【一台湾人より】再び日本の皆様へ(その一)

【一台湾人より】再び日本の皆様へ(その一)
【一台湾人より】再び日本の皆様へ(その一)

         (2013年中秋 by Andrew Chang 張介州、米国アリゾナ州在住)

皆様に最初のメールを差し上げてから八年になります。その後も洋を隔てた米大陸から西太平洋の国際情勢の激変に、不安と危惧の目で故郷の台湾と懐かしの日本を眺め、皆様の幸福と国の安全・繁栄を願いつつ毎日過ごしてきました。

しかし不幸なことには二年前福島で発生した悲劇とその災禍のひどさに胸の潰れる思いで見守り、命を落とした不幸な方々の冥福を祈り、一日も早く再建復興の途を辿るよう祈りましたが、悲痛と焦燥で明け暮れるうちに、災禍の直後、嘗て見た日本の美しい伝統と精神を見出し、心が温まる思いをしました。

それは愛する親身の方を失い、住む家も津波に洗い去られ、悲しみと飢餓の内にも災民は助け合い,労わり合う頬笑ましい姿、他の国なら喧々囂々、我先にと救済物資を奪い合う見苦しい情景の代わりに、絶望の際に立たされても争わらずに、静かに辛抱強く長列に並び、配給物を待つ行儀のよさと守法精神、それから捨て身の精神で災害の食い止めと救助に災源に赴いた警察や自衛隊の雄々しい姿に深く心を打たれ、世界各地から賞賛の声を耳にし、敬意の目を身で感じました。

しかしその反面、近年来経済の衰退による閉塞感、それに社会道徳と伝統美徳の衰落にかなり、失望し、心を痛めました。特に三万余の高齢者の失踪、または親の死亡届もせず、引き続きその年金を盗用、白骨になった親の遺骸を家に放置したまま、とても人間社会とは思えられないニュースに愕然としました。

●岐路に立つ日本の経済:

前回の「日本の皆様へ」で戦後の日本復興に“驚嘆と羨望の目で見守り、、、” それが “やがて90年代にバルブ経済が崩壊しだし、、、” と触れました。

確かに戦後の「所得倍増」で国民がひたすら働いて築いた未曾有の好景気はアメリカに次ぐ世界第二位の経済大国になり、驚嘆と羨望の目で見守り、台湾人としても誇りを感じたと申しました。

しかしそれもがやがて頂点に達し、停滞と衰退のサイクルに入り、「失われた20年」、それに少子化と高齢化がもたらす将来の労働力不足、、、などの経済的・社会的問題、また膨大な赤字国債などの深刻な問題を抱え、閉塞した社会となり、気が暗くなる思いをしてきました。

●心霊改造の正念場:

筆者のメールに答えある日本の友人は “高度成長でカネ、モノが人生の追及する価値観となり、“戦後アメリカ軍事力の庇護の下、確たる国家理念の形成を怠り、ただひたすら経済的利益の追求のみに明け暮れ、国家国民の目指すべき理念を明確にしてこなかった政府をはじめとする国家並びに国民の家庭構築に対する姿勢が、今日の状況を生み出しているいると言えます”と、まことに当を得たコメントを頂きました。

またその他の友人からも“その間、日本人は数々の犠牲を払いました。そして、最も大きな代償は「日本人の心」ではないでしょうか”と。“その根底が「価値の揺らぎ」であり、すなわち「伝統的日本的な価値観」の揺らぎでもある” と考えさせられるコメントを頂きました。そしてそれは戦前の過激な愛国主義教育から日本を弱体化する戦後「平和憲法」に則る「ゆとり教育」や「個人主義第一」とした「忘日思想」までになり、「忘国・忘社会・忘道徳・忘家族」の結果となり、それが蔓延しだしたと指摘しました。

●行き過ぎた戦後イデオロギー:

確かに敗戦した日本は戦前の極端な軍国主義の暴走で国は未曾有の戦禍に遭い、虚脱状態となりましたが、幸い主要占領国は民主、人権、自由を重んじる米国だったので「国破れて山河在り」で戦争の廃墟から立ち直り、ひたすらに働き、急速に経済復興の途を辿り、上記のごとく全世界から驚嘆・羨望の目で見られたのです。  

しかし戦前にあったすべてのものが悪いとする戦後イデオロギーが広がり、それを信じた戦後の日本社会はその過程で嘗て日本人の誇りであり、世界からもお手本にされたほどの優れた資質、美的文化、伝統価値がややもすれば失われ、金で基準とする価値観に取って代わられ、その結果素朴で「心豊かな人生」の人生観がかなり失われました。

それに「誇り」を失い、自国の文化価値を知らないさもしい人も見られ、「日本的なもの」が全面的否定に近い戦後の後遺症−自虐史観の風潮−も見られたわけです。

●急速に変わる世界 ―社会文化と価値観の揺らぎ:

