台湾、コロナ封じ再び優等生に  矢板 明夫(産経新聞台北支局長)

台湾、コロナ封じ再び優等生に  矢板 明夫(産経新聞台北支局長)

 台湾のコロナ感染者数がみるみる減っている。8月10日の感染者は8人だったが、台湾内部での域内感染者はたった3人だった。死亡者もたった1人だ。中央感染症指揮センターによれば、8月10日現在のこれまでの感染者数は1万5,798人。

 死亡者数も、7月25日に0人となってからは26日、28日、29日、30日、31日と0人が続いた。8月に入ってからも2日、4日、5日と続き、8月10日現在で814人に抑えられている。

 台湾が5月11日に感染者が2ケタに増えてからはまたたく間に3ケタとなり、500人を超える日もあったものの、6月13日に200人を割って100人台に下がると、その後は一度も200人台に上ることはなかった。逆に、6月25日に前日の129人から76人に下がると3ケタ戻ることなく下がり続けた。8月5日には5月10日以来の1ケタとなる6人(域内)となった。6日は10人だったものの、7日以降10日まで1ケタを維持している。

 警戒レベルは5月半ばから7月26日まで台湾全域に「第3級」を布いてきたが、7月27日から8月9日までレベル2に落とした。しかし、まだ8月23日まで延長措置を取っている。

 中央感染症指揮センターの陳時中・指揮官は「落ち着いてきている」と表明しているものの、慎重な姿勢は崩していない。

 東京都が1日で5,000人を超える感染者を出しているにもかかわらず、台湾が約2ヵ月半で1日数人まで抑え込んだ手腕は高く評価されてしかるべきだろう。

 産経新聞の矢板明夫・台北支局長は感慨深く「連日のように500人超を記録した時期と比べて隔世の感がある」と記し、台湾がコロナ蔓延を押さえ込めた要因を分析している。下記にご紹介したい。

 この記事の中で矢板支局長は、違反者が厳しく処罰されるケースを紹介しつつ「台湾の世論はこうした厳罰を支持する声がほとんどだ」と紹介している。それがどうやら防疫の要諦だったようで、それによって台湾は「危機管理能力の高さを再び証明した」とつづる。

 後藤新平を輩出したわが日本はどうかと振り返りながら、後藤新平の教えを忠実に守る台湾に学ぶべきは多いと改めて思う。

—————————————————————————————–台湾、コロナ封じ再び優等生に矢板 明夫(台北支局長)【産経新聞「中国点描」:2021年8月10日】https://www.sankei.com/article/20210810-UFLNOFW3Y5LNLBYACBZCPXTUXY/?564276

 8月5日夜、台北市中心部にある老舗の広東料理店が約80日ぶりに営業を再開した。しかし、当局による新型コロナウイルス対策の規定により、いろいろと制限があった。普段は10人が囲んで座るテーブルは、座席の間隔をあけるため5人しか座れない。テーブルの上には各人のスペースを区切る透明の仕切り板があり、料理も大皿を皆でシェアする形でなく、自分の分を食べる「定食スタイル」だ。

 店の8つの個室はすべて埋まった。乾杯もできない寂しい会食だが、それでも客らは喜んでいた。久しぶりに同僚と食事したという貿易会社経営の男性は「首を長くしてこの日を待っていた。外食できるのはコロナにわれわれが打ち勝った証しだ。台湾万歳!」と言ってビールをあおった。

 台湾のコロナ対策本部は10日の定例会見で、この日の域内の新規感染者数を3人と発表した。7日以降、4日連続で新規感染者数が一桁に抑えられた。5月中旬に感染が急拡大し、連日のように500人超を記録した時期と比べて隔世の感がある。台北の街には今、にぎわいが戻りつつある。

 台湾がコロナ蔓延(まんえん)を押さえ込めた要因は複数ある。まず人同士の接触を徹底的に抑制した。当局の指示により、5月中旬以降、屋台を含む店での飲食は全土で禁じられ、映画館や理髪店なども休業となった。小中高大など全ての学校は登校停止となった。2週間とされた措置は4度も延長され、8月初めまで続いた。

 スマートフォンの位置情報を使った「追跡システム」も大きな役割を果たした。交通機関や商業施設を利用する人に追跡アプリのQRコードを読み取ってもらい、普及させた。6月には、南部の?東(へいとう)県で感染力の強いインド由来の変異株(デルタ株)の流行が確認されたが、感染した人の接触者をこの追跡システムで素早く確認し、隔離したことで感染拡大を防いだ。

 不要不急の集まりは禁止され、違反者は厳しく処罰された。地元メディアによると、高雄市でゲームセンターに勤務する男性が6月中旬、6人の友人を自宅に招き、ささやかなパーティーを開いた。居間で談笑していたところ、隣人の通報を受けた警察官に踏み込まれた。全員がマスクをしていなかったこともあり、この場の7人はそれぞれ6万台湾元(約24万円)の罰金を科された。これはゲームセンター勤務の若者の約2カ月分の収入にあたる。台湾の世論はこうした厳罰を支持する声がほとんどだ。

 厳しいコロナ対策で生活の影響を受けた人は多かった。台湾の立法院(国会に相当)は5月末、新型コロナ対策特別予算の上限を8400億台湾元(約3兆3300億円)に引き上げることを可決。低所得世帯への生活補助金を追加したほか、自営業者、日雇い労働者、タクシー運転手などに1万〜3万台湾元(約4万〜12万円)の手当を交付し、市民の不満を和らげた。

 台湾は4月まで、厳しい水際対策で感染者を少なく抑え、「防疫の優等生」と国際社会から高く評価されていた。5月に一時、感染が拡大したが、約2カ月間の効果的な対策でそれを封じ、危機管理能力の高さを再び証明した。与党・民進党の幹部は「今、唯一の心配はワクチンの接種率がまだ4割未満ということだ。これからはワクチンの確保に全力を挙げたい」と話している。(台北支局長)

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