NHK問題で朝日がパイワン族出演者に事前説明なく発言と字幕は符号せずと報道

NHK問題で朝日がパイワン族出演者に事前説明なく発言と字幕は符号せずと報道
昨日付の朝日新聞がNHK「JAPANデビュー」問題について大きく紙面を割いて報
道している。この記事は台北支局の野嶋剛支局長による署名記事。

 これまで、日英博覧会で「人間動物園」として「展示」されたと同番組で紹介されたパ
イワン族のチャバイバイ・プリャルヤンさんの娘である高許月妹さんの「かなしい」とい
う発言について、それは、日本語で言う「悲しい」の意味ではなく「なつかしい」の意味
だったということが日本文化チャンネル桜の取材を通じて明らかになっている。

 また、やはり日本文化チャンネル桜の取材で、子孫の息子さん(許進貴氏)や娘さんら
パイワン族出演者には日英博覧会で見せ物になったという事前説明がなかったことも明ら
かになっている。

 しかし、NHKは「パイワン族の方々への取材について、中には誹謗中傷、歪曲ともい
える誤った情報も流布」しているということで、7月22日にホームページで公表した「説
明・追加」で、「子孫である許進貴さん(兄)と高許月さん(妹)には、まず『父親たち
パイワンの人たちが、イギリスに連れて行かれ、博覧会で見せ物になった』ことを説明し、
その後、博覧会で撮影された写真を提示しながらインタビューを行っています」と説明し
ている。

(NHKに対しては、娘さんの姓名「高許月妹」が番組でもホームページでも「高許月」
となっているので訂正を求めているが、一切応じていない)

 ところが、朝日新聞が屏東県の高士村まで行って、改めてチャバイバイ・プリャルヤン
さんの娘である高許月妹さんに取材したところ、「取材趣旨の説明はなく、突然来て父親
の写真を見せられただけ」だったという。また、その写真を見て「涙を流したのは父を懐
かしく思ったから」と話しているという。

 さらに、番組では、高許月妹さんは「かなしい」と日本語で話した直後、続けてパイワ
ン語で話しているが、その発言はまず字幕で「悲しいね。この出来事の重さ、語りきれな
い」と出て、その横から日本語で「悲しいね、語りきれないそうだ。悲しい、この重さね、
話しきれないそうだ」と放送した。

 しかし、朝日新聞は高許月妹さんのパイワン語による発言を「パイワン語の専門家が発
言を改めて訳したところ『何と言えばいいか。(父のことは)よく分からない』となり、
字幕とは符合しない」と報じている。

 このパイワン族が登場する放送場面にはさまざまな問題が隠されていた。朝日新聞の報
道によりさらに「ヤラセ」「捏造」の影は濃くなってきたと言える。

 では、何が「ヤラセ」であり「捏造」かというと、以下のようにまとめられる。

・出演者や通訳など、取材を受けた人々が事前の説明はなかったと言っているのに、NH
 Kは「説明した」とウソの説明していること。

・父親の写真を見て「かなしい」と言ったことを、人間動物園として見せ物にされたこと
 を「悲しい」と受け取られるよう印象操作したこと。

・番組では兄と妹しか出てこないので、視聴者は横からの日本語は兄の発言だと思わせら
 れたが、それを後になってNHKは「通訳」の発言だったと説明していること。

・高許月妹さんのパイワン語発言は「悲しいね。この出来事の重さ、語りきれない」と翻
 訳されて字幕放送されたが、「何と言えばいいか。(父のことは)よく分からない」と
 いう発言だったこと。

・通訳の方が話していた日本語の「悲しいね、語りきれないそうだ。悲しい、この重さね、
 話しきれないそうだ」という発言は、果たしてその場で、高許月妹さんの発言と同時に
 通訳されたものかどうかも怪しくなってきたこと。

 パイワン族の方々は6月21日付でNHKに「公開質問状」を送り、裁判の原告団にも加
わるべく意思表明しているが、このパイワン族の方々に関する問題については、本会の小
田村四郎会長や水島総・「NHK『JAPANデビュー』」を考える国民の会代表らも7
月24日付で「NHKに対する質問と公開討論会の要請」を出している。この中で「この通
訳とは誰か」「なぜ字幕で通訳者の声であることを断らなかったのか」「通訳という役目
ならギャラが支払われたはずだが、支払われたのか」など、詳細にわたって質問している。
本誌でその全文を紹介しているので、下記に改めてご紹介したい。

