接近する台湾とヨーロッパ なぜ? 中国との関係は?

接近する台湾とヨーロッパ なぜ? 中国との関係は?

 本誌12月1日号で「ヨーロッパでも共有されるようになった台湾の重要性」と題し、いまやヨーロッパでも、地政学的な要衝や民主主義世界にも重要な台湾という認識が共有されるようになったとして、その背景ついて述べ、今後、台湾は中国の圧力に抗して台湾版の価値観外交を展開し、オランダやドイツとも関係を強めていくだろうと記しました。

 NHKも、本誌と同じ観点から「台湾とヨーロッパの接近の裏には何があるのか? ヨーロッパと中国の関係はどうなっているのか?」を解説しています。

 この解説でも、背景として「新疆ウイグル自治区の人権状況や、香港の一国二制度の形骸化、中国軍の急速な軍備拡張、それに『戦狼外交』と呼ばれる強気な外交姿勢などが、ヨーロッパの国々の中国に対する認識を変えつつあ」るとしています。

 また、「『一帯一路』に対する期待も高まりましたが、投資やインフラ事業は期待したほど実現されてい」ないこともその大きな一因とも述べています。

 一方、ヨーロッパが台湾との関係を深めようとするのは、中国の新型コロナウイルスへの対し方には「初動対応の遅れや情報隠蔽のような動き」があり、それと裏腹に、台湾が「新型コロナウイルス対策として、徹底した情報公開を進め、成果をあげ」たことを挙げ、また、経済的要因として「台湾が半導体をはじめとするサプライチェーンの要として経済的に重要な立ち位置にあること」という2つの要因を挙げています。

 いずれの見方も、ヨーロッパが台湾との関係を深めている原因は、日米首脳会談や先進7ヵ国首脳会議でも共有された「中国への深刻な懸念」にあると概括され、ヨーロッパと台湾の関係深化のそもそもの原因は中国が作った、つまり、今の状況は中国自身が招いたと言えるようです。

—————————————————————————————–【詳しく】 接近する台湾とヨーロッパ  なぜ?  中国との関係は?【NHK:2021年12月2日】https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211202/k10013369361000.html

 ことし10月、台湾の外交トップ=外交部長のヨーロッパ訪問が大きく注目されました。

 これまで台湾の外交部長が外交関係のない国を訪問する際は、中国と台湾をめぐる事情から、いわば「お忍び」で行っていたのに、今回はあらかじめ発表までしてから現地に入るという、極めて異例の形式をとったためです。

 台湾とヨーロッパの接近の裏には何があるのか? ヨーロッパと中国の関係はどうなっているのか? 詳しく解説します。

◆なぜ外交部長の訪問は注目されたの?

 背景にあるのは、中国が掲げる「1つの中国」の原則です。

 「台湾は中国の一部である」と主張する中国からすれば、台湾に「外交部長」が存在すること自体、認めるわけにいきません。まして中国と国交のある国を訪問するなんて、もってのほか。中国は阻止するためにあの手この手の圧力をかけてきます。

 台湾としては、仮に外交部長が相手国を訪問できる機会があっても、相手国に迷惑をかけないよう配慮する必要があります。このため、これまでは事前はおろか、事後ですら発表しないというのが、通例だったんです。

 たとえば、ことし9月、台湾の呉※ショウ燮外交部長が、アメリカを訪問したことがメディアで報じられた際に、台湾の外交部は、アメリカからの便で戻る部長の姿がテレビで報じられても、ノーコメントを貫きました。

◆それなのになぜ事前に発表したの?

 台湾は、ヨーロッパのほとんどの国と正式な外交関係、つまり国交を持っていません。現在、台湾と外交関係があるのは世界で15か国にすぎず、ヨーロッパではバチカンだけです。

 しかし、ことし10月に台湾の外交部の呉部長が訪れたヨーロッパ中部のスロバキアとチェコについては事前に訪問を発表しました。呉部長のヨーロッパ訪問と前後する形で、10月下旬には60人規模の経済視察団もスロバキア、チェコ、リトアニアを訪問しています。

 チェコは去年、大統領に次ぐ高位の上院議長が台湾を訪問しました。これに中国の王毅外相が「重い代償を払わせる」と厳しく非難したのに対し、即座に反発したのがスロバキアの大統領でした。

 2か国には、すでに‘実績’があったのです。

 台湾側はこの2か国について「中国の圧力に負けない相手国」という確信があったとみられます。

◆なぜスロバキアとチェコなの?

 この2つの国は、「共産党政権と闘った歴史を持つ」という共通点があるからです。

 チェコの首都プラハにある「共産主義博物館」には、「人権とは普遍的なものである。われわれは暴力を前にして黙ることはできない」という言葉が掲げられています。旧チェコスロバキアで共産党政権を打倒した「ビロード革命」(1989年)を主導し、民主化を進めたのちに大統領となった、ハベル氏の言葉です。

 呉部長は10月26日、スロバキアで行った演説の中でこの「ビロード革命」に言及し「スロバキアやチェコの人たちは、革命を通じて、自由と民主主義を渇望していることを世界に示した」と述べ、民主主義を重んじてきた歴史をたたえました。

 共通の価値観としての民主主義を強調することで、中国との違いを際立たせ「台湾こそ連携を深めるべきパートナーだ」というメッセージを送ったのです。

◆中国はどう反応している?

