「親日国からのメッセージ」(2)  許 世楷(元台北駐日経済文化代表処代表)

「親日国からのメッセージ」(2)  許 世楷(元台北駐日経済文化代表処代表)
去る7月23日、東京・新宿区のホテルグランドヒル市ヶ谷において日本戦略研究フォーラ
ム(中條高徳会長)の主催により、シンポジウム「親日国からのメッセージ、そして日本
の役割」が開催され、約150名が参加した。

 拓殖大学海外事情研究所の丹羽文生・准教授の司会進行の下、許世楷・元台北駐日経済
文化代表処代表(台湾大使に相当)が基調講演を行い、続いて、親日国5カ国の大使経験者
をパネリストに公開討論が行われた。

 それに続くデスカッションには許氏も参加し、それぞれに親日感情を育んだ背景につい
て日本企業の進出やODAなどの具体例を挙げて説明、充実した内容のシンポジウムだっ
た。世界には台湾はじめ親日国が多いことを改めて認識し、ある大使が「反日は中国、韓
国、北朝鮮の3カ国だけ」と言い放ったのが印象的だった。

 その後の懇親会では、日本戦略研究フォーラム副会長でもある本会会長の小田村四郎氏
が開会の挨拶を述べ、来賓として盧千恵・許世楷大使夫人が挨拶された。

 許元代表の基調講演は30分ほどで、当日配布されたパンフレット掲載の講演内容の方が
詳しいので、ここではパンフレットからご紹介したい。いささか長いので、3回に分けて掲
載し、読みやすいように、適宜、改行や句点を施し、小見出しも編集部で付したことをお
断りする。

 なお、当日の模様は日本戦略研究フォーラムのホームページに写真とともに掲載してい
るのでご参照いただきたい。

◆第27回定例シンポジウム「親日国からのメッセージ、そして日本の役割」
 http://www.jfss.gr.jp/shinpujum/shinpujum27kai/20120723.htm


親日国からのメッセージ、そして日本の役割(2)
【日本戦略研究フォーラム:第27回定例シンポジウム基調講演】

                                    許 世楷

◆中国の台頭にアジア諸国が米国との連携を強化

 次の問題に移ります。

 1991年ソ連が崩壊すると、ポスト冷戦期に入ったことになるわけですが、東アジアでは
その遺制が南・北朝鮮、台湾・中国などに残っていました。それが「中国の台頭」によっ
て、主役の一方の中ソが入れ替わりますが、中国の経済的世界進出、軍事的には東アジア
ではもっとも顕著にかつての冷戦の再発的状況が出てきます。

 ソ連が崩壊し、中ソの国境問題が解決すると、中国は台湾併合を邪魔すると見倣して米
国を仮想敵国視し、1990年代から海軍発展に着手します。短期的には対米国防計画、それ
は2010年までに第一列島線(九州・沖縄・台湾・フィリピン・ボルネオに至る)に防衛線
を敷き、その内側の日本海・東シナ海・南シナ海への米海空軍の侵入を阻止することを目
標とします。

 長期的には世界覇権国家に成長する海軍建設で、2020年までに第二列島線(伊豆諸島・
小笠原諸島・グアム・サイパン・パプアニューギニアに至る)内の制海権確保、更に2040
年までに米海軍と対等の海軍建設を目標とするものです。今、その短期的計画が2015年と5
年ほど遅れている状態にあるそうです。

 この区域内には、東シナ海ガス田問題・尖閣諸島問題・南沙諸島問題などの領土問題を
抱えているために、その軍事行動は関係諸国である日本・台湾・フィリピン・ベトナム・
シンガポール・インドネシア・ボルネオ・オーストラリア・米国などの警戒を喚起してい
ます。

 その結果、関係諸国は海軍力増強の他、米国との連携を強めています。去年11月中旬に
米大統領オバマは、いくつかのアジア首脳会議に参加、17日、オーストラリア訪問中に
「アジア太平洋での米国のプレゼンス(存在)と任務を国防政策の最優先事項とするよう
指示した」と述べました。その前の10月、米国務長官クリントンは『フォーリン・ポリシ
ー』に「米国の太平洋政策」を投稿、戦略的重点を今後アジアに移す方針を明らかにして
います。

 そしてこの6月、シンガポールにおける第11回アジア安全保障会議における講演で、国防
長官パネッタは、米海軍勢力の太平洋配置を今の50%から2020年までに60%に調整する、
またこの地域における軍事演習を増やしていきたい、さらにオーストラリア・フィリピン
の他に、もう一力国基地提供を期待している、と述べております。つまり、米国もアジア
諸国の期待に応えようとしているわけです。

◆中国の「台湾排除」政策

 政治的視角からいえば、いま中国寄りの「ASEAN+n」と米国寄りの「TPP」の国
際的連携体形成が進められています。また、中国は意識的に前者から台湾を排除していま
す。APECの正式メンバーである台湾は後者のメンバーになれます。日本が前者のnに台
湾を推し、また自らTPPに入りこの連携を強化することは、そんなに困難なのでしょう
か?

 米中両極対抗の国際政治になってきているわけですが、中国は米国との対抗はイデオロ
ギーに関係はない、没落していく覇権国家を新興の覇権国家が追い上げていくというだけ
であると言っています。しかし、中国の盟友のひとつである北朝鮮の価値観・社会制度は
見ただけでも悲しい状態にあります。

 1997年に50年間、元来の資本主義と生活方式を保証された特別行政区として中国に併合
された香港では、先月、政府の独裁に反対するデモが行われましたが、主催側は4、50万
人、警察は4、5万人参加したと発表しています。約700万人の人口ですから10万人でもたい
した人数の参加です。ですから、分離・併合においては、価値観・社会制度が重要な考慮
の基準になるべきです。

 米中両極の権力的対抗に加えてイデオロギーの対抗でもあり、米中両極が直接ぶつから
ずにいるとすれば、冷戦の再発でしょうか? 南・北朝鮮は交流の制限も厳しいが、台湾
と中国では、中国が台湾に向けて1500発のミサイルを向けている一方で、台湾から輸出す
る貨物の40%は中国にいきますし、対外投資の80%が中国向けです。台湾から中国に行く
人数も年に500万を超え、他に100万人も中国に居住しています。

 米国も、日本も結構中国に投資しています。これがかつての冷戦と異なるところでしょ
うか?

                                   (つづく)

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