現今の世界は洋の東西を問わず「すべて金」の社会で、貪欲と物質の豊かさの追求に明け暮れる価値観念に引きずられ、強欲と不徳、怠惰と享楽に耽る社会風潮が見られ、心ある者は際限なき個人の権利と自由の主張、気品なき流行などに顰蹙、憂いを感じます。

特に数年前リーマンショックの誘発した金融の崩壊は、危く世界を破滅の淵に追い込みかねないところまで引きずり、未曾有の危機に直面させ、また昨今に見られるEU圏(特に南欧)の経済の落ち込みも行き過ぎた享楽・安逸を追求する価値観, 怠惰的労働観の風潮とそれに迎合する短視的財政、社会政策によるもので、そのため国家の財政は破綻に瀕し、未来の世代に負わせる莫大な負担をも憚らない責任感の欠如、あまりにも短視的で、良識・良心に欠けた無責任な人生観であります。

日本も戦後築き上げた未曾有の好景気と経済力もバルブ期に頂点に達し、以降は停滞と衰退のサイクルに入り、物質の豊かさと所得倍増がもたらした「豊さのボケ」、そしてこれ以上発展が見えない社会となり、成長で賑わした躍動感が閉塞感に取って代わられました。

●復興再起のため教育、産業政策を立て直すべき:

日本はこの度の世界的不景気に飲まれ、折悪しく人口高齢化と少子化などによる人口構造などが同時に発生、それに円高と隣近の新興国の競争で輸出が減少し、コストダウンのため生産設備の海外移出、その為、社会安定、経済繁栄の基礎であった企業の温情的雇用パータンも変えざるをえなくなり、地方の退廃、社会は不安・混迷で伝統的価値観が変わりつつある昨今となりました。

広大な土地と豊富な自然物資や資源に恵まれたアメリカと違い、日本は凋落を避けるには一致団結し、限られた資源を生かし、先端技術の開発とすぐれた製品を開発して、行き詰まりを打開すべく努力するべきです。

専門家でない筆者にはおこがましいことですが、これから経済発展の舵を変え、自然に帰り、そして日本独特の環境保全、代替・省エネヌギーの先端分野で新たな技術と美的観念を織り込んだ「モノづくり」の得意の家芸で製品を開発・生産すれば、世界をリードするに間違いないと思います。そしてその底力は日本独特の伝統文化、すなわち勤勉、倹約の美徳であり、それを支える人間力であります。

従って自国の優れた伝統と価値観を見直し、そしてそれを見直す意味で教育政策と国家観念を検討し、教育を通して「病んだ国」「誇りを失ったニホン人」から正しい愛国の観念と自尊心を取り戻し、自虐史観から立ち直るべき。言い換れば自国の伝統や美点を尊重し、自国の繁栄と安全のため、また国際平和にも貢献できる国家観を持つべきです。

●再生のカギ:日本独特の文化と伝統の再認識

従来の日本企業は強欲で暴・短利に汲汲とする冷血なエコノミク・アニマルのような営利企業と違い、従業員を労わり、伝統的にヒトを大切にする社会的存在であったはずです。それに日本文化には他の文化に見られない優れたものがあります。それは自然を愛でる繊細な審美観、国家・社会に献身する精神、それに弱きものを助ける侠義・正義感の武士道精神、物を愛し惜しみ、モノを作るのが強みであったはずです。

その証拠には日本文化伝統と日本人の美徳を讃え慕ったた外国人は近代史で多く見れれます。この点筆者は数年前に「ユニークな日本的美学―心惹かれる日本人の美的意識と情操」で特筆しましたが、その後も「日本人へ私が伝え残したいこと」(文春SPECIAL 2008 季刊夏号)との表題で、日本の美とそれにまつわる日本各界の専門家、名士などから寄せられた貴重なアドバイズに一層感銘しました。

特に筆者の目を引いたのは作家の黒岩比佐子女史の同誌「特別読物」に「日本を愛した外国人たち」の表題で “礼儀正し”は“洗練された東洋の華”で、“伝統的な日本文化への哀惜”の風変りの外国人の例を挙げ、また自然と密接に共生する日本文化に憧れた外国人などを触れ、深く印象づけられました。

このように多くの外国人に敬われ慕われた日本独特の文化と伝統の再認識、再生は日本経済を支える底力でもあり、経済の立て直しのカギでもあります。そしてそのユニークな文化を売ることも有力なモデルでもあり、特に地理的に日本に近く、親和的で成長の著しいアジア・太平洋地域の新興諸国のモデルとセール・ポイントにもなるはずです。つまり国力を支えるのは先端技術で日本特色の製品を作る企業文化と人材であります。

『台湾の声』http://www.emaga.com/info/3407.html

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