 中国は強く反発しています。

 中国外務省の趙立堅報道官は記者会見で「訪問の真の目的は『台湾独立』の主張を広め、『1つの中国』と『1つの台湾』という幻想を作り出し、中国と国交のある国との関係を引き裂くことにある」と呉部長のヨーロッパ訪問を強く非難しました。

 また、「関係国が『台湾独立主義者』を容認することに断固として反対し、彼らに活動の場を提供しないよう求める」として、訪問の受け入れ国に対しても強く反発しました。

◆ヨーロッパの国が台湾を受け入れた背景には何が?

 中国への警戒感が高まっていることが挙げられます。

 新疆ウイグル自治区の人権状況や、香港の一国二制度の形骸化、中国軍の急速な軍備拡張、それに「戦狼外交」と呼ばれる強気な外交姿勢などが、ヨーロッパの国々の中国に対する認識を変えつつあります。

 もう1つの理由は中国に対する「不満」です。

 中国は2012年に中東欧などの国々と経済協力の枠組みを創設し関係強化を目指してきました。巨大経済圏構想「一帯一路」に対する期待も高まりましたが、投資やインフラ事業は期待したほど実現されていません。

 スロバキアなどに拠点を置く独立系のシンクタンク中欧・アジア研究所のマテイ・シマルチーク氏は「中東欧の多くの国々は投資などの約束が実現されず、中国に”幻滅”するようになってきた」と分析しています。

◆なぜ台湾との関係強化を進めようとするの?

 ヨーロッパでは、中国だけではなく、台湾への見方にも変化が出ているからです。

 台湾は、新型コロナウイルス対策として、徹底した情報公開を進め、成果をあげました。中国で、当局による初動対応の遅れや情報隠蔽のような動きが相次ぎ、国際社会から批判を浴びたのとは対照的です。

 また、台湾が半導体をはじめとするサプライチェーンの要として経済的に重要な立ち位置にあることも、台湾重視につながっています。

 スロバキア経済省のガレク次官は、記者会見で「われわれが今行っていることは台湾との経済関係を強化させるための協力だ。いかなる国であれ介入すべきものではない」と述べ、台湾訪問に反発する中国をけん制し、台湾との協力強化を進める考えを示しました。

 スロバキアは、自動車の生産が盛んで、半導体の世界的な生産拠点となっている台湾はコロナ禍でサプライチェーンの混乱が続く中、戦略的にもより重要なパートナーとして見られるようになってきています。

◆ヨーロッパのほかの動きは?

 ヨーロッパ議会はことし10月、台湾との政治的な関係を強化するようEUに勧告する文書を採択しました。

 台湾との関係が経済分野にとどまらない幅広い関係であることを示すため、台湾にあるEUの窓口機関の名称を変更し「台湾」という名称も盛り込むことや、中国との間で緊張が続く台湾海峡の平和と安定に向けて加盟国と積極的な役割を果たすことなどを勧告したのです。

 また、バルト3国の1つリトアニアは11月、「台湾」の名を冠した台湾の出先機関の開設を認めました。

 外交関係のない国としては極めて異例の措置です。

 中国はリトアニアとの外交関係を格下げするなど、猛反発しましたが、リトアニア外務省は「台湾との協力を拡大させる権利がある」とする声明を発表しました。

◆台湾とヨーロッパの接近、今後も続くの?

 ヨーロッパで台湾の存在感が増しているのは間違いありませんが、中国は世界2位の経済大国として存在感を示し続けています。ヨーロッパ議会の勧告では台湾との関係強化だけでなく、「1つの中国」政策についても言及し中国側に一定の配慮を示しているというのが実態です。

 リトアニアのある企業のトップは、台湾との関係強化を進めようとしているとしながらも、次のように打ち明けてくれました。

「中国大使館は報道に目を光らせている。台湾との関係で報道された企業にはかならず不都合が生じることになる。だから今回は他社と申し合わせて、取材には応じないようにしている」。

 中国に対する見方が変わってきているとは言え、中国のGDP=国内総生産は台湾の20倍以上です。その経済力はヨーロッパの各国に大きな影響を及ぼしているだけに、各国が中国との関係を悪化させてまで台湾との関係をさらに深めるかについては疑問が残ります。

 前出の専門家シマルチーク氏も「いずれの国にも『1つの中国』政策を見直す動きはみられない。各国は独自に台湾との経済的・政治的関係について判断していくだろう」と分析しています。

 台湾との距離を縮めつつも中国を過度に怒らせることは避けたい。

 各国とも中国と台湾、それぞれとのバランスをとりながらどうつきあっていくか模索していくとみられます。

(台北支局 逵健雄支局長 国際部 建畠一勇記者 ブリュッセル支局 竹田恭子支局長 ベルリン支局 山口芳支局長 テヘラン支局 戸川武支局長)

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