台湾の声編集部 加藤秀彦
台湾で神様として祀られている日本人は、台南の飛虎将軍や嘉義の義愛公が有名だ。
今回は宜蘭で最近神様として祀られるようになった小林三武郎巡査を紹介したい。
小林三武郎巡査は名古屋出身で、日本統治時代に宜蘭で森林警官として勤務した人物だ
。
森林警官は台湾檜や樟脳の材料となる楠の違法伐採を取り締まる役職だ。
また当時の警官は農業や畜産の指導もしていた。
あるとき、農民がニワトリ・ブタ・鴨などの家畜の種付けしようとしたが、なかなか上
手くいかなかった。成功しないと生活が苦しくなるので、その農民は心底困っていた。
不憫に思った小林巡査は、本来禁止されている役所所有の家畜を内緒で農民に貸して種
付けを試みた。
一回で成功しなくても「もう一回! もう一回!」と繰り返し成功するまでこっそり家畜
を貸し出した。
いつの日か小林巡査は「もう一回さん」として地元農民に親しまれるようになった。
お役所的なルールを曲げてまで、台湾の農民の生活を守ろうとしたのだ。
小林巡査は台湾人と結婚し、1944年に宜蘭で天寿を全うした。
厳格な警察官でありながらユーモラスな一面もあり、地元住民に親しまれていた小林巡
査は有應公(立派な人物)として宜蘭の住民に祀られた。
そして2000年代初頭に土地公(土地を守る神様)にレベルアップした。
近年では小林巡査を里帰りさせたいという声も聞こえている。
しかし日本にいた頃の小林巡査の情報は、名古屋出身という以外全くないのが目下最大
の問題だ。
長きにわたって台湾人の手で祀っていただいた恩に報いる意味でも、小林巡査の里帰り
を実現させたい。
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台湾の声
★こちらから関連ファイルをご参照ください:
宜蘭縣冬山鄉太和村十三份坑 小林三武郎巡査の祠