東京外大名誉教授の著者は本書で、福澤諭吉が明治時代に語ったアジア外交戦略論の先見性を「ほとばしる感情」と表現した。
福澤は「脱亜」に成功した日本に対し、中国や韓国が不可能であった理由を「古風『旧套(きゅうとう)』に呪縛されているからだ」と述べたという。21世紀の現在でもなお、中韓は旧套呪縛の延長線上にある。
福澤は明治維新の西郷隆盛にこそ「日本人の士風」をみて、「愛慕」を抱いた。著者は西郷が「征韓論」を唱えたとする一般的な見方を否定。本書で福澤と重ねて論じつつ、アジア文明比較論まで筆を進めている。
(アジア・ユーラシア総合研究所・800円+税)
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・書 名:福澤が夢見たアジア─西郷の大革命 明治維新150年と日中文明比較論・著 者:井尻 秀憲(東京外国語大学名誉教授)・体 裁:新書判、並製、192頁・版 元:一般財団法人アジア・ユーラシア総合研究所 http://www.asia-eu.net/・定 価:800円+税・発 行:2018年10月30日
井尻秀憲(いじり・ひでのり)1951年福岡県生まれ、1975年3月、東京外国語大学中国語科卒。1980年3月、同大学地域研究研究科修士課程修了。83年12月、カリフォルニア大学バークレー校政治学部博士課程修了。同大学Ph.D(政治学博士)。筑波大学助手、神戸市外国語大学助教授、筑波大学助教授(1994年、在北京日本大使館専門調査員)、1999年10月から東京外国語大学教授、大学院教授を経て、2017年3月に同大学を退職し、同大学名誉教授。