この「白書」は、馬英九政権に提出した2009年10月以来、本年で11年目となるそうで、石川理事長から行政院国家発展委員会の陳美伶・主任委員に手渡された。
白書の日本産食品に対する輸入規制措置の撤廃では「科学的根拠に基づく規制撤廃の実現」を求め、「台湾政府が実施している日本産食品の輸入時検査では、2011年3月15日から現在(2019年8月1日)までの間、140,636件の検査が実施され、放射性物質基準値を超えた商品は1件も無い」ことを挙げている。
また、本誌9月4日号でも紹介した、本年8月1日に衛生福利部食品薬物管理署が公表した「日本産食品のサンプリング調査及び調査研究の成果報告」を取り上げ、「調査が行われた被災地周辺5県産食品の全てのサンプル(301サンプル)が台湾の放射性物質基準値をクリアしていたという結果が得られている」ことを挙げ、併せて「日本国内において、継続的に食品のモニタリング検査が行われており、放射性物質基準値を超えた食品は市場に流通することはなく、輸出も行われていない」と述べつつ、科学的な根拠に基づく輸入規制の撤廃を求めている。
ちなみに、衛生福利部食品薬物管理署は2015年1月から2017年6月までに放射性物質検査を受けた日本産食品約55万件のデータを検証する調査も実施している。
本年8月1日に公表されたその結果は「台湾が全ての日本食品に対する輸入規制を撤廃したとしても、台湾住民(97.5%)が1年間日本産食品を摂取することによって受ける追加線量は0.001〜0.0001mSvにすぎず、これによって生じうる健康リスクは1千万分の1以下との評価」を得たという。
人体は年間およそ2.4ミリシーベルト(2.4mSv:1シーベルトの1000分の1×2.4)の自然放射線に常にさらされているというから、それよりもかなり低い数値で、台湾が全ての日本食品の輸入規制を撤廃したとしてもまったく問題ない結果だった。
つまり、台湾政府が東日本大震災直後の2011年3月26日からはじめた5県産品の輸入禁止措置や他の都道府県に求めている産地証明や放射性物質検査証明の提出という規制措置を今も続けていることはまったく意味がないことを、台湾政府自身が証明したことになる。
問題は、調査が馬英九政権時代の2015年1月から蔡英文政権に交替した2017年6月まで行われ、その結果が判明していたにもかかわらず、蔡英文政権は2019年11月の公民投票までに調査結果を発表しなかったことだ。
台北市日本工商会の「白書」もこの点を問題視し「本評価は2017年に実施されたものにもかかわらず、昨年の公民投票までに発表されなかったことも意図的であり大変遺憾である」と指摘している。
台湾政府はすみやかに台北市日本工商会の提言を受け入れ、5県産品の輸入禁止措置と他の都道府県に求めている産地証明や放射性物質検査証明の提出という規制措置を撤廃すべきは当然である。
◆台北市日本工商会 http://www.japan.org.tw/newsite/2010/koushoukai/
◆台北市日本工商会:2019年「白書」(日文版) http://www.japan.org.tw/newsite/2010/uploads/20191004_1703924224_白書(日文版).pdf
◆台北市日本工商会:2019年「白書」(中国語版) http://www.japan.org.tw/newsite/2010/uploads/20191004_1750069623_白書%20chinese.pdf
—————————————————————————————–台湾は日本食品の輸入規制撤廃を=台北市日本工商会【中央通信社:2019年10月4日】http://japan.cna.com.tw/news/apol/201910040007.aspx
(台北中央社)台北市や近郊に事務所を持つ日系企業や個人で構成される台北市日本工商会は4日、蔡英文政権に対する政策提言「白書」を発表した。
白書では、経済連携協定へのスムーズな加入を行うために、国際慣行にそぐわない独自規制やルールの是正が求められるとした上で、日本食品への輸入規制も「正にその独自ルールの一例であると認識している」との見方が示された。日本食品については、東日本大震災から既に8年が経過している上、今年8月1日までの輸入時検査で放射性物質基準値を超えた商品は1件もないと強調。昨年11月の国民投票で禁輸継続が成立した点に「在台日系企業は大きく失望している」と記された。
このほか、投資・事業推進における阻害要因の排除や新産業育成の加速と既存産業活性化、インフラ投資への民間資本参入促進などが提言された。石川剛理事長が同日、行政院国家発展委員会の陳美伶主任委員(閣僚)に提出した。
同会は、これまでの要望に対する蔡政権の積極的な対応に感謝する一方で、政府機関が来年1月に実施される総統選の影響を受けることへの憂慮を示し、政府運営や行政手続きが滞りなく行われるよう要請した。
(潘姿羽/編集:塚越西穂)