 ちなみに、NHKの日向放送総局長は、朝日新聞の記事について、昨9月16日の記者会
見で次のように話したという。

 「事前に問い合わせを受けたことに丁寧に答えてきたが、見出しだけ見ると、相手に説
明もせずに取材したかのようなニュアンスが感じられたので、残念かなと思った。」

 朝日の記事ではNHK側の反論もきちんと掲載しているのだから、この発言には、野嶋
剛支局長もガッカリだろう。現場まで行って本人に取材して記事を書いたプロのジャーナ
リストに失礼というものだ。

 近く裁判が始まる。この日向放送総局長の発言が正しいのか、朝日新聞の記事が正しい
のか、そう遠くない日に判明する。

 では、下記に柯徳三氏の発言も改めて紹介している朝日新聞の記事をご紹介したい。N
HKの河野伸洋エグゼクティブ・プロデューサーからの朝日への回答もあり、読み応えが
ある。

 最後に、河野氏は「事実に基づいた反論はいまだにありません」と回答しているそうだ
が、私どもが出した「NHKに対する質問と公開討論会の要請」に対する回答では、質問
に対していっさい答えていない。答えられなかったといった方が正確だろう。だから、N
HKからは「事実に基づいた回答はいまだにありません」。たいへん残念です。

                 (メールマガジン「日台共栄」編集長 柚原 正敬)

■シリーズ・JAPANデビュー 第1回「アジアの“一等国”」に関しての説明・追加
 http://www.nhk.or.jp/japan/asia/090722.html

■「NHKに対する質問と公開討論会の要請」全文
 http://www.melma.com/backnumber_100557_4555917/

■放送総局長会見 2009/9/16
 http://www.nhk.or.jp/pr/keiei/toptalk/soukyoku/s0909.html


台湾で広がる困惑 日本の植民地統治を批判 NHK番組
【9月16日 朝日新聞「メディアタイムズ」】

 日本が台湾を植民地統治した歴史について批判的に検証したNHKスペシャル「JAP
ANデビューアジアの“一等国”」(4月5日放映)に対し、台湾で困惑や不満の声が広が
っている。60年余りが過ぎても台湾での日本統治への評価や感情に複雑なものがあること
をうかがわせている。                      (台北=野嶋剛)

登場の先住民族「説明なかった」

 NHKは4月から長期企画「プロジェクトJAPAN」を始めた。近代日本が欧米に追
いつこうとして孤立し、戦争に突入した歴史を描くシリーズ「JAPANデビュー」はそ
の一環で、台湾部分はシリーズ第1回。日本統治下の差別、抵抗運動への弾圧、皇民化教
育に焦点を当てた。

 これに対し、台湾で「内容が偏っている」と番組への抗議行動が広がり、日本語教育を
受けた世代の親睦(しんぼく)会「友愛グループ」や短歌愛好者で作る「台湾歌壇」は抗
議や訂正要求をNHKに送った。

 日本では自民党の一部が「反日的な番組」と批判を展開。小田村四郎・元拓殖大学総長
ら約1万人が1人あたり1万円の慰謝料を求める民事訴訟を東京地裁に起こし、近く弁論が
始まる。一方、日本ジャーナリスト会議は「表現の自由への恫喝(どうかつ)と干渉にあ
たる」と表明。民間団体「開かれたNHKをめざす全国連絡会」も「放送の自由の守り手
として責務を果たすべきだ」とNHKを支援する側に立った。

 議論を呼んだ番組内容の一つが、1910年、台湾の先住民族パイワン族の人々をロンドン
の日英博覧会に連れて行った経緯を検証する「人間動物園」と題した部分。NHKは渡英
した人々の出身地、屏東県高士村(パイワン語名=クスクス村)を取材した。

 当時の欧州に植民地文化を見せ物的に取り上げる風潮があったのは事実だ。しかし村長
の荘来金さん(50)は「先達が海外で我々の文化を広めたことは村の誇りとして語り継が
れている」と話す。村民のこうした感情は番組で紹介されなかった。

