台湾の報道によると、経済部投資業務処の張銘斌・処長は「『第一陣の20社に続いて、第二陣は大型企業のほか、中小企業や台湾には拠点がなく中国だけで経営している台湾系企業もある。現在、経済部は、台湾側の対中国大陸窓口団体の海峡交流基金会と共同で、詳細について調査している』と報じられている(10月3日付「台湾国際放送」)。
企業もさることながら、日本経済新聞が中国で働いている台湾人が続々と東南アジアにシフトしていると伝えている。
————————————————————————————-台湾の若者の働き先、中国から東南アジアへ【日本経済新聞:2018年10月7日】
台湾人の蘇さん(31)は、台中に本社のある靴受託生産会社が米ナイキの靴をつくるベトナム・ホーチミンの拠点で、700人規模の品質管理チームを率いてきた。「台湾に残っていたか、中国で働いていたら、チャンスを得ることはなかっただろう」と話す。彼は最近、家庭の事情で台湾に戻ったが、ベトナムで働き続けたかったという。
同じ会社のホーチミンの拠点で靴メーカーの製品開発を支援するチームを率いる呉馨莉さん(29)は、台北の土産物を扱う会社で貿易のアシスタントとして働いていた。彼女は貯金をしたかったので転職したが、台湾での給料の倍を稼ぎ、ベトナムは生活費も安い。「2〜3年働けば、3万米ドル(約340万円)ためるのは簡単だ。台北にいたら想像もできなかった」と語る。
11万人以上の台湾出身者が東南アジアで働くとされるが、多くの人は台湾にとどまる友人よりも、昇進や高給の可能性が高いようだ。東南アジアで働く人は、以前であれば中国に働きに出かけたかもしれない。だが台湾企業は、中国の労働者の賃金高騰や最近の米中貿易戦争などを受け、生産拠点をベトナムや東南アジア以外ではインドなどに移そうとしている。
呉さんの会社と同業の宝成工業も、東南アジアへのシフトを強めた。独アディダスなどに衣料品を供給するアパレル大手、儒鴻企業(エクラ・テキスタイル)は16年末、中国から撤退して生産をベトナムとカンボジアに移した。台湾の行政院(内閣)によれば、台湾から東南アジアとインドへの投資は17年、前の年に比べ約54%増の約36億8千万米ドルとなった。中国向けの投資は2年連続で減った。
台湾での若者の雇用も減りつつある。8月時点の全年齢の失業率が3.9%だったのに対し、20〜24歳は12.8%に達した。ベトナムやインドの成長率は17年、6%台後半だった。2%台後半の台湾の若者にとって、魅力的な働き先に映る。台湾の有力就職サイト、104ジョブバンクのデータによると、東南アジアで職を得る25〜29歳の台湾人は17年までの3年間で62%増加した。
(中国大陸と台湾が一つの国に属するという「一つの中国」原則を受け入れない)蔡英文総統が16年に就任して以来、中国と台湾の関係は悪化している。蔡政権は東南アジアとの関係を深める「新南向政策」を打ち出し、最大の貿易相手、中国への依存を減らそうとしている。行政院の●振中政務委員(閣僚)は「台湾企業が中国から台湾に移転するための支援をできる限りする。東南アジアへの投資を希望する企業も支援可能だ」と述べる。
●氏は、若い層の流出について「人材が東南アジアへ向かうことが、台湾にとって悪いとはみていない。長期的に競争力が高まる」としている。台湾経済研究院の景気予測センターの孫明徳氏は「当局は、東南アジアから留学生を含む人材を呼び込む政策も取るべきだ」と指摘する。(●=都の者が登)
東南アジアなどへの生産移転は、何より、現地へ向かう台湾の若者の可能性を広げるといえそうだ。ベトナムで働く呉さんは現地で働き始めた初日から、リーダーになるよう強く求められ困難にぶつかったという。「ストレスはあるが、職業人としての成長も速まり、競争力が付く」とあくまでプラス思考だ。
(台北=黎子荷、鄭婷方)