その内訳をみると、撤退した249社は年商10億円未満の企業で、10〜100億円未満は2016年の6,058社から6,066社(2019年)に微増、100〜1000億円未満は2,560社から2,611社に増え、1000億円以上も569社から605社に増えている。
人件費高騰や米中貿易摩擦の影響を受けやすい企業から撤退しはじめているという状況のようだが、報道によれば、大手製造業や卸売業では中国企業との取り引き見直しや東南アジアへの生産拠点移設などの動きがすでに出てきているというから、今後、大手企業の中国撤退も視野に入ってきているようだ。
一方、台湾の2018年の貿易額は輸出入ともに増加し、輸出が前年比5.9%増の3,360億5,026万ドルと過去最高となり、輸入が10.6%増の2,866億5,543万ドルで過去2番目の水準だったという。
輸出の内訳を見てみると、中国(28.8%)と香港(12.4%)で41.2 %を占め、米国(11.8%)、日本(6.9%)となっている。前年比でみると、中国(8.8%)・香港(0.9%)、米国(7.5%)、日本(11.1%)と伸びていた。
ところが、対中輸出が減りはじめ、昨年の第4四半期(10〜12月)の0.3%減に引き続き、今年の第1四半期(1〜3月)も前年同期比12.3%減となり、2期連続の減少となっているという。
それとは対照的に対米輸出は好調で、昨年の第4四半期は106億2,000万ドル、今年の第1四半期も19.3%増の106億1,275万ドルだったという。
ジェトロ海外調査部中国北アジア課アドバイザーの嶋亜弥子(しま・あやこ)氏が、6月10日に発表された台湾財政部の貿易統計速報を分析しているので下記に紹介したい。
—————————————————————————————–台湾の対中輸出、2期連続で減少嶋 亜弥子(ジェトロ海外調査部中国北アジア課アドバイザー)【日本貿易振興機構(ジェトロ)「ビジネス短信」:2019年6月27日】
◆表1:台湾の対中輸出(上位10品目) 表2:台湾の対米輸出(上位10品目) https://www.jetro.go.jp/view_interface.php?blockId=28803711
台湾財政部が6月10日に発表した貿易統計速報によると、2019年第1四半期(1〜3月)の台湾の輸出は、前年同期比4.2%減の763億2,825万ドルだった(表参照)。国別でみると、中国へは12.3%減の203億4,787万ドル、米国は19.3%増の106億1,275万ドルとなった。対中輸出は2018年第4四半期(10〜12月)の0.3%減に引き続き、2期連続のマイナスとなった。
第1四半期の対中輸出の上位10品目をみると、集積回路(IC)(20.4%減)、電子部品(集積回路を含まない)(10.8%減)、液晶デバイス(9.9%減)、エチレングリコール(32.3%減)などがマイナスに寄与し、輸出主力品目の減少が目立った(添付資料の表1参照)。一方、コンピュータ部品(90.2%増)、記憶媒体(51.0%増)は急増した。
対米輸出の上位10品目をみると、前年同期比で2桁以上増加した品目は自動データ処理機械およびその付属品(2.7倍)、コンピュータ部品(51.1%増)、スイッチング機器およびルーティング機器など(84.8%増)、電子部品(集積回路を含まない)(26.7%増)などで、特に自動データ処理機械およびその付属品は大幅に増加しており、第1四半期の輸出増加に大きく寄与した(添付資料の表2参照)。
なお、貿易統計速報によると、2019年1〜5月累計の輸出は前年同期比4.2%減の1,298億7,942万ドルだった。5月の輸出は前年同月比4.8%減の277億1,710万ドルと、月次ベースで2018年11月から7カ月連続のマイナスとなった。
台湾財政部は、米中貿易摩擦の影響を受けて世界経済の成長が鈍化しつつあり、加えて、国際原材料価格低下、前年の基数の高さなどの影響を受けたものと分析している。また、将来的に米中貿易関係が膠着(こうちょく)化すれば、企業投資や世界的なサプライチェーンに影響を与え、国際経済での不確実性を高め、ハイエンドスマートフォンのライフサイクルが長期化し、輸出の勢いがそがれることとなりかねない。
ただし、一部のメーカーによる台湾での生産増加(台湾回帰)や、第5世代移動通信システム(5G)、人工知能(AI)、モノのインターネット(IoT)など新興産業のビジネスチャンスが持続的に拡大しており、一部のマイナスの影響を相殺すると予測している(2019年6月26日記事参照)。
(嶋亜弥子)