日本「文化」としての新幹線 [国際日本文化研究センター教授 白幡洋三郎]

日本「文化」としての新幹線 [国際日本文化研究センター教授 白幡洋三郎]
造園学や産業技術史を専門とする国際日本文化研究センターの白幡洋三郎氏が、最近開
通した台湾版新幹線について、日経新聞の夕刊コラムで興味深い指摘をされている。新幹
線は日本人のメンタリティを象徴しているという。だから、すでに日本の文化だというの
である。そこで、どこにでも移植できるものではないと警告を発している。

 台湾側は、日本の技術に何とかフランスやドイツの技術を混ぜ合わせた「日欧混在シス
テム」を「ベストミックス」と称している。ここに戦後台湾の置かれた世界的位置と、台
湾の「文化」が現れているように思う。白幡氏のプロフィールとコラムを紹介したい。
                                    (編集部)


白幡洋三郎(しらはた ようざぶろう)
1949年、大阪府生まれ。国際日本文化研究センター教授。
京都大学大学院修了後、西ドイツ・ハノーファー工科大学に留学。京都大学助教授などを
経て現職。農学博士(京都大学)。造園学・産業技術史などを専攻し、環境計画から都市
論まで、幅広い関心領域をもっている。『近代都市公園史の研究−欧化の系譜』『旅行の
ススメ−昭和が生んだ庶民の新文化』『大名庭園−江戸の饗宴』『花見と桜』など多数。


日本「文化」としての新幹線
                    国際日本文化研究センター教授 白幡洋三郎

【1月23日付「日本経済新聞」夕刊「明日への話題」】

 台湾新幹線(台湾高速鉄道)が開業した。途中の駅でドアが開かず、乗り降りなしで発
車したり、ポイント故障で出発が遅れたり小さなトラブルは続発しているようだ。運転士
の大半がフランス人と開いて驚いた。台両人運転士の養成が間に合わなかったというが、
不思議な話だ。

 十数年前から進められてきた高速鉄道計画は、フランス・ドイツの欧州連合がいったん
受注したが、一九九九年の大地震を重く見た台湾側が日本の新幹線方式の採用に転換した
経緯がある。おかげで込み入った「日欧混在システム」のもとで台湾新幹線は走る。運転
士の問題もそのひとつらしい。

 ニュースを聞きながら、日本の新幹線についていろいろな思いが浮かんだ。いまや世界
最速の座は明け渡したものの、速度以外で新幹線はいくつもの偉業を達成している。東海
道新幹線が開業以来四十二年間に運んだ乗客は四十数億人に達し、その間衝突・脱線によ
る死傷事故ゼロの記録を誇る。また、運行の正確さも他国の追随を許さない。列車一本当
たり平均遅延時間は例年一分以内。二〇〇三年度はわずか〇・一分だった。東京・大阪間
五百五十キロ余を二時間三十分で走って、到着が平均六秒しか狂わないのだ。

 高速運行を維持しつつ安全性と正確さを高度に兼ね備えた新幹線は、几帳面(きちょう
めん)と言われる日本人のメンタリティを象徴したような鉄道である。日本の「文化」で
あり、日本の「美」意識を技術的に凝縮したものといってもよいだろう。ただその「文化」
や「美」はどこにでも移植できるわけではないし、しなければならないものでもないと思
う。むしろ日本はかなり変わった国だと自覚するのが良いかもしれない。

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