_塚本三郎元民社党委員長小論集_ _当会支部最高顧問、塚本先生世評_


 小沢・鳩山両氏の言動は危機を招く 
平成二十一年年末  塚本三郎
 

日本列島に寒波が押し寄せ、急に各地の雪景色が放映されている。

 もう十二月の下旬を迎えたのだから、当り前の自然現象である。今まで、十四、五度のポカポカ陽気が異常であったと気付いた。

混乱を極めた日本の政局は、年の瀬と共に、漸くその本性を露出して来た。

八月末の民主党政権の誕生は、革命政党でも、独裁政権でもないと信じて来た。旧自民党田中派の人達が主流であり、その上、日本の防衛政策では、一番熱心な旧民社党時代に育った、国会議員も多数居るから。

 ここ二十年余の自民党の政権に、愛想を尽かせた国民は、政権交代を望み、民主党は、それに応え得る政党だと認めた。もちろん、民主党が掲げたマニフェストも、すべて国民が期待する要望そのものばかりであった(出来もしないことだろうとの心配は在ったが)。

 民主政治は、与野党が、ほど良く平和裏に選挙で政権を交代して、時々刻々と時代の進展に応えられる必要がある。民主党政権の出発は、保守の長期政権から、革新へ、前進させたことは、国民に対してだけではなく、全世界に対しても、日本は目覚めた、と示すことが出来た瞬間が在った。国民も自信と悦びに湧いた一瞬でもあった。

 しかし革新政党は、西尾末廣・初代民社党委員長が説く如く、「政争は水際まで」が原則である。特に外交・防衛には一国の命運がかかっている。国論の分裂は亡国の道となる。

 鳩山由紀夫首相は、外交問題の手始めに、米軍海兵隊の基地、既に日・米で合意している、普天間から辺野古への移転を否定して、新しい代替地をさがすと言明している。

 平成七年以来、普天間返還と共に代替地としての、移転先を先送りすることは、日本の防衛及び、米国との同盟協力よりも、民主党が政権の安定を優先したとみる。

 日本と米国の両政府にとっては「抑止力の維持」と共に「地元住民負担の軽減」の二本柱で、両国が永年苦労して、漸く辺野古移転と決まったのに。

 鳩山首相は、かつて安全保障については、「駐留なき安保」を主張していたと聞く。十数年以前の主張は、それなりに妥当性が在った。

 時代は急速に悪化している。ソ連の解体は幸いとしても、中国の軍事力の拡大は、大陸から海洋へと脅威を拡げ、日本の領土尖閣諸島を、中国の領土だと宣言し、かつ、空母まで準備しつつ在る。既に日中の領海境界線地域での、中国の海底資源の探査は、盗掘だとの声が広がっている。まして、台湾海峡有事の危機は消えていない。

 もっと切迫しているのは北朝鮮の脅威である。北朝鮮はミサイルの発射と、核兵器の開発も、既に成功したと豪語した。それは即、日本の脅威の増大となっている。

 日本政府が、自主防衛の体勢を、急速に増大することの労をいとい、年々、防衛予算は減少されている今日、同盟国、米国に対して、「出て行きなさい」と云わぬばかりの、駐留なき安保を、事態の変化を悟らずに、鳩山首相は、今日もなお抱き続けているのであろうか。――そうとしか受けとれない、日々の言動は余りにも危険である。

 先の読めない鳩山首相は、結果として、安保条約を守るとすることは、普天間基地を、そのまま維持せざるを得なくなる。軽はずみに、沖縄県民に甘言を弄して、「県外か、国外へ」との空しい叫びの禍は、そのまま沖縄県民に降りかかる結果となるであろう。

 沖縄県は、目下逃れられない国際紛争の渦中に在る。その運命を悟らず、県民は最大の便利を主張している。それに便乗する鳩山首相の態度は、もろに、首相本人と、県民自身に不幸として降り帰って来ることを自覚していない。

 鳩山首相ほど、幸運の因縁を背負って成長した男は珍しい。知的には、国民等しく望む東京大学を卒業し、その上、大学教授を勤めた。財政的には、親から与えられた巨大な財産は、贈与税(数億)の問題を抱えていても、ビクとも動じない。まして、政治家を志しては、四代続いての国会議員、そして大臣、総理を重ねた、政治家環境抜群の家に育った代議士として、やがて内閣総理大臣と呼ぶ、国家の最高峰に登り詰めた。

 恵まれた人には、それなりの苦労が在ったであろうことは察しても、国会議員から首相になるまでは、歴代の首相として、幸運過ぎる程の人生の坂を、駆け登った人とみる。

 世に比肩して一番幸運の生まれと、育ちの優れた人が、前世の因縁とは云え、これで無事に日本の首相として、また安易な政権の担当者として、国勢を今迄のように、すべては、上げ潮の如く、天命を全うすることが出来るであろうか。

皮肉にも、鳩山由紀夫首相の肩には、日本国の運命が、巨大な黒雲となって覆っている。

 その第一は、百年に一度と呼ぶ、経済と金融の津波が日本の岸辺を襲いつつある。第二は、歴代内閣が積み重ねた、日本政府の背負う世界一の財政の赤字である。それが景気回復の足腰を縛る。財政の窮状は、民主党政権の予測を遥かに超えている。第三は、近隣諸国の、反日と軍事力増大の脅威である。それに対峙するためには、軍事力の強化と云う、鳩山首相の最も嫌う防衛力の強化が迫られている。第四は、対米関係の深化である。眼前には普天間基地の移転、インド洋の給油反対及び、アフガンへの援助問題である。

