新たな「華夷秩序」構築へ動く中国  廖 建龍(翻訳者)

「明日への選択」という非常にクオリティの高い月刊誌がある。日本政策研究センター
(伊藤哲夫代表)が発行し、現在出ている8月号で319号を数える。創刊27年目を迎える。

 毎号のコラムの一つに「一刀論断」があり、この8月号では、東京大学で農業博士号を取
得し、『香港崩壊と日本』などの著書とともに、『毛沢東の真実』などの翻訳でも知られ
る台湾出身の評論家で翻訳者の廖建龍(りょう・けんりゅう)氏が執筆している。

 廖氏が翻訳して6月に出版した『次の中国はなりふり構わない』(産経新聞出版)の著
者、呉国光氏による中国動向の分析と「予見」について書かれている。呉国光氏は趙紫陽
元総書記のブレーンでカナダ・ビクトリア大学教授。

 廖氏がここで触れている7月18日の産経新聞の呉国光氏へのインタビュー記事については
すでに本誌でも「10年続いてきた中華人民共和国の胡錦濤政権はこれまで何をやってきた
のか、次期の習近平政権はどのような外交路線をとるのか──台湾関係者にとっても気に
なるテーマだ」として紹介している。

 廖建龍氏の「一刀論断」を掲載するとともに、産経新聞のインタビュー記事を改めて紹
介したい。なお、掲載に当っては漢数字を算用数字に改めたことをお断りする。

◆「明日への選択」8月号
 http://www.seisaku-center.net/modules/wordpress/index.php?p=832

◆趙紫陽ブレーンの呉国光氏が「遅れて来た帝国主義国家」中国の次期政権を予測
 http://melma.com/backnumber_100557_5614490/

◆『次の中国はなりふり構わない』(産経新聞出版、2012年5月24日発売、1,680円)
 http://www.sankei-books.co.jp/m2_books/2012/9784819111652.html


新たな「華夷秩序」構築へ動く中国
廖 建龍(『次の中国はなりふり構わない』翻訳者)
【「明日への選択」2012年8月号「一刀論断」】

 この6月、私が翻訳した『次の中国はなりふり構わない』が出版された。著者呉国光は人
民日報社評論部に在籍中、29歳の若さで抜擢され、趙紫陽総理が主宰する「政治体制改革
研究チーム」に最年少のメンバーで参加し、「政治改革の全体的設計案」の起草者の1人と
なった。1年ほどで草案は完成し、趙紫陽はこの草案を含めた全体報告を87年第13回党大会
に提出したあと、失脚する。

 彼は89年の天安門事件発生直前の4月に出国し、まずアメリカの大学で政治学の研修をへ
て、現職のカナダ・ビクトリア大学中国研究及びアジア太平洋関係講座教授、政治と歴史
の両学科の終身教授を兼任。彼は、中国への出入りは自由だが、国内での公の発言、出版
は厳禁扱いの身分。彼は単なる1人の中国人政治学者ではなく、中国の党、官界を自ら体験
し、中国の次期政治指導者たちと同年代で、かつ数多くの旧知をもつという、貴重な存在
であることに注目されたい。

 著者は中国が79年から始めた政治改革の変遷を、じっと客観的に冷静に観察し、政治学
的手法で分析してきた結果、2001年に中国がWTO加盟承認をもって、中国共産党は政始
改革を終結したと結論づけた。つまり政治改革はもう一切やめて、このままの政治体制を
続けて行こうと決断していると見てとったのである。制度面では多少の修正はするが、根
本の共産党の一党専制は続行して行きながら、如何なる代価も惜しまずに中国の経済を高
度成長させ、社会安定堅持にも如何なる代価も惜しまずに払って行くと。その専制政治に
不満で社会の安定を脅かす言論や行動が見られ次第、徹底的に鎮圧し、統制を強める。さ
らには、その中国式モデルを、世界にも向けて広めて行くと見てとったのである。

