情熱が生んだ「サクソフォンの里」 盧 千恵

世界最多合奏者、ギネス記録更新

【盧千恵のフォルモサ便り:2011年8月19日「SANKEI EXPRESS」】
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110819/chn11081910360001-n1.htm
*写真:台北ジャズフェスティバルの会場に集まったサクソフォン愛好者たち=8月7日、
     台湾・台中市(台中市政府文化局提供)

 今月(8月)7日、台湾中部で「台中ジャズフェスティバル−1000人のサクソフォン演奏」
が行われました。

 2008年、カナダのトロントを破って台中はサクソフォン世界最多合奏者、918人の記録を
ずーっと保持していましたが、今年の5月、オーストラリアで940人、7月に韓国で1200人の
大演奏会が行われ、記録が更新されました。台中市の文化局はギネスブックに台中の名前
を登場させようと、市民に呼びかけました。ネットに、台湾民謡「四季紅」と「ホワット
 ア ワンダフル ワールド」の楽譜が載せられ、各自家で練習し、当日は演奏の2時間前
に楽器を持ってサクソフォンの里、后里(アウリー)の公園に集まるようにとの広告が出
ました。

■大戦直後にジャズの灯

 台中市医師会音楽協会のメンバーは、この呼びかけに応え、サクソフォンの練習時間を
増やしました。メンバーの一人、陳万徳医師は「小さいときから勉強に追いたてられ、五
線譜も読めなかった僕が、誘われてサクソフォンを吹き出して以来、熱恋症候群にかかっ
てしまって」とうれしそうに、診療所で有名な、しかし白色テロの時代、禁止されていた
「四季紅」を聞かせてくれました。

 そして、(8月)7日、受け付け締め切りの4時、公園には、医師会を含めた57の団体がリ
ハーサルに集まりました。愛らしい小学生の楽隊もあれば、弁護士協会、ロータリークラ
ブ、建築協会のサクソフォン奏者1432人が公園を埋め尽くしました。「ホワット ア ワ
ンダフル ワールド」が真夏の夕暮れ空に美しく鳴り響きました。「緑の木々 赤いバラ」
から始まる歌が、集まった人たちの願いをこめて、唇からこぼれ出ました。

 なぜ、ギネスブックに載るほど台中にサクソフォン愛好者がいるのでしょうか。160年前、
ベルギー人のサックスさんが初めて作ったと言われる西洋楽器サクソフォンが、林や畑の
里に、忽然(こつぜん)と生まれてきたのか不思議に思いませんか。

 両親がお百姓をしていた張連昌さんは、日本で作曲を勉強した隣の張基盤さんが吹くサ
クソフォンの音色に魅せられ、いつも聞きほれていました。キラキラ輝く金属の管楽器は
1000坪の畑ほどの値打ちがあると聴かされていたのでなおさらです。張連昌さんは、近所
の青年たちを誘って楽団を作り、第二次世界大戦直後のさびしい田舎町に明るいジャズ音
楽の灯をともしました。ところが、ある日、張基盤さんの家で火事が起こり、たった一本
のサクソフォンが焼け焦げで見つかりました。精密画を描くのにたけていた張連昌さんは、
そのサクソフォンを分解し、400の部品を一つ一つ精密に写し取りました。そして、3年の
時間をかけて器用にも台湾最初の手作りのサクソフォンを組み立てたのです。それに息を
吹き込み、音が出たとき、「物」に「いのち」が宿ったように感じたと、張さんの孫が話
していました。

■世界最高峰から注文

 張さんの作ったサクソフォンを、米進駐軍所属のフィリピン人奏者が大金を持って、買
いに来ました。それからです、経済的にも不況にあった后里が、サクソフォンの里になっ
たのは。連昌楽器工場が1948年に建てられ、サックス最高峰のフランスのセルマー社など
から下請け注文が入るようになり、后里はサックスの生産・輸出で豊かになりました。良
いお酒は良い水の里から生まれ、良い陶磁器は良い土が取れる所で作られますが、后里が
サクソフォンの里になったのは、張連昌さんのサクソフォンに対する情熱が結晶したのだ
としか言いようがありません。

 台中北端にある后里は、世界のサクソフォンの3分の1を生産している5万人の町です。農
村の后里が、サクソフォンという西洋楽器の最大生産地だと聞くと、台湾人でさえびっく
りします。年間多いときで6万本を製造していた時期もありましたが、中国の低賃金の量産
に押され、生産量が半分以下に減りました。

 現在は下請けから抜け出しLC(張連昌のイニシャル)という独自のブランドネームを
持つ、芸術性の高い品を生産するのに方針転換。后里に『張連昌サクソフォン記念館』が
建てられ、人々は「おいらが張連昌」と、感謝をこめてサクソフォンのさわやかな晴朗さ
を鳴り響かせています。

                    ◇

■盧千恵 許世楷(コー・セーカイ)・元台北駐日経済文化代表処代表の令夫人。1936年、
  台中生まれ。60年、国際基督教大学人文科学科卒業後、国際基督教大助手。61年、許
  世楷氏と結婚。夫とともに台湾の独立・民主化運動にかかわったことからブラックリ
  ストに載り帰国できなかった。台湾の民主化が進んだ92年に帰国し、2004年〜08年、
  夫の駐日代表就任に伴って再び日本に滞在。夫との共著に『台湾という新しい国

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