し、台湾の人々は中国のパスポートで海外へ出かけているわけではない。台湾が中国の領土の一部
でないことは、この一事が端的に示している。中国は台湾を統治していない。中華人民共和国が成
立して以来、この国が台湾を統治したことはない。単にそうあるべきだと主張しているに過ぎない。
昨日の中央通信社のニュースは、国際環境NGO「グリーンピース」が公表したレポートで「台湾
を中国大陸の一部分とする地図表記があったことに対し批判の声が上がったのを受け、同団体は7
日、謝罪の意を示す声明を発表した」(下記)と報じている。当然のことだ。
2005年10月、グーグルが地図サービスの中で、台湾の説明を「台湾、中国の省」と表記していた
ところ、台湾政府の抗議で「台湾」という表記に修正したことがあった。これもまた当然の修正
だった。
しかし、実はいまでも日本の教科書では台湾を中国の一部と表記している。例えば、中学校社会
科地図帳では中華人民共和国の都市名として「タイペイ(台北)(台湾)(1999年)」(東京書
籍)と表記しているのだ。
国土面積の表記も同様だ。面積の表記には注釈がないので、非常に分かりづらい。そこで、帝国
書院の中学校地図帳における中華人民共和国の面積表記の変遷を調べたことがある。
昭和38年(1963年)版では中華人民共和国と中華民国をともに国名とした上で、中華人民共和国
の面積を9561(千平方km)、中華民国の面積を36(千平方km)と表記していた。昭和47年(1952
年)版も同じ表記だった。
ところが、昭和52年(1977年)版では中華人民共和国の面積を9597(千平方km)に修正してい
る。注釈はないが、中華人民共和国の「おもな島の面積」として「島名 台湾 所在地 台湾」と
あり、台湾を中国の一部とし、台湾の面積を加えた表記に修正していた。
その4年後の昭和56年(1981年)版もやはり中華人民共和国の面積を9597(千平方km)と表記し
ていて、注釈として「中華人民共和国の人口・面積・人口密度には台湾を含む」と付していた。
なぜ中華人民共和国の面積などに台湾を含ませたのか、その説明はない。それ以降、中華人民共
和国の国土面積は960(万平方km)という表記になる。
以上の表記の変遷を見れば、この960万平方kmに台湾の面積が含まれていることは明らかであ
り、台湾を中国の領土の一部と表記しているのだ。
本会では2005年から、中学校社会科地図帳の誤記問題として、何度も教科書会社や文部科学省な
どに訂正を求め、文科省記者クラブで会見を開いたりしてきたがいっこうに改まらない。これが日
本の現状の一端なのだ。
中学校社会科地図帳の誤記問題よりさらに根が深いのが戸籍問題だ。法務省はこれまで、台湾出
身者が日本人と結婚したり帰化した場合、戸籍の国籍や出生地を「中国」と表記してきた。これも
また、台湾を中国の一部とする悪しき事例だ。
本会が戸籍問題に取り組んだのは6年前のこと。法務大臣に提出した要望書は、去る7月7日に提
出したもので14回目となる。詳しくは、渡辺利夫会長が金田勝年法務大臣に呈した要望書を参照い
ただきたい。
以上のように、日本における教科書記述は誤記ではすまされないほど根深く、戸籍問題に至って
は台湾出身者の人権を侵害しかねない深刻な事態となっている。早急に解決されなければならない
ゆえんだ。
◆渡辺利夫会長が金田勝年法務大臣に「台湾出身者の戸籍表記是正を求める要望書」
http://melma.com/backnumber_100557_6552787/
地図で台湾を中国大陸の一部として表記 環境保護団体が謝罪
【中央通信社:2017年7月9日】
(台北 9日 中央社)国際環境NGO「グリーンピース」が公表した中国大陸の石炭火力発電の生産
過剰と水資源問題に関するレポートの中で、台湾を中国大陸の一部分とする地図表記があったこと
に対し批判の声が上がったのを受け、同団体は7日、謝罪の意を示す声明を発表した。だが、同団
体に対する批判は収まらず、9日には、寄付の取り消しも受け付けるとした。
公表されたレポートに対し、「台湾から多くの寄付を受けているにもかかわらず、台湾を中国の
領土と見なすなんて」「台湾本土の環境問題に対して関心が向けられていない」とする批判や寄付
の使い道に対する疑念の声がインターネット上に多く寄せられた。
同団体は声明の中で、レポートは中国大陸で発表されたものであり、研究範囲に台湾は含まれて
おらず、地図上の表記のみに誤植があったと釈明。誤りは既に訂正されたとしている。さらに、台
湾事務所で集められた寄付は全て台湾での環境保護活動に使われていると説明し、2016年度の財務
報告を公開した。
だが、同団体の北京事務所で過去に出版されたレポートでも台湾を中国大陸の一部とする地図表
記があると一部から指摘が寄せられた。同団体は8日、北京での出版物は中国大陸の「地図管理条
例」による制限を受けるとの説明をインターネット上に投稿し、波紋を広げている。
(?欣紜/編集:楊千慧)