 それは、中国が1840年(アヘン戦争)以来の中国の歴史的蹉跌を逆転させようと目論ん
でいるという変化が見られるからである。軍備増強しかり。世界に向けてしかるべき布石
を着々と打ち、新たな華夷秩序構築への変化が見られるのである。そこで、著者は、おそ
らくそれは日本に衝撃を与えるはずだと、2010年2月に書いて寄こした本書の日本の読者へ
の序文で予見した。果たして同年9月に尖閣諸島漁船衝突事件が発生したのである。

 著者は、中国共産党が中国社会を統治するために、どのような仕組みを作り上げたかを
分析してくれた。それは中国社会を、「政治領域」と「非政治領域」に仕分けることから
はじまった。前者は範囲を縮小して、政治的買収と政治的囲い込みによって資本家やイン
テリ精鋭などを政治的に囲い込み、買収する。後者は範囲を拡大して、自由化し、すべて
の社会生活を徹底的に私有化する。そうすると、本来は国有(公有)であったはずのもの
は勝手に私有化し、私物化する。「国有」の名において巨大企業、銀行などを独占し、多
くの億万長者が続出し、既得利益集団が続々と現れる。そのような私有化では「公共」の
領域はなくなり、「公民」はもはや存在しなくなる。そして、中国の経済発展によって、
そのような「非公民」が中間層として膨張する。

 私は、最近中国社会で蔓延している「商標権問題」はまさしくそのような「非公民」の
自由化の象徴的現象だと見る。だれもが、勝手に「商標」を登録できる。これは獲物が引
っかかるのを待つ網だ。最近の大物はアップルのiPadの訴訟勝利。日本各地の県、市、町
の名前や、地域ブランド、キャラクターはなんと数百に登る商標が登録されているそう
だ。

 著者は、中国社会は、権力と財力が極端に集中する階層と疎外された階層の2つに分化し
て相互に激突し合い、中国社会の「共生」を破壊しているから、行く末はじつに恐ろしい
ことだと怒りを込めて予見している。

 著者は本書で、中国の経済発展と専制政治の矛盾、中国共産党の政治操作の手法とその
限界を解き明かして行く一方、民主主義政治の定義と現実の難しさをも説いている。ここ
の部分は日本や台湾にも当てはまるような気がする。

 6月末、産経新聞の北京支局の矢板記者がカナダに居る著者に電話取材した全容が、7月
18日の2面と8面に掲載された。そのなかで習近平時代には対日政策はどうなるかと尋ねた
個所を直訳して見る。

「過去20年間をみると中国はずっと反日感情の高まりをそのままにほっといてきた。しか
し、89年の天安門事件が鎮圧されると、中国を経済制裁する工業大国のなかでそれに参加
していなかったのは日本だけだった。それでも、日中両国が緊密に協力するチャンスを与
えることはしなかった。かえって中国政府はみずから鎮圧して失った政治の合法性を中国
ナショナリズムを鼓舞して強化した。日中関係はいわばその犠牲に供されたのである。習
近平時代を予想するなら、中国当局は以前に比べ日本に対してより友好的にして、日本を
中国が主導する、東北アジア、東南アジア地区の経済協力体系に引き入れて、徐々に日本
を中国の子分になるよう迫る。もちろんそうするには、日本がこのような屈従的地位を甘
んじて受け入れる必要があるが、そうするには、日本の外交的基軸を徐々に日米関係から
日中関係に移して行くことが前提となる。日本がそれを受け入れられないとなれば、日中
関係はまたまた緊張を続ける」と、じつに明快に答えた。

 それから間もなく、7月のプノンペンで開かれた東南アジア連合関連の会議で、南シナ海
の覇権を目指す中国の意図が一層鮮明になった。著者の予期した通りである。

 最後に、本書のために国家基本問題研究所理事長の櫻井よしこ氏がわざわざ解説を書い
てくださったことに、感謝いたします。             〈りょう・けんりゅう〉

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