李登輝氏 発言の真意は [産経新聞論説副委員長 矢島誠司]

李登輝氏 発言の真意は [産経新聞論説副委員長 矢島誠司]
李登輝氏の再挑戦の決意に台湾の人たちがどう応えるか注視したい。

【2月14日付 SANKEI EXPRESS「地球随感」】

 台湾の李登輝(りとうき)前総統が、与野党の対立で混迷を続ける台湾の救済のため、
再び起(た)ち上がったようだ。狙いは「中道勢力を結集した『民主台湾』の再生」だと
いう。つまりは、多数派の台湾人を結集した安定政権づくりということである。実現すれ
ば、台湾初の政界再編成につながる。勝算はあるのだろうか。今年の今の時期に起ち上が
ったことに意味がありそうだ。

 一昨日(12日)付の産経新聞に、長谷川周人・台北支局長による李登輝氏への単独イン
タビューが掲載された。興味深い含意と情報に満ちたインタビューであった。

 その中で、李氏は、これまで「友党」と位置づけてきた台湾の与党、民主進歩党(民進
党)と同党の陳水扁総統を厳しく批判し、初めて民進党に「宣戦布告」を突きつけ、民進
党に頼らない新たな主流政治勢力の結集を宣言した。

 じつは、1月31日に発売された台湾の週刊誌「壱週刊」が、李登輝氏の独占インタビュ
ーを掲載し、李前総統が「大陸を訪問したい」「独立を放棄する」「大陸資本を台湾に受
け入れよ」の見出しでセンセーショナルに報じた。これを受け、台湾内外で李登輝氏の「
方針転換」「独立否定」「変節」「裏切り」などの論評、批判が相次いだ。産経新聞のイ
ンタビューはこうした騒動を受け、李登輝氏の真意を聞こうと行われたものだ。

■狙いは政界再編

 李登輝氏は、産経のインタビューに、「壱週刊」の見出しなどの部分は否定しつつ、独
立を言わない、とした部分については「徐々にわかってくる。独立を宣言すれば中国大陸
はたたきに来るし、アメリカや日本も困る」と語り、現実主義的選択であることを示した。
李氏は「台湾はすでに独立国だ。独立を追求することは、現在は独立していないことを認
めることになる」という立場である。

 では、台湾の中道勢力を結集した政界再編とは具体的にどのようにするのか。

 李氏が推す「台湾団結連盟」を改組し、党名も3月までに公募で、例えば「台湾民主党」
「台湾民主社会党」などに変更、新党が核となって、与野党の「台湾派」を総結集して、
安定政権を作ろうという構想のようだ。

■勝算はあるのか

 小党「台連」の党名を変更したところで、何も変わらないという冷ややかな観測が出る
のが必至だが、今年の台湾はこれまでと違う事情もある。

 年末の立法院(議会)選挙では、定数が従来の235議席から113議席へと半減する。各党
とも夏までに候補を決めなければならないが、選に漏れる人が続出するため、すでに党内
分裂気味で情勢はきわめて流動的だ。どう展開するか予断を許さない状況にある。

 なによりも、2000年の政権交代以来、7年も続く与野党の対立、権力闘争に多くの台湾
人はウンザリし、このままでは台湾の経済も沈滞し、民主化も後退して、大陸に併呑され
てしまうとの焦りも出ている。

 「台湾は内輪のけんかをしている場合じゃない」(産経インタビュー)という李氏の言
葉にうなずく台湾人は少なくないだろう。総統を退任してから7年、今年84歳になった李
登輝氏の再挑戦の決意に、台湾の人たちがどう応えるか注視したい。

■やじま せいじ 1971年、京大文学部卒。産経新聞社入社。米SAIS留学、国際公共
 政策学修士。ブリュッセル、ワシントン特派員を経て外信部長、編集局次長兼経済部長
 の後、台北特派員。現在論説副委員長。主に国際問題、国際経済を担当。

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