台南市内の道路に日本の自治体名を命名 日台交流のシンボル

本誌では日本と台湾の交流の深化を示すバロメーターのひとつとして、自治体による姉妹都市や友好交流都市などの協定や覚書の締結(都市間提携)を紹介しています。

日台間の都市間提携は、1979年10月10日の青森県大間町と雲林県虎尾鎮の「姉妹町」締結が最初です。

それから46年。

最新は、ことし3月13日に結ばれた熊本県の宇土(うと)市、宇城(うき)市、美里町(みさとまち)の2市1町と台南市による「友好交流協定」です。

この協定は、1947年の「2・28事件」で身を挺して台南市民の命を救った弁護士、湯徳章(日本名:坂井徳章)の父の出身地の宇土市などが、湯徳章没後78年を迎えた命日である3月13日の「正義と勇気の記念日」に結ばれました。

これで、日台の都市間提携は166件(本会調査)となっています。

ところで、このところ結ばれる提携では、台湾側が提携先の自治体名を道路名とすることが多くなっています。

命名の最初は、昨年(2024年)11月22日に台南市と「友好都市協定」を結んだ茨城県水戸市でした。

台南市の黄偉哲市長は、この締結を記念し、11月21日付けで「飛虎将軍」こと水戸出身の故杉浦茂峯・海軍少尉を祀る飛虎将軍廟がある安南区に新設する道路に「水戸街(みとかい)」と命名したことをサプライズで発表し、水戸市から赴いた高橋靖(たかはし・やすし)市長をはじめとする70名の使節団をおおいに感激させたそうです。

次は、本年2月13日に台南市と「友好交流協定」結んだ埼玉県本庄(ほんじょう)市でした。

黄市長は協定の締結を記念し、市内のアジア太平洋国際野球訓練センター近くの新設道路の名称を「本庄街」にすると明らかにしました。

三番目は、青森県弘前市です。

弘前市は青森県とともに2017年12月4日に台南市と「友好交流覚書」を結んでいます。

本年4月17日に桜田宏市長の招きで黄偉哲・台南市長が弘前市りんご公園を訪問。

2012年に台南市長だった頼清徳・総統が植えたリンゴの木の隣に両市の友好関係の象徴としてリンゴの木を植え、20日に台南市内に新たに建設予定の道路を「弘前路」と命名すると公表しました。

四番目は、茨城県那珂(なか)市です。

那珂市は昨年5月6日に台南市と「友好交流協定」を結んでいます。

飛虎将軍廟に祀られる杉浦茂峯・海軍少尉の母の出身地を機縁に結ばれています。

締結1年を機に那珂市の先崎光(まっさき・ひかる)市長が台南市を訪れて黄偉哲市長と面会した際、黄市長が双方の友情を記念して市内に新設する道路を「那珂街」に命名すると発表しています。

以上のように、いずれも台南市ですが道路名に日本の自治体名を命名しています。

台湾の道路名に日本の自治体名を名づけるのはいまのところ台南市だけのようですが、今後、他の台湾自治体にも広がるかもしれません。

そう言えば、台南市では頼清徳総統が市長時代の2014年4月3日、戒厳令下の台湾において台湾の独立や2・28事件の真相究明、完全な言論の自由を求めて抗議し続け、遂には一死をもって台湾に民主・自由の道を拓いた鄭南榕を記念し、台南市庁舎の前の東哲街と西科街を「南榕大道」と改名したことを思い出します。

2016年2月6日、高雄市美濃区を震源としたマグニチュード6.4の地震が発生しました。

117人もの方が亡くなられた台湾南部地震です。

台南市では特に被害が大きく、建物が倒壊するなどして多くの犠牲者を出しました。

日本李登輝友の会では翌日から義援金を募集し、後日、頼清徳市長に義援金534万4,200円をお届けしました。

義捐金を頼市長に渡し終え、台南庁舎前の交差点を渡ろうと信号機を見上げると、そこに「南榕大道」と記された道路標示があることに気がつきました。

なんと、迂闊なことにそれまで思い出せなかったのですが、その日は4月7日、鄭南榕のご命日だったのです。

奇しきご縁に驚きました。

鄭南榕に縁した名前は台北市内の路地にもつけられています。

ここは、鄭南榕が焼身自決した「自由時代」を編集していた雑誌社が入っていたビルの前を通る小径で、台北市民権東路3段106巷3弄にあります。

2012年6月19日、台北市政府市政会議で「自由巷」と命名することが可決され、2012年8月21日に「自由巷」の看板が掲げられました。

李登輝元総統を記念した「登輝大道」という名の道路も花蓮市内にあります。

これは、李元総統が西洋種の影響を受けていない日本在来の見島牛(みしまうし)の血を引く源興牛を花蓮の新光兆豊農場で育てていたことから、李元総統が亡くなられた2020年7月30日、その日のうちに農場内を通る約2キロの並木道を「登輝大道」に改名したそうです。

台南市には、湯徳章を記念した公園名として「湯徳章記念公園」もあります。

戦後、民生緑園と命名されていた公園名を、当時の台南市長だった民進党所属の張燦●氏が、1998年2月27日に「湯徳章記念公園」と改名したことによります。

(●=洪の下に金)

台南市の黄偉哲市長は、このようなことにあやかって台南市内の道路に日本の自治体名をつけたのかどうかは定かではありませんが、提携先の自治体はいずれも喜んでいるそうで、日台の自治体交流のシンボルとなりそうです。

今後、日本の道路にも提携先の台湾の自治体名を名付ける自治体も出て来るかもしれません。


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