【論説】胡錦濤の訪米

【論説】胡錦濤の訪米
【論説】胡錦濤の訪米

   アンディ チャン

胡錦濤が米国を公式訪問し、ホワイトハウスでは二回の晩餐会が行
われる。米国は両国の関係をG2と位置づけ、ささくれだつ関係の
改善に躍起だが、公式訪問に成果を期待するものではない。

オバマは18日の挨拶で、訪米は今後30年間の基盤を作りうるも
ので、両国関係の改善に期待すると言い、つづいて中国の人権問題
の改善にも触れた。返礼として胡錦濤はお互いが選んだ発展の道筋
と核心的利益を尊重すべきだ述べ、オバマの挨拶に答えた。双方と
もチラリと鎧を見せあうような表明である。表面は友好を装っても
相互不信と関係の冷却化は明らかである。

●公式訪問に何も期待すべきではない

首長の公式訪問は中国と米国の国際関係の改善表明と、胡錦濤の個人
的な国内向けの成績作りだから、儀礼訪問に両国間の関係改善や、実
質的な結果を期待すべきではない。両国間の交渉が首長の会談で決ま
るのでなく、訪問前に両国使者の交渉で大体の結果が決まる。

胡錦濤は儀杖兵による礼砲21発の最高儀礼の歓迎を要求し、米国が受
け入れたのでアーミテージがオバマの外交失敗を厳しく批判した。胡錦
濤の訪米は任期終了前の[栄誉勲章]を要求したようなものだから、アメリ
カは然るべき勲章の代償を要求すべきだったというのである。アメリカが求
めた代償が少なかったら批判されて当然である。結果は胡錦濤が21発
礼砲の歓迎をうけ、中国側はボーイング機200機の購入を発表した。

●訪問前のやり取り

胡錦濤はアメリカが招待したのではなく、胡錦濤が来るので米国側は有
利な条件をつけるべきだったといえる。つまり、胡錦濤は国外訪問によっ
て国内の権威と影響力を増やすのが目的である。胡錦濤の訪米は任期
終了の前に訪米して、両国間の関係の好転を約束し、オバマとの個人的
関係を誇示して、引退後の政治力を維持する目的である。

それでアメリカは何を要求し、中国が何を受け入れるかが事前交渉の要
点である。主な問題を纏めてみると以下のようになる:

主だった経済問題の交渉は、人民元の切り上げ、米国国産品の輸入増
加、軍事・商業機密の違法取得の取締まり、サイバー攻撃の問題、米国
債の購入など。

政治問題はチベット、東トルキスタン、尖閣諸島、台湾の主権問題など。
台湾に対する武器販売と、三公報に基づく台湾の主権の主張と応酬。東
南アジアにおける中国の軍事拡張、北朝鮮に対する政治介入。近隣諸
国の辺境領土問題。ことに東南アジアの大陸棚の主権及び資源問題。
ソマリア、スーダン、アフガニスタンなどでの利権獲得や大規模な
投資などである。

●首長訪問は嘘言の応酬である

公式訪問の前に双方の要求条件が出揃っているので、何処まで譲歩す
るのか決まっているはずだ。しかし結果は会談の後でなければ発表しな
いから、会談そのものはカードゲームと同じで、虚言の応酬、褒め合いと
貶しあい、交渉カード(切り札)の出し合いである。

アメリカ側にとって最有力の切り札は中国の社会道徳と国際ルールの尊
重、中国の人権問題、ノーベル平和賞の劉暁波の釈放要求、中国の民
主弾圧、サイバー攻撃。これに対し中国側は内政干渉、相互間の利益尊
重、米国の失業率と貿易赤字などで対応する。イラク、イラン戦争の泥沼
に言及するかもしれない。

中国側の切り札は、アメリカの国際的影響力の低下、財政困難とドルの國
際評価の下落、米国の金融政策とバブル崩壊の世界的影響、六カ国協
議における中国の北朝鮮に対する影響力など。

興味ある報道は、公式宴会の入場の際に、ヒラリー・クリントンを国務長官
と披露するか、ビル・クリントン元大統領夫人とするか、またはビル・クリント
ンをヒラリー国務長官の夫と紹介するかで頭を悩ましたと言う報道である。
結果はヒラリーとビルを別々にわけて、ヒラリーを国務長官、ビルを元大統
領と披露することになった。

●抗議デモに期待するな

胡錦濤の訪米でワシントンではホワイトハウスや国会の前で中国に対する
大規模なデモンストレーションが起きる。チベット、東トルキスタン、台湾独
立運動のデモ、法輪功の人権デモなどが報道されている。

デモが胡錦濤に影響を与える事はない。胡錦濤に対するデモはアメリカ
や世界に向けて中国の暴虐を見せる効果があるが、胡錦濤が国際的な
デモに威圧を感じる事はないだろう。

●胡錦濤訪問の成果

結論として、胡錦濤の訪問は大した成果もなく、オバマと胡錦濤が双方の
国際関係が改善され、相互の合意と共に両国間の政策の差異に対する
尊重などを強調する「褒め合い貶しあい」の挨拶で終るだろう。

そして訪問の後でになると米国内ではオバマの外交失敗の批判が起き、
中国では胡錦濤の訪米成功を賞賛する報道などであろう。

国家首長の公式訪問は決裂でなく、お互いに成功を述べ合い、今後の
相互の理解と尊重を約束しあう茶番劇である。

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