日本政府の抱える黒雲は、最大の幸運者だからこそ、「天の下す因果」は、鳩山首相に対して、国家としての、最大の不運の始末を荷したことを自覚するべきだ。

 鳩山首相は、今までの幸運は、天から授かった幸運であり、そのまま人生の借金だと心得よ。そして内閣総理大臣という、最強の権力の剱と、権威の尊厳と、打ち出の小槌を預かっているから、日本国家の為、死力を尽くして完済すべきと神仏は命じている。

小沢一郎幹事長は

 政権を鳩山氏に譲り、その下で党を支える、との謙虚さを示した小沢幹事長は、国民の眼力では本心ではなく、背後で捜査している「検察の影」に脅えているからと察知する。

 しかし、新政権の第一歩となる、平成二十二年度の国家予算は、俺の手を通さなければ編成は許さぬと、「事業仕分け」なる「予算編成のショー」を放映させた。これは見事である。それも表面では、鳩山の演出に見せかけた。

 だが、中国への「長城計画」なる北京への代参をはじめ、天皇陛下への習近平・中国要人の「挨拶実施のゴリ押し」、果ては、天皇陛下の訪韓の賛成等々、黙って、陰に徹すると約しておきながら、ついつい表面に露出してしまった。

 中国側の天皇への会見という、異例の申し込みを、ルール上無理と悟った鳩山首相はその旨を、中国側に一度は伝えた、という。

――「小沢サイドから、鳩山首相サイドに電話が入り、こう罵倒したという。――『オレの面子をつぶす気か』

  翌日、震え上がった首相の、指示を受けた平野官房長官が、再び、羽毛田宮内庁長官に天皇会見を強く迫った。官僚組織の一員でもある羽毛田氏に、これ以上、抗うすべはなかった。」(『週刊文春』による)

「官邸関係者によれば、小沢氏が鳩山総理に直接電話を入れた」。「何をやっとるのか」「ゴチャゴチャやっとらんで早くせい」そう〝恫喝〟したのだ。「この電話に震え上がった鳩山総理は、平野氏に、宮内庁への再度の指示」。それが平野氏と羽毛田氏のやりとりに繋がった。(『週刊新潮』による)

 「反対ならば、長官を辞めてから云うべきだ」との傲慢な姿を、マスコミへ、自身で会見して暴露すれば、今までの陰の人が「ヨロイ、カブトを着けたまま土俵に上がった姿」に似ている。それでも止められない、土俵の「行司鳩山」の無能ぶりをも、おまけに露呈せしめてしまった。大自然は、すべて因果は応報として現れる、と教えられたが、すべてこの世は、自然に背くなとの啓示ではないか。隠してもやがては露呈される。

政権交代によって、天下を治めるのは我々だと豪語し、前政権のうち、特に、外交、防衛等、関係国と関わりの大きい政策を、根本から否定することは、革命政党でなければしない。それは民主政治の舞台へ、土足で踏み込む独裁者の振舞いとなる。

 例えば、一九三二年、ドイツの選挙で(最も民主的とされた、ワイマール憲法の下で)ヒトラー率いるナチス党が第一党となり(二三〇)、社民党が(一三〇)、共産党が(八九)の議席となった。ヒトラーは翌年、政権を掌握し、反民主、反共産、反ユダヤ主義を標榜し、全体主義的独裁政治を推進し、ベルサイユ体制の打破を目指して、再軍備を強行し、第二次世界大戦を引き起こした。

 小沢幹事長の傲慢にして、心ない言動は、本人にしてみれば、大切な客人、次期政権のトップに立つ大中国の要人を、最高の待遇でもてなすことは、日・中親善のため、大きな役割を果したと自負していることであろう。

しかし、その行動は、民主党の小沢幹事長による前代未聞の「ゴリ押し」によって実現したものであった。それはもはや「政治利用」ではない。〝独裁者〟が陛下を「政治利用」したのだ。

 〝一カ月ルール〟を破り、こともあろうに、天皇陛下を中国共産党に差し出した民主党の小沢一郎幹事長は、もはや自らを〝小天皇〟と錯誤しているとしか思えない傲岸さである。

 総理はおろか、陛下をも意のままに操ろうとする暴君に告ぐ。

 君、国を売り給うことなかれと、月刊誌や週刊誌は太字で書いている。

 一四〇人余の国会議員を率いての訪中に対して、また、中国首脳に対しての振舞いは、私的利用とみるのが常識ではないか。そして客観的には、日本は「中国の属国」と受け取られ、諸外国もそう見なすことになる。これはまさに「朝貢外交で、自ら中国の支配下に入るようなもの」と評したのは、百地章・日本大学教授である。

 まして、「永住外国人地方参政権付与」の法が上程されれば、韓国や、中国の人達が、自国政府の指示で日本に移住し、日本の一部を占領しかねない。表面は韓国対策であっても、実質は相手国に対する属国化ではないか。特に中国については、チベット、ウィグルと同じように日本も、やがて、第二の中国の隷属化の道を展くこととなることに気付くべきだ。

 隣国の中国や韓国が、日本に対して、スキあらばとねらっているとき、その間を、友好、友愛で切り抜けることは、一つの手段としては否定しない。だが、その指導者本人に、私利と私欲が介在すれば、結果は逆となることを戒めなければならない。

 天はそれを見抜いて対処する。天ばかりではない、相手国も悟らないはずはない。