再起間近の日本  黄 天麟(台日文化経済協会会長)

再起間近の日本  黄 天麟(台日文化経済協会会長)
第一商業銀行の総経理・董事長や総統府国策顧問などをつとめた台湾経済界の重鎮、黄天麟先生
には、日本李登輝学校台湾研修団(略称:李登輝学校研修団)で講師として何度もお世話になって
いる。毎回、参加者から「難しい経済の話をわかりやすく説明してくれる」と好評だ。

 黄天麟先生の持論の一つが日本の円高是正論。10年以上前から「円高は必ず日本経済を殺す」と
唱え続け、円安への具体策として「日本銀行がドルを買えばよい。買い続けることだ。中途半端で
はむしろ逆効果。いま中国はまさにドル買いをしている。どうして日本銀行はそれをしないのか」
と提案されてきた。

 安倍晋三氏が「アベノミクス」を提唱して2度目の政権を担うようになって円安が進んだこと
で、黄先生もようやく安心されたようだ。会長をつとめる台日文化経済協会が発行する「台日文化
経済協会通信」の最新号で「再起間近の日本」と題して寄稿している。下記にその全文をご紹介し
たい。

 ちなみに、本会は台日文化経済協会へ河津桜の苗木を寄贈している。そのきっかけは、2年前の
2013年4月2日、黄天麟先生ご夫妻が本会事務所を訪問されたことだった。桜を観に来たと言われ、
ふらりと立ち寄っていただいた。このとき、黄先生から桜寄贈のご相談を受けたのが始まりだ。

 この年の12月に「役員・支部長訪台団」で台湾に行ったときも、黄先生をはじめとする台日文化
経済協会の役員の方々と意見交換し、昨年12月もまた「役員・支部長訪台団」で訪問し、実り豊か
な交流を続けている。今年12月にはまた桜の苗木を寄贈の予定だ。

◆台日文化経済協会
 http://www.tjcea.org.tw/jp/about.php?articleid=15


再起間近の日本  黄 天麟(台日文化経済協会会長)
【台日文化経済協会通信:2015年3月春季号】

 昨年12月14日に投票が実施された衆議院選挙で、安倍晋三が率いる自民党は圧倒的な勢いで勝利
を収めた。衆議院の総議席数は475議席で、過半数となるのは238議席。参議院で否決された法案を
再可決できる衆議院の優勢に必要な3分の2議席は317議席だが、選挙の結果、自・公は3分の2を超
える合計325議席を獲得し、政界で極めて安定した勢力となった。

 日本にとって今回の安倍政権の勝利は、2つの重要な意義がある。

 1つは、有権者が「アベノミクス」に対する信任と支持を示した点で、経済回復を望む国民の期
待が示されたことにある。一般的に、個々の日本国民からすると、円安は懲罰であるともいえる。
海外旅行費は嵩み、牛肉等の輸入品の価格も高騰するため歓迎されず、選挙戦でも野党の攻撃対象
になったが、それでも有権者は安倍を選択した。

 アベノミクスが試練を迎えるのは、おそらく2年目から3年目にかけてであろう。1年目の蜜月期
においては上場企業が円安によって利益を上げるが、2年目になると国民が輸入品の値上がりを感
じて消費は抑えられ、米ドルではじき出される輸出は増加ではなく減少する。また輸入額が上昇
し、貿易赤字も減少するどころか増加するという円安の後遺症が生じるはずだ。こうした問題は3
年目まで続くが、3年目の後半に新たな生産ラインが稼働し始めるため、国民は4年目になってよう
やく円安による経済再生を感じることができるだろう。

 アベノミクスが長い時間を要するのは、日本の「失われた」時間が1年や2年ではなく、23年
(1990年〜2013年)にも及んでいるからであり、これを挽回するのは容易ではない。安倍に6年前
後もの時間を与えたのは、国民の英知であるといえる。日本はまもなく再起するだろう。

 第2に、安倍の勝利が日本に与えたもう1つの重要な意義は、日本人が周辺の国際情勢の現実に目
覚め、日本を普通の国とする集団的自衛権にお墨付きを与えた点である。

 日本人は日増しに脅威を増す隣国に直面し、過去の他人任せの平和主義では自国を防衛できず、
自分の国は自分の手で守るべきであり、とりわけ、いずれかの国の主要な敵対国になった場合には
尚更であることを理解したようである。

 ここで、台湾は日本政府に対し、臆すことなく速やかに台湾と自由貿易協定(FTA)を締結
し、フィリピンやインドネシアとの関係を強化し、これらをリンクして「極東環太平洋の経済的
チェーン」を形成しようと呼びかけたいと思う。

 日・台・比・インドネシアの人口の合計は約5億人弱で、13億人の人口を有する中国と対抗で
き、これにベトナム・タイ・マレーシア・ミャンマーが加われば、東南アジアは中国の一極覇権を
免れ、自由と平和を保障することができるだろう。

 このことからも、今回の安倍政権の圧倒的な勝利は、東アジアの新たな歴史の1ページを開いた
と言える。アベノミクスの成功と日本の盛栄を心より祈念している。

                 ◇   ◇   ◇

黄天麟 1929年(昭和4年)、台湾・澎湖県馬公市生まれ。台南第一中学校、台南第二高校を経て
台湾大学経済学部卒業。米国コロンビア大学に留学後、輔仁大学や東呉大学で教鞭を執り、財政金
融界に長らく従事。合作金庫の総経理、第一商業銀行の総経理・董事長(頭取)、国家安全会議諮
問委員、総統府国策顧問をなど経て台日文化経済協会会長に就任。

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