李登輝元総統談話
平成22年(2010)6月11日台北御自宅にて【2】
 第二次世界大戦後>>
――― 戦後1年半、中国が台湾へ入ってくる。小さな事件から228事件となった。彼らは、考え方が違う。汚職をし、働かない。何をしているか分らない。私が日本に言いたいのは、日本統治時代、政治的に台湾人のリーダーを作らなかった。しかし、教育をやったので、いろいろ考える人間はいる。228事件は、台湾へ来た違った文明の争い。 政治を握っているのは蒋介石。蒋介石は、日本に軍人を帰し、ソ連みたいなことをしていないので、日本は蒋介石を尊敬したようだが、台湾では、日本語が話せない、日本の本が読めなかった。

 戦後の農地改革>>
――― 農地改革を小地主の息子にやらせた。国民党は、大陸で共産党にやられている。共産党は、小作人が味方。台湾では、共産党にやられた経験で、大地主の整理を政府がやる。大地主に台湾人はいない。
 小作料が50%と高く、それを37.5%にし、小作人が喜んだ。特に女性が喜び、ミシンが売れた。 地主から土地を買い、小作人が、10年間の土地債券を年2回支払う。小作人が地主になった。日本が残した大きな四つの工場(紙、茶、工業、セメント)を大地主へ株券にして売った。
 ところで、私は、大学を出て間もなく結婚した。愛知県の藤田先生が「台湾人で、農林研究した人がいないので残りなさい」と言われたが、給料が450円。家内は淡水の大地主の娘で働かせられない。1.000円は生活費が必要だったので、土地債券を切り、とても苦労した。しかし「私は土地改革が大好きだ。勿論、親父から「お前は馬鹿か!」と怒られた。同じ人間に生まれて、小作人は苦労している。小作やらないとやっていけない。子供の頃から、ああいうのを見ていると、可哀相で社会主義的な考えだった。小作人のように「苦労しなさい」と思った。

 国民党の教育>>
――― 228事件で、徹底的に中国教育をした。「中国五千年の偉大な歴史」なんてね。あれは、嘘だ。何も変わっていない。故宮博物館入り口に「八千年の長河の流れ」とあるが、何が流れか?止まっている。悪くなると革命をして皇帝が変わるだけで、何も変わっていない。皇帝型統治である。私が総統になったときも同じで、古に託して制度を変える。「脱古改新」が私の考えだ。台湾の民主主義政治改革を根詰めた。 馬さんとか、陳水偏とかは、全くの中国型。総統になったら皇帝になったと思っている。「皇帝になったから、私の身内、欲しいものが手に入る」、困った考え方だ。 
 制度を改め、選挙制度をつくった。皇帝型統治もこれには、敵わない。憲法の修正が終えていない。どうやっていくか?国の名前を変える・・・。
 最近の中国について>>
――― 中共は自分たちの土地で共産主義・ボルシェビキではなく、独裁政治を行なっている。結局、中国は皇帝はなくなったが、総統は上の人間が下の人間を選ぶ。江戸幕府で書軍は誰にするか、みたいなことをやっている。
 中国は今、景気が良く、余った人と外国のお金を使ってここまで来た。しかし問題はこれから。富士康で自殺者が続出。ホンダではストライキ。外国企業も安い賃金を求め中国へ来たが、そこで労働者が死亡したことに、保障として33万元を支払ったところ、「一生働いても、それだけ貰えない。それだけ貰えるならなら・・・」と自殺していく。このようなことを社会問題として解決するのが政治家の役目。歴史的変化の過程を細かく見る必要がある。経済の発展と時間で次第に変わってくる。昔は、命令で出来たが、人間として大事に使うことをしなければならない。
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