【日中首脳会談】また何かを、「棚に上げる」

【日中首脳会談】また何かを、「棚に上げる」
【日中首脳会談】また何かを、「棚に上げる」

    西村眞悟の時事通信転載

                    西村眞悟

 私は、かねてより言っていた、
 安倍総理の最大の外交的功績は、総理就任以来、日中首脳会談をしていないことだ、と。

 とはいえ、本日の午後、二年半ぶりに日中首脳会談が北京で行われると聞いている。
 そこで、会談が終われば、どうせいつものように、日中和解ムードが垂れ流されるのであるから、その前に言っておく。

 三十六年前の一九七八年(昭和五十三年)八月十二日、北京で日中平和友好条約が締結され、十月二十二日から二十九日まで、東京での批准セレモニーに出席する為に{ケ小平が中共首脳として初めて我が国を訪問した。
 そして、朝野は「日中友好」一色になった。
 その結果、我が国は、世界最大の「反日国家」と「核ミサイル大国」を生み出す世界最大の資金拠出国となった。
 即ち、「日中友好」は、我が国と東アジアの最大の脅威としての共産党独裁国家を生み出す高速道路であった。

 そこで、この危険な「日中友好」ムードが生まれる直前の条約締結交渉の最中に何があったかを思いだそう。
 この直前、遙か南西海域の東シナ海尖閣諸島周辺に、突如、イナゴの群れのような中共の漁船が二百隻以上出現し、傍若無人に我が国領海内を走り回った。
 もちろん、尖閣は中国固有の領土であり、その海域も中国の海である、日本のものではない、というのが中国漁船の言い分である。
 福田内閣は、困惑して腰を抜かす。
 すると、{ケ小平が、ニコニコ笑って、尖閣は「棚に上げよう」と言った。
 同時に、中国漁船が尖閣周辺からさーっと姿を消した。
 これが、棚に上がった効果だった。
 福田内閣は、ほっとして、「棚に上がった」ので安心した。

 しかし、考えてみれば、自国の領土を他国に「棚に上げ」られて「安心する」馬鹿が何処にいる。
 案の定、その結果はご承知の通りだ。
 中共は、我が国の援助で国力と軍事力を蓄え、勝手に尖閣を「棚から下ろし」、現在、漁船ではなく駆逐艦仕様の政府の「公船」で連日連夜、尖閣周辺領海を侵犯している。即ち、何時でも尖閣を武力で呑み込む体制を既成事実化した。

 では、この度の久方ぶりの「日中首脳会談」が為される直前の現時点で何が起こっているのか。
 我が国の東方海域、即ち、小笠原や伊豆諸島周辺の海域つまり「西太平洋」に二百隻以上の中国漁船が出現し、しつこくサンゴを奪っている。
 その上で、中共側は、首脳会談の下交渉で、安倍総理が靖国神社に参拝しないことと尖閣諸島の領有権問題を認めることを日本側に強く求めている。
 これに対して、日本側は、「若干の認識の一致をみた」とすると共に、小笠原周辺の中国漁船を何とかして欲しいと、中共側にお願いしているという。
 そして、本日午後に、首脳会談が行われるという次第だ。

 この「若干の認識の一致をみた」であるが、我が国外務省は自画自賛しているので言っておく。
 中共の外務大臣は、「若干の認識の一致をみた」上で、我が国外務大臣に、「日本は正しい歴史認識を持ち、過去の侵略行為と訣別すべきだ」と堂々と言っておるではないか。
 従って、我が国外務大臣も、「若干の認識の一致をみた」上で、「安倍総理が、靖国神社に参拝することに中共がとやかく言う筋合いではない」、また、「尖閣は完全に我が国固有の領土である」と堂々と言うべきである。
 こう言っておかなければ、安倍総理が本年や来年初頭に、靖国神社に参拝しなければ、中共に「安倍は、中国の意向に従った」と言う口実を与える。

 要するに、我が国は、「尖閣は我が国の固有の領土である」、「安倍総理は靖国神社に参拝する」とはっきり、繰り返し繰り返し、朝から晩まで、中共に伝達するべきであり、中共に首脳会談を受け入れるならば、「若干の認識の一致をみた」と言わすべきなのだ。
 逆ではないか。

 さて、「棚に上げる」であるが、三十六年前と同じように、何かが「棚に上げられる」と思わざるを得ない。
 それは、何かー?
 それは、尖閣よりもはるかに広大な西太平洋だー!

 何度も書いているように、我が国は無防備な長いお腹を、西太平洋に向けてさらしている。
 西太平洋を制圧するものは我が国を制圧できる。
 七十年前、敵がサイパンとテニアンを制圧して我が国本土を爆撃圏に入れ西太平洋の海空権を奪った時点で、我が国の敗北が決定した。西太平洋とは、我が国にとって、国家の存立の懸かった海だ。
 そして、この度、我が国が首脳会談で「お願い」した結果、小笠原・伊豆諸島領海・排他的経済水域から中国漁船が出て行くかもしれない。
 しかし、我が国は、それ以外の広大な西太平洋に、中共の軍事力が既成事実として存在し続けることを受け入れる事態になる。
 従って、「棚に上がる」恐れがあるのは、我が国の西太平洋におけるプレゼンスである。

 このことは、我が国のみならず、アメリカにとっても重大なことである。
 七十年前は戦略爆撃機B29の航続距離が問題であった。
 しかし、現在は、SLBM(潜水艦発射型ミサイル)の射程なのだ。
 中共は、西太平洋に原子力潜水艦を遊弋させれば、他国(ロシア)の領空を飛ばずに、直接ドンピシャリ、アメリカのニューヨークやワシントンを核弾頭ミサイルの射程に入れることができる。

 以上の通り、中共は、尖閣だけを狙っているのではない。東シナ海と西太平洋を狙っているのだ。
 そして、我々は、この度、西太平洋に新しい事態が仕掛けられつつあると知るべきである。
 よって、「日中首脳会談が二年半ぶりに開催された」、「世界第二位と第三位の経済大国首脳の会談と緊密な関係構築は意味がある」、というようなありきたりの評価に惑わされてはならない。

 我が国は、早急に西太平洋のプレゼンスを高めるために、海空軍力の強化を開始しなければならない。

 同時に、国民の正確な地理的認識が国家の存立の為に必要なのであるから、まずこれからは、NHKや民放の天気予報の際にTV画面に掲げられる日本の地図は、南はフィリピンから北はカムチャッカ、西はチベット高原から東はサイパン・テニアンのカロライン諸島、までを、常にTV画面で、毎日国民が眺められるようにしなければならない。

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