公投護台湾聯盟が2・28事件犠牲者を悼む公園内の孫文銅像を引き倒す!

2月22日、公投護台湾聯盟(公民投票で台湾を守る連盟:Alliance for a Referendum to
Safeguard Taiwan)が台湾では「国父」と呼ばれる孫文の銅像を引き倒した。

 台湾紙の報道によれば、公投護台湾聯盟の李述儒・総執行長は「この銅像は台座がすでに壊れて
いたので、市が撤去しようとしたが国民党から反発された」、「人びとの安全のために測定をした
ところ、たった2本のロープで1分足らずのうちに倒れた」と事情を説明しているという。

 孫文は中華人民共和国でも中華民国でも「国父」と称され、台湾には「国父記念館」があり、孫
文の銅像も建っている。しかし、2・28事件の犠牲者を悼んで命名された公園に、台湾と縁のない
孫文の銅像が建っていることに違和感を覚えるのは、普通の感覚だ。

 孫文は台湾を2回訪れている。1900(明治33)年と1913(大正2)年のことだが、それとて短い逗
留だった。戦後、毛沢東に敗れた中華民国の蒋介石が台湾に逃げてきたことで、蒋介石政権が孫文
を「国父」と称しただけで、台湾に住む人々には「押しつけられた国父」であり、はた迷惑な話だ。

 「サーチナ・ニュース」が事件の経過や、湯徳章という日本で弁護士資格を取った2・28事件の
犠牲者についても詳しく解説しているので下記に紹介したい。また、AFPが引き倒された孫文銅
像の写真を掲載している。

◆台湾独立派、孫文像を引き倒す[AFP:2014年2月24日]  http://www.afpbb.com/articles/-/3009251


独立派が引き倒した孫文像、市が「古跡の上に作った。破損し危険」と移転を計画、国民党が「現
場で35日間阻止」の経緯
【サーチナ:2014年2月24日】

 「台湾と中国は別の国」を主張する政治団体、公投護台湾聯盟のメンバー十数人が22日午後、台
南市内の湯徳章紀念公園内に設置された孫文(孫中山)の像を引き倒した。同件には、台南市当局
が2013年にいったん孫文像の移転を決めたにもかかわらず、国民党員らが35日にわたり現場に立て
こもり、阻止していた背景のあることが分かった。

 現場は国民党に虐殺された湯徳章を記念する公園で、市の史跡に指定されている。湯氏は1907年
に台南で生まれた。父親は日本人で、日本本土で現在の司法試験の機能も兼ねる高等文官試験に合
格し、弁護士の資格を取得。その後、台湾に戻った。

 戦後になり国民党政権が台湾人を大弾圧した1947年の二二八事件が発生すると、湯氏は台南市の
治安組長に選出された。同年7月には、台南過渡時期市長に選ばれたが、国民軍にとらえられ、公
開銃殺された。その後、裁判所は湯徳章氏の無実を認定した。

 台南市政府は1998年、湯氏が公開処刑された緑地を湯徳章氏記念公園と改名し、その後史跡に指
定した。

 2013年2月28日、台南市の各界有志が湯徳章記念公園内の孫文像を撤去するように市長に請願し
た。孫文像は設置されてから50年ほどになっていたが、湯徳章氏を記念する公園にはふさわしくな
いなどの理由だった。

 市側は8月に、銅像の土台部分が損傷していたために、安全上の理由からも撤去せざるをえない
と決定。すると国民党員が35日にわたって現場に立てこもって阻止し、「国父(孫文を指す)を救
う1人10元(台湾ドル、約33.6円に相当)の募金運動」も展開した。

 国民党は9月26日、募金活動で集めた12万1200台湾ドル(約40万7000円)を市政府の口座に振り
込み、孫文像の修繕と現在の位置における保存を求めた。その後、市当局側に目立つ動きはなかった。

 中国国営の中国新聞社は、政府の決定に反して像の移転を実力阻止した国民党党員を「現場に設
営し35日間にわたって孫文像を守った」と紹介した。

◆解説◆

 湯徳章氏の父親の本来の姓は坂井だったが、新居家の養子になっていたので、湯徳章氏の本来の
姓も新居だった。

 湯徳章氏は小学校卒業後に台南師範学校に入学。卒業後は警察に就職した。警察就職時は年齢が
不足していたが、抜群の成績だったので異例の採用になった。その後、日本の中央大学に入学し、
卒業後は高等文官試験に合格して弁護士の資格を得た。

 湯徳章氏は中央大学卒業後に台湾に戻り「自分は台湾人だ」との意識にもとづき湯徳章と名乗る
ようになった。

 日本が第二次世界大戦に敗れて国民党政権が台湾を摂取すると、浙江省出身の陳儀台湾省行政長
官が、湯氏に省公務員訓練所の所長に就任するよう求めたが断り、台南市南区区長に就任。

 国民党政権が台湾人を大弾圧した1947年の2.28事件が発生すると、湯氏は台南市の治安組長に
選出された。同年7月には、台南過渡時期市長に選ばれた。

 国民党軍は台南に侵攻し、湯氏を逮捕・拷問した。湯氏は1晩の拷問で肋骨をすべて折られたと
いう。国民党側は湯氏に反乱罪を適用して、台南市内を引き回した上で、民生緑園、大正公園など
と呼ばれていた公園で公開銃殺に処した。湯氏は処刑場につめかけた市民に対して微笑んでから銃
殺されたという。

             * * * * * * * * * *

 台湾では1945年に日本の統治が終了する以前からの住民とその子孫を「本省人」と呼び、戦後に
国民党の台湾進出と中国大陸からの撤退にともない台湾に移り住んだ人やその子孫を「外省人」と
呼ぶ。

 「外省人」は台湾人口の10%あるいはそれ以下とされる。「外省人」は「台湾は中国の一部」と
の意識を持ち、孫文は「中華民国の国の父」とみなす場合が多い。

 「本省人」にとって孫文が成功させた辛亥革命が発生したのは日本統治時代の1911年であり、孫
文は仮に革命家として評価したとしても「別の国の人物」となる。

 台湾人としての強い自覚を持ち、故郷のために懸命に活動したにもかかわらず大陸からやって来
た国民党に無実の罪で殺害された湯徳章氏を記念する史跡に、「大陸の革命家」の像が設置されて
いることに反発を感じるであろうことは、容易に想像できる。

                                 (編集担当:如月隼人)

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