金子氏が台湾の神社について調べてみようと思い立ったのは今から15年ほど前。そのきっかけなどについて、日本経済新聞に「台湾に日本式神社の面影─植民地統治下に建立、残された鳥居や石柱など巡る」を寄稿したのは2008年2月26日付の「文化」欄。「苔むした鳥居や石柱を前に、不思議と懐かしい気分がこみ上げてきた。『同じような遺跡は台湾にどれだけあるんだろう。二、三十かな。全部巡ってみたいものだ」と思ったのがはじまりだったという。現在、420社もの神社跡を確認したという。
その集大成が本書『台湾に渡った日本の神々』だ。270社の来歴や現状などを紹介する本文416ページ、巻頭カラー8ページという大部。このボリュームで2800円(税別)は安い。
台湾に創建された神社について、これだけまとめたものはない。台湾の近代史の空白を埋めるこの労作は、台湾関係者にとって必読のテキストとして読み継がれていくに違いない。
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金子展也(かねこ・のぶや)1950年北海道生まれ。小樽商科大学商学部を卒業後、(株)日立ハイテクノロジーズに入社。系列会社を含め、シンガポール及び台湾に駐在。定年後、(株)アンカーネットワークサービスに勤める傍ら、神奈川大学非文字資料センター研究協力者として海外神社の調査・研究に携わる。また、一般財団法人 台湾協会の評議員も務める。著書に『旧台湾神社故地への旅案内』(神社新報社)がある。
—————————————————————————————–「台湾に渡った日本の神々」著者金子氏、台湾出版に意欲【台湾新聞ブログ:2018年4月7日】http://blog.taiwannews.jp/?p=45368
金子展也氏の著書「台湾に渡った日本の神々」の出版を記念したパーティーが4月7日、都内レストランで行われた。金子氏はパーティーのなかで本紙の取材に対し、「この本は日本の歴史本であると同時に、台湾の歴史本でもある。台湾に恩返しするためにも、この本を中国語に翻訳し、今後台湾で出版したい。台湾の歴史の本として残していきたい」と、今後の台湾出版に向けての意欲を語った。
金子氏は現役時代日本の商社に勤めており、2001年から2006年まで台湾駐在を経験した。その期間中、台湾にある日本統治時代の50年間を中心に造営された約400の日本の神々を祭る神社に興味を持ち始め、帰国後2015年には「台湾旧神社故地への旅案内―台湾を護った神々」を出版している。同書は自身二冊目の書籍で、台湾駐在から合わせ、およそ15年の月日を費やして書き上げた傑作である。
なお、同パーティーには、発起人である神奈川大学の中島三千男名誉教授、台湾協会の河原功理事、神社新報社の前田孝和取締役、映画監督の林雅行氏のほか、金子氏と繋がりが深い約40人が集まった。パーティー終盤には、一人ひとり金子氏との出会いや思い出話をし、金子氏を祝福した。
また、同書の出版・編集に携わった潮書房光人新社第二書籍編集部の坂梨誠司部長も同パーティーに出席しており、「この本のなかには金子さんが調べた事全てが打ち込まれている。それがこの本の商品価値だ」と同書について話した。