台湾の「民主」の灯が国民党の統治で消えかけている [宮崎 正弘]

台湾の「民主」の灯が国民党の統治で消えかけている [宮崎 正弘]
民進党の蔡英文主席が来日して熱烈講演。「2012年は政権奪回」

【3月17日 宮崎正弘の国際ニュース・早読み 通巻第2528号】
http://www.melma.com/backnumber_45206_4416904/

 読売新聞に小さな記事がある(3月16日)。

 「(2009年3月)15日に来日した台湾の野党、民進党の蔡英文主席は都内で講演し、馬
英九政権の経済政策について「台湾の主権を犠牲にする恐れが大きい」と述べ、中国寄り
の政権を批判した。蔡氏は民進党初の女性党首で、来日は昨年5月の就任以降初めて。17
日まで滞在し、日本の与野党有力政治家と会談予定」。

 その講演会に出席した。

 蔡英文・民進党主席は才媛の誉れ高い、学者肌の政治家である。

 米国コーネル大学で法学専攻、ロンドンLSEで法学博士。国際法に滅法明るく、台湾
へ帰国後、十数年、政治大学などで教鞭を執った。

 李登輝政権で、大陸委員会主任委員(閣僚級)。李総統の「中国と台湾は特殊な国と国
の関係」(1999年7月)発言は、彼女が起草したと言われる。

 その後、総統府国策顧問、民進党から立法委員に当選、副首相を歴任した。

 立法委員(国会議員)時代に、一度インタビューしたことがある。台北の青島路にある
議員会館で、流ちょうな英語だった。

 まったく「政治家」を感じさせない清廉の人。おかっぱ、痩身で庶民的。どこに秘めた
闘志があるのだろう?

 蔡英文主席の小学生時代に父親が日本語の達人だったので、日本留学をさせたがり、家
庭教師は日本語。だから蔡女史は日本語もかなり喋る。

 今回の来日は民進党議員団六名に秘書、スタッフ数名を引き連れ、しかも元駐日代表の
羅福全、前代表の許世楷両大使も同席するという異例の陣容だった。

 会場には台湾から随行の記者団、テレビカメラ数台。黄文雄、金美齢、田久保忠衛氏ら
の顔も。随行団のなかには旧知の粛美琴・前立法委員もいたので、「新しい肩書きは?」
と訊くと「民進党中央本部主席室特助」(党主席オフィス主任のような意味だろう)。

 もし民進党政権が復活したら、彼女は外相候補と言われる。

 さて、蔡英文女史がなぜ野党党首になったのか。

 ちょっと歴史を振り返る必要がある。昨年三月、陳水扁総統の不人気と党内挙党態勢の
出遅れにより、総統選挙で与党・民進党は国民党に惨敗、候補者だったベテラン政治家・
謝長挺は責任をとって党首を辞任した。

 直後から党内セクト争いが激化し、党首選挙には党内調和派のシンボルとして、この蔡
英文に白羽の矢がたった。対抗馬は「台独大老」(独立派の顧問格長老)の辜寛敏(リチ
ャード・クーの父親)だった。辜寛敏とも、台北で何回か会っているが、つねに饒舌で熱
心で、とても80歳台とは感じられない。

 蔡英文は党首選挙の結果、選ばれたわけだが、しこりを残さないためにも辜寛敏は、
「あなたを孤独にはさせない」とエールを送った。「民進党にとって、団結がもっとも重
要なことだから」と。

▲台湾の民主が後退する恐れが拡がっている

 さて東京での蔡女史の講演は最初、台湾語で始まったが、すぐに北京語に切り替わった。
日本語への通訳はベテランの林さん。

 以下は講演要旨。

「台湾は民主主義国家であり、主権を有する。台湾の未来は台湾国民2300万人が決める。
過去八年間の民進党政治の成果は“台湾人意識”が成長したことだった。1999年、李総統
の「国にと国との関係」発言以来、台湾人としての意識が広がり、馬英九さえ、選挙キャ
ンペーン中は台湾人意識を強調した。ところが、馬総統は就任以来十ヶ月の間に、この重
大な「台湾人意識」を希釈化させた。公的に発言しなくなった。台湾人意識という常識が
崩れつつある」。

 また「民進党八年間で確立された多元的価値の定着、言論の自由、人権、開かれた社会、
文化的多様性が、危機に頻しており、前から遅れていた台湾の司法システムにパワーハラ
スメントと恫喝を感じるようになった。台湾の司法制度は国民党の権威主義時代にあった
体質でもあり、今後、台湾の民主が後退する懸念が大きい。
 馬総統は中国への憧れ、中国コンプレックスを抱いている」。

「このまま馬政権が中国と接近を続けると次世代台湾人は自らのアイデンティティと(自
由民主国家にとって重要な)選択の余地を狭まる恐れがある」。

「経済的困窮、景気後退の苦境が出現し、民進党時代の八年間の成長がとまった。中小企
業の再建はなされたが、国民党は大企業のための政策が中心であり、国民経済にとって最
重要の雇用が台湾では産まれなくなる。国民党は中国がすべて、台湾の主権を犠牲にして
も、中国へ傾斜すれば、かえって不安が広がる。両岸関係の安定を馬政権は目指すとして
いるが、不安、対立を惹起させ、むしろ両岸関係を不安定にする懸念のほうが大きい」。

「対日関係で言えば、民進党時代八年間にヴィザの相互免除、運転免許証の相互承認など
両国関係は素晴らしいものだった。日本外交の基本である『自由と繁栄の弧』を積極的に
民進党は支持してきた。
 国民党は日本重視と強調するものの、心情的に対日コンプレックスが深く、つきあいは
表面的になりがちとなるだろう。
 これから日本に望みたいのはFTA(自由貿易協定)の締結、アジア共同市場へのプロ
セスで台湾の参加を支持してほしいこと、そして安保での協力関係である」。

▲尖閣諸島の帰属は?

 最後に質疑応答に移り、小生も挙手して質問したのは「尖閣諸島の帰属問題」。

 というのも、日台関係良好なりといえども、両国に突き刺さる最終的難題は、この領土
問題である。

 いかに親日的な台湾独立派諸氏でも、多くは「尖閣諸島は台湾領(或いは中華民国に帰
属する)という法律解釈をするからだ。

 蔡英文主席の回答。

「政治の側面が強調されすぎて法律的側面が欠落している、国際公法に照らせば尖閣諸
島(釣魚台)は台湾に帰属することを十分に証明できる。」

 つまり直裁には言わなかったが、尖閣諸島は中華民族に帰属するという立場を示唆した。
このポイントだけは民進党と日本人との心理的政治的乖離である。

 ともあれ蔡英文女史。主席就任前後は、痩身で学者肌の才媛だが、はたして政治の修羅
場に乗り出して大丈夫かと不安視する向きもあったが、爾来十ヶ月が経過。蔡英文主席は
バイタリティに溢れ、演説はしっかりと理論的なうえに、巧みなユーモアを含ませるなど、
人間が豊かに成長したようでもあった。


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