(法相)らに上告断念を違法に働き掛けた司法介入だとして、馬英九総統が辞任を要求、
与党の中国国民党が党籍を剥奪した台湾政界の「政変」。
王院長は比例代表選出のため、党籍を失えば立法委員を失職、立法院長の地位も失う。
そこで台北地裁に地位保全を求める仮処分申請を行い、台北地裁が仮処分申請を認めたた
め当面は党籍とともに立法院長職にも留まることになった。
産経新聞がこの一連の政変劇を丁寧に整理してフォローしている。いさかか長い記事だ
が別掲してご紹介したい。
ただ、よく分からないのが民進党の姿勢だ。事の発端は、王院長に「口利き」を依頼し
たとされる民進党の柯建銘・立法委員にある。しかし、この柯議員に対する民進党の対応
がまったく不明なのだ。柯議員は2年前の「全民電通背信」事件の一審では有罪判決で懲役
6ヵ月を言渡されたが、二審は無罪だったものの検察側は上告しなかった。柯議員は検察が
上告しないよう王院長に口利きを依頼したとされている。
柯議員の処遇をめぐって、世論調査(9月13日付け「聯合報」)では48%が民進党は党
の規律で柯建銘を処分すべきであると回答している。
ところが、民進党は柯議員の処分に触れず、憲法の不備に問題があるとして憲法問題化
しようとしている。
台湾の報道によれば、呂秀蓮・元副総統は馬総統が王院長を辞めさせようとしたことは
違法であり憲政体制の破壊だと述べ、「馬罷免公民連盟」を発足させるそうで、謝長廷・
元行政院長も国民の憲法意識を高めたいとして馬総統との憲法論議を公開状で要請したと
いう。
主席の蘇貞昌氏はというと、10月15日に予定されていた両岸サービス貿易協議をテーマ
とした馬総統とのテレビ討論には出席しないと、国民党が王院長の党籍を剥奪した9月11日
に早々に表明しただけで、柯議員の処分については触れていない。
ただ、民進党の中でも林濁水・元立法委員は、民進党は自発的に調査し、確実な証拠が
あれば柯建銘議員を除名すべきであり、証拠がなければ検察官の権力乱用を追求すべきだ
と述べているという。
所属する立法委員に違法行為の疑いがかけられているにもかかわらず、それを調査しよ
うとしない民進党の対応には首を傾げたくなる。濡れ衣なら晴らすのが筋であろう。世論
調査に現れた台湾の人々の認識の方が健全なのではなかろうか。
馬総統の冷静を欠いた対応が強引な印象を与え、支持率が11%まで落ちたにもかかわら
ず、民進党の人気がいまいちパッとしないのは、優柔不断なこういう姿勢を台湾の人々が
敏感に嗅ぎとっているからかもしれない。
ちなみに、台北地裁は王院長の党籍喪失が法的に確定される前に立法院長の職を剥奪す
るのは不当であるとして、王院長からの地位保全を求める仮処分申請を認めた。これは王
院長が国民党に対して台湾元938万1210元(約3000万円)の担保を立てれば、党員資格に関
する判決が出るまで、国民党員の権利を続けて行使することができるという内容で、担保
金の根拠は王院長の任期が2016年に終るまでの年俸合計だという。
台湾の通常国会は明日(9月17日)から始まる。国民党内の政争で、8月末にも予定され
ていたシンガポールとのFTA締結発表が遅れそうだ。