行)のセミナーで発表した「台湾平和中立宣言」について、セミナーの司会進行をした川村純彦
(かわむら・すみひこ)同フォーラム理事による「台湾の中立化主張は有害無益」と題する投稿記
事が昨日の「自由時報」に掲載された。その原文(日本文)を下記に紹介したい。
呂氏らは帰台後、台湾のインターネット誌「民報」において、「彼らは台湾の独立と中立を歓迎
している」(張旭成・元国家安全会議副秘書長)などと報告していた。これに対し、川村氏は事実
と異なるとして、3月17日に「民報」に下記の一文を送り19日に掲載されている。
◇ ◇ ◇
貴紙が3月12日に掲載した張旭成氏の“台湾の平和中立推進のため日本へ「進撃」する”という
文章において、私が所属する「日本戦略研究フォーラム」(JFSS)の座談会について言及があり、
「基本的には彼らは台湾の独立と中立を歓迎している」とされた。
ここに事実を明らかにし、当日のやり取りを復元したい。当フォーラムは確かに呂秀蓮元副総統
と意見交換をした。だたし、このやり取りの中で、当フォーラムあるいは私自身の見解として「台
湾の独立と中立を歓迎する」という発言、もしくは「台湾の独立と中立を歓迎する」と誤解される
ような発言は一切なかったことを確認している。
当フォーラムは台湾の事実上の独立についてはっきりと認知しているが、呂氏の「中立」の主張
については、懸念を抱いている。
◇ ◇ ◇
川村氏は事の重大性に鑑み、「自由時報」ではさらに詳しく事実を明らかにするとともに、「台
湾平和中立宣言」について軍備費や核攻撃抑止の観点などから問題点を指摘、結論として「中立を
主張することは台湾にとって害があるのみならず、米日の支持を得ることが出来ない。……台湾に
さらに大きな危機をもたらす可能性がある」と警鐘を鳴らしている。
自由時報紙は川村氏のこの投稿を掲載するとともに、「呂秀蓮提倡『台灣和平中立』 日本退役
少將投書駁斥」と題する記事を掲載している。
なお、この日、呂秀蓮氏たちは台北市内において「台湾和平中立大同盟」主催による「認識中立
國」と題したシンポジウムを開催した。開催直前に川村氏の駁論投稿が「自由時報」に掲載された
ことで、台湾の中立国化議論に重大な一石を投じた形になった。
◆呂秀蓮提倡「台灣和平中立」 日本退役少將投書駁斥【自由時報:2015年3月21日】
http://news.ltn.com.tw/news/politics/breakingnews/1263539
◆川村純彦「台灣中立化 有害無益」【自由時報:2015年3月21日】
http://talk.ltn.com.tw/article/paper/864793
台湾の中立化主張は有害無益
元海上自衛隊海将補
日本戦略研究フォーラム理事
川村 純彦
最近、呂秀蓮前副総統、蔡明憲前国防部長、張旭成前国安会副秘書長一行が日本を訪問し、2月
23日に私が所属する「日本戦略研究フォーラム」において「台湾和平中立宣言」について講演し
た。事前に我々は「中立化」について話し合うとは知らされていなかったので、当日は呂氏の発言
を聞いただけで、この構想について明確な賛同あるいは反対を表明しなかった。
数日後、我々は呂氏、蔡氏、張氏が発表した論文において、本フォーラムが「台湾的独立と中立
を歓迎した」とされ、日本各界がこの中立化構想を支持しているとされているのを目にした。これ
について、我々は非常に驚いた。ここにおいて我々は、当日、台湾中立化について支持すると表明
していないことを明らかにしないわけにはいかない。実際には、我々は、台湾の中立化は現実的で
ないのみならず、日米とのアジア太平洋地域における安全防衛上の戦略と矛盾すると考えている。
まず、台湾は事実上独立しているが、中国の台湾に対しての領土的野心およびその近隣海域につ
いての覇権の主張こそが台湾にとって最大の脅威である。我々は中国の台湾に対する侵略の意図を
阻止することこそ台湾にとって当面の急務であると考える。
台湾は国際社会に承認された法的にも主権が独立した国家となってはじめて、中立が選択肢とな
るが、仮に、そうなれたとしても、中立というのは一国できめられるものではない。中立には関係
諸国の承認を得ることが必要である。これについて、中国および周辺国家が同意する可能性はかな
り低いと私は信じるものである。
このほか、中立後は、核攻撃を抑止する軍備を含め、完全に自国で引き受けなければならず、そ
の国防経費および人民の負担は大幅に増加するであろう。台湾がもし米国の核の傘のもとを離れる
のであれば、台湾は核武装の用意があるのだろうか。もしそれがないならば、他国からの核攻撃を
どうやって防止するのだろうか。
台湾は、日本列島−沖縄諸島−台湾−フィリピンーベトナムを結ぶ第一列島線の要衝に位置し、
これは、中国が海洋覇権を拡張するのを阻止するために最も重要な戦略拠点である。したがって台
湾の去就は直ちにアジア太平洋地域の平和と安定に影響を与える。日米両国のみならず、すべての
民主的で自由な国家が、この地域の安全保障に相当な関心を寄せている。(この状況で)台湾は安
全保障上の空白を作りだしてよいのだろうか。
台湾が努力すべき方向は、この地域の集団安全保障に参加することを積極的に求め、これによっ
て現在の実質的に独立している地位を保障することである。また同時に、法理的独立の目的を達成
するために国際社会の支持を求めることである。この道のりは簡単ではないが、民主自由および自
国の領土の完全性を守る決心と勇気さえ持てれば、台湾は必ずや全世界の尊敬と支持を勝ち取るこ
とが出来るであろう。
しかるに、中国が軍事的拡張を行う独裁国家であるこのときに、中立を主張することは台湾に
とって害があるのみならず、米日の支持を得ることが出来ない。アジア太平洋地域の安全保障を顧
みず、辺境に安んじるようなこの態度は、台湾をして、友人の尊敬を失わせるのみならず、台湾に
さらに大きな危機をもたらす可能性がある。