2008年2月17日、セルビア共和国の一州、コソボが独立を宣言した。平和裡に、戦争
もなく。
これは90年のユーゴスラビア解体以降、予想されていた事態でもある。
ただちに独立を承認すると祝意を述べたのは米、英、仏、独、トルコと豪州とバチカ
ン、そして台湾だった(トルコは直後から与党内内輪もめ)。
日本のマスコミは台湾の承認姿勢を一行も報じなかった。
台湾は「将来のさらなる発展的関係を築きたい」と台湾外交部が国交樹立を示唆し、
「独立宣言へいたったことは尊敬に値する」と述べた。
一方、北京はコソボ独立を台湾独立と直裁に結びつけて、露骨に不快感を示して言っ
た。「台湾は中国の一部であり、そんなことを(台湾が)言える権利はない」(劉建超・
外交部スポークスマン)。
アジアでも中国ほどではないが、コソボ独立に不快感を示したのはインドネシアとス
リランカだった。インドネシアは、豪州が背後で支援したアチェの「分離」を、いまも
国際的陰謀と位置づけている。スリランカはタミール独立運動を国内に抱え、コソボの
セルビアからの分離独立が、国内ゲリラに影響を与えるのがいやなのである。
同様にヨーロッパ諸国でも国内に分離独立を抱える国々がある。
その筆頭はロシアだが、モスクワの反応は複雑きわまりない(オセチア、アブハジア、
ナゴルノカラバフなど多くの「未承認国家」をモスクワは一方で認め、背後で先導しな
がら、コソボは独立させないというアンビバレンツの克服は難しいだろう)。
さらにキプロス、ギリシア、ルーマニア、スロバキア、ブルガリア、スペインはコソ
ボ独立宣言に反対した。これらの国々は「国連が承認しない限り外交承認をしない」と
言明している。
▲ジグザグだった朝日新聞の社説
もし国際政治の基礎哲学が民族自決にあるとすれば、アチェ独立を支援した朝日新聞
も「コソボ独立」は支援せざるをえなくなり、事実、同紙は社説(2月19日付け)で苦
しい弁舌を書いた。
社説の題名は「安定への第一歩にしたい」
「独立宣言は、米国や欧州連合(EU)が後押ししている。地域を安定させ、民族の憎
しみを乗り越えて和解を達成するためにはこれしかない。そんな苦渋の選択なのだろう」
とあくまでも他人事である。そして独立に反対している「セルビアとロシアへの説得を
続け」、「バルカンの安定と繁栄のために、日本も出来る限りの支援をしていきたい」
と朝日の社説は結んでいる。
しかし現実はと言えば「12万人のセルビア系住民を1万6000名のNATOの兵力が保
護している」(ロスアンジェルスタイムズ、2月19日)。
そのうえでEUは、2000名の警察官と司法関係者をコソボへ派遣する。そうしないと
コソボの治安も秩序が保てず、また住民同士の殺戮が始めるだろう。
ヨーロッパの火薬庫バルカンは憎しみの大地。ここでは数百年、民族と宗教の対立が
潜在しており、戦後僅かな期間の“平和共存”はチトーの圧倒的軍事力と秘密警察のも
とでしか実現されなかった。
バルカンが「世界の火薬庫」といわれる所以であり、第一次世界大戦も第二次世界大
戦もバルカンを舞台に火を噴いたのだった。
▲パット・ブキャナンはかく獅子吼する
『アメリカン・ファースト』で知られる論客のパット・ブキャナン(パパ・ブッシュ
に挑んで大統領に二度立候補。昔はニクソンのスピーチ・ライターだった)は、明確に
ブッシュのコソボ政策に疑義を呈した。
「いまだかって一度も独立した歴史がなく、セルビアのコソボ侵略とアルバニア系住民
の虐殺なる虚像はプロパガンダだったと判明している。にも関わらずNATOと米軍は、
ミロセビッチ大統領(当時)をヒトラーにたとえて理不尽な空爆を78日間もつづけ、結
局はアルバニア民族主義を助長した。
コソボは次の世界大戦の引き金をひく可能性が高く、げんにアルバニア系住民はつぎ
にアルバニアとの合邦を言いつのり、さらにはマケドニアなどとの連邦を口にして『大
アルバニア』構想に言及し始めた。ブッシュは危険なバルカンに新しい火をつけたのだ」
と手厳しいのである(TOWNNHALL紙、2月19日付け)。
このコソボ独立の縮図こそは、まさに明日の台湾問題へと連想がつらなる。
コソボを北京はいかなる教訓としたのか? 北京とセルビアの立場は同じと言えば同
じだが、基本姿勢がまったく違う。
セルビアはあくまでも話し合いによる平和解決を主張している。
北京は台湾が独立宣言をしたら武力侵攻をすると法律にしている(『反国家分裂
法』)。
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