政治的な干渉だとして抗議を表明した」とNHKニュースが伝えている(下記)。
台湾メディアも日本メディアもこの状況を「異例」と報じ、その原因について、台湾国際放送も
NHKも「中国が『92年コンセンサス』を認めない蔡英文・次期総統、及び政権与党となる民進党
を牽制するため、WHOに圧力をかけた」とする見方を伝え、共同通信も「中国が例年通りの発送
に直前まで反対していたとみられる」と伝えている。
では、中国政府はこれについてどのように発表したか。
中国・国務院台湾事務弁公室の馬暁光・報道官は5月6日、特記事項が記された経緯には触れず、
「2009年から、台湾はWHOの年次総会に出席できるようになったが、これは両岸双方が『九二共
通認識』を貫くという基礎がある上での特別な決定だ。今年に入ってから、台湾は数回にわたって
総会に引き続き参加したいとの意欲を表したため、われわれはその意思を尊重し適切に処理した。
このことは大陸の両岸関係の平和発展を維持したいという願いを十分に物語っており、大陸が表し
た善意でもある」(5月7日付「China Radio International」)と述べている。
やはり「92年コンセンサス」を認めていない蔡英文・次期総統や民進党政権に対し、中国が「一
つの中国」の受け入れを迫ってWHOに圧力をかけたというのが事実だろう。
しかし、ことは適正な医療・医薬品などの情報や普及に関する人間の命にかかわる事柄で、基本
的人権の問題だ。そこに「一つの中国」という政治問題を持ち出すことは、「すべての人々が可能
な最高の健康水準に到達すること」を目的とするWHOの原則に反することは言うまでもなく、ま
してやWHOの最高意思決定機関といわれる年次総会への台湾の参加を邪魔立てしようとするの
は、嫌がらせの域を超えた人道にもとる人権軽視の行為と言ってもよい。
今回の特記事項付記事件は、またもや覇権国家・中国の本性を露呈した。
台湾 WHO総会招待状に“1つの中国”で抗議
【NHKニュース:2016年5月8日】
今月20日に民進党による新しい政権が発足する台湾では、発足直後に開かれるWHO=世界保健
機関の総会への招待状に、「1つの中国」の原則を強調する内容が含まれていたことが明らかにな
り、民進党は、総会への参加を決める一方、中国による政治的な干渉だとして抗議を表明しまし
た。
台湾では今月20日に民進党による新しい政権が発足しますが、発足直後の23日にスイスで開かれ
るWHOの年次総会について、台湾の当局は、WHOの事務局から出された招待状に、例年と違
い、中国が主張する「1つの中国」の原則を強調する内容が含まれていたことを明らかにしまし
た。
対応を検討していた民進党は8日夜に声明を出し、「われわれは長年にわたり国際的な医療や感
染症の予防に対して貢献を深めてきた」などとして、総会への参加を決めたと発表しました。
その一方で、中国政府の当局者が、台湾の参加については「1つの中国」の原則の下で認められ
ると発言したと指摘し、「政治的な干渉であり、受け入れられない」として抗議を表明しました。
1971年に国連から脱退した台湾は、国民党政権時代の2009年からオブザーバーの資格でWHOの
総会への参加が認められてきました。
このため台湾では、「1つの中国」の原則を認めていない民進党に対し、この原則の受け入れを
迫る中国がWHOに圧力をかけたとの見方が広がっています。