 渡英した男性の娘、高許月妹(同=チャバイバイ・バブア)さん(79)は番組の中で父
親の写真を見て涙を流し、パイワン語で語る。「悲しいね、この出来事の重さ、語りきれ
ない」と字幕が出た。

 だが、朝日新聞の取材に高許月妹さんは「涙を流したのは父を懐かしく思ったから」と
話した。パイワン語の専門家が発言を改めて訳したところ「何と言えばいいか。(父のこ
とは)よく分からない」となり、字幕とは符合しない。番組では発言の背後で「この重さ、
話しきれないそうだ」と日本語の声が流れるが、これは日本語が分かる近所の男性の声だ
った。

 高許月妹さんは「取材趣旨の説明はなく、突然来て父親の写真を見せられただけ」と話
す。NHKは「発言と字幕は違っていない。見せ物になったこともディレクターが説明し
た」と反論している。

「日本の功罪五分五分」複雑な感情も

 日本の先住民族政策は強硬、懐柔の両面があり、台湾側の対日感情もない交ぜになって
いるところがある。

 台湾・中央研究院助理研究員の黄智慧氏によると、日本の統治下で漢族の抗日運動が終
息した後も一部先住民族の抵抗は続いた。1930年には日本人警官の粗暴な振る舞いに反発
した先住民族が大勢の日本人を殺傷する「霧社事件」が起きた。

 一方で日本は、恭順の意を示した先住民族には民生の充実を図った。今も日本語を使い、
日本統治時代を懐かしむ高齢者は少なくない。

 感情の複雑さは、高等教育を受けた人々も同様だ。

 日本人と一緒に学校に通った元医師の柯徳三さん(87)は番組で、教育における台湾人
差別を非難する発言を紹介された。ところが本人は「取材で日本統治をどう思うかと聞か
れ、私は『功罪が五分五分』と話した。社会建設や教育の普及を評価したのに、功績の部
分は完全にカットされた」と言う。

 柯さんは抗議文を送ったが、NHKは「発言の趣旨を十分に反映している」と反論、主
張は平行線だ。

 台湾総統府直属の研究機関「国史館」の林満紅館長は「日本は台湾をアジア進出の拠点
とし、台湾人は二等国民として差別を受けた。しかし、日本が台湾経営に力を注ぎ、中国
大陸やアジアの国々と比べ豊かで安定していたことも事実。一方的な肯定や否定は適切で
はない」と話している。

NHK「誤った情報が流布 残念」

 「JAPANデビュー」を担当した河野伸洋・NHK放送総局エグゼクティブプロデュ
ーサー(55)は朝日新聞への文書回答で「誹謗(ひぼう)中傷、歪曲(わいきょく)とも
いえる誤った情報が一部に流布している」と反論した。    (編集委員・川本裕司)

 ── 日本の台湾統治の負の側面を描くのが狙いだったのですか。 

 「台湾の植民地統治についてこれまで伝える機会があまりありませんでした。今回、日
本統治50年を記録した『台湾総督府文書』が保存されていることなどがわかり、番組が制
作できると考えました」

 ── 視聴者の評価は。

 「ご意見の中に『こうした歴史を知ってこそ、台湾の人々とより良い関係を築いていけ
る』というものがありました。私たちも日本と台湾の絆が深まることを願っています」

 ── 自民党有志の「公共放送のあり方について考える議員の会」が発足したり、訴訟
が起こされたりと異例の批判が展開されましたが。

 「番組のホームページに、ご意見や疑問に対する説明を6月と7月に掲載しました。これ
に対して、事実に基づいた反論はいまだにありません。誤った情報をもとにして『内容が
偏っている』『事実関係に誤りがある』『台湾の人たちへのインタビューを恣意的(しい
てき)に編集している』などの批判があることはたいへん残念です」

・キーワード 日本の台湾統治
 1895年、日清戦争後の下関条約で台湾が日本に割譲された。日本は台湾総督府を設置し、
1945年の敗戦まで植民地として支配した。

・写真:高許月妹さん(右)と荘来金村長=台湾・屏東県高士村、野嶋写す

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