尖閣発言の衝撃  柚原 正敬(日本李登輝友の会常務理事)

尖閣発言の衝撃  柚原 正敬(日本李登輝友の会常務理事)
【『誇りあれ、日本よ─李登輝・沖縄訪問全記録』(まどか出版、2009年4月)】

◆尖閣列島はまちがいなく日本の領土

 2008年9月24日、李登輝元総統は初訪問の沖縄における講演会も盛会裡に終え、この日、
東南植物楽園を訪問された。ここは李氏と昵懇で、台湾出身の大林正宗氏の令嬢である大
林千乃(おおばやし・ちの)さんが経営している。

 いささか暑すぎる沖縄の初秋の陽を浴びつつ、大林園長の案内で園内をゆったりと散策
した後、歓迎昼食会に臨まれた。昼食会には仲井眞弘多(なかいま・ひろかず)沖縄県知
事をはじめ、稲嶺惠一・前知事、高嶺善伸(たかみね・ぜんしん)沖縄県議会議長、羅坤
燦・台北駐日経済文化代表処代表代行、李明宗・台北駐日経済文化代表処那覇分処処長、
亀井啓次(かめい・けいじ)交流協会総務部長など錚々たる方々が出席していた。

 この席で挨拶に立った李元総統は、はじめは植物園のことやご家族のことなどについて
話されていたが、台湾と沖縄が近いという話から尖閣諸島の話に転じ、「尖閣諸島はまち
がいなく日本の領土」と明言したのだった。

「台湾と沖縄は地域的にも非常に近い。戦前の日本統治時代には、琉球の漁民は尖閣諸島
近辺で漁業をして生計を立てていた。獲った魚は本土に持っていくよりも、基隆のほうが
近いので、そこで水揚げして消費していた。戦後、台湾と日本は別の国になり、尖閣諸島
の近海は日本の海となった。

 台湾も沖縄の人も心配しているが、尖閣列島はまちがいなく日本の領土。問題は漁業権
だけ。昔どおり、そこで漁業をさせて欲しいというだけの話だ。私が総統の時代、漁業権
の解決のため、日本の農林水産省と交渉を始めた。現在の馬英九政権が主張している『尖
閣諸島は中華民国の領土』という主張とは全く違う。あれは漁場問題と関係なく政治的に
やっているだけ。あまり神経質にならない方がいい」

 昼食会の席に衝撃が走った。取材していた日台の報道陣がざわめき出し、出席していた
人々の表情にも緊張が走る。

 翌朝の各紙は、「『尖閣は日本領』李登輝元総統」(産経新聞)、尖閣諸島は「日本の
領土」 李登輝氏、中台の反発も(中日新聞)、「尖閣『日本の領土』来沖中の李元総
統」(琉球新報)などと見出しを掲げ、この発言を大きく取り上げた。

 台北駐日経済文化代表処(大使館に相当)はその日のうちに「本代表処は李元総統の個
人的見解の範疇であると認識しており、わが国政府の釣魚台列嶼(日本名・尖閣諸島)が
中華民国の領土であるとの一貫した立場に変化はない」(9月24日付「台湾週報」)と表
明、打ち消しに躍起となった。翌日、今度は台湾の外交部(外務省に相当)が「釣魚台列
嶼は、歴史的経緯、地質構造、法的根拠あるいは台湾漁民の伝統的漁場地区である等の観
点から見ても、わが国の固有の領土であることを疑う余地はない」と改めて表明し、李元
総統の発言については、「個人的意見に過ぎず、しかもわが歴代政府が一貫して堅持して
きた主権を保持する立場と反するものである」とした(9月25日付「台湾週報」)。

 報道でも触れていたように、李元総統は総統を退任してから何度も「尖閣諸島は日本の
領土」と発言しており、平成14年(2002年)には「沖縄タイムス」の単独インタビューで
も同様の認識を明示している。

 しかし日本国内で、しかも尖閣諸島が所属する沖縄の地で明言した衝撃は小さくなかっ
た。この衝撃は、2007年(平成19年)6月7日、『奥の細道』探訪の旅の折、実兄(日本
名・岩里武則、台湾名・李登欽)を祀る靖国神社を参拝した衝撃に通ずる。

 これは、情勢をよくよく見抜いて発言する李氏ならではの独特のショック療法だったよ
うで、尖閣問題を政治問題化しようとする台湾の馬英九政権や中国政府への強烈な牽制と
なった。

 報道の中には「李氏の発言は台湾で議論を呼びそうだ。中国が反発する可能性もある」
とする観測記事というか、議論や反発を呼び寄せようとする記事もあった。だが、台湾側
も打ち消しに躍起となったものの、元首経験者としての発言の重さ故に、個人的見解とし
て容認する表明となり、台湾内に尖閣諸島を日本領とする見解が存在することを認めざる
を得ない立場に追い込まれる形となった。

 また靖国参拝と同様、李氏の思惑どおり中国からは表立った反発は一切なかった。タイ
ミングと影響力を考え抜かれた上での発言だったことがよく分かる。

*沖縄タイムスの単独インタビューと「平成八年の尖閣論争」は割愛。

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