【書評】台湾人にとって独立が不可欠な理由・王育徳自伝

【書評】台湾人にとって独立が不可欠な理由・王育徳自伝
メールマガジン「台湾の声」(4月8日発行)より

 日本人は戦後の台湾をどれくらい知っているだろうか。本書には、1924年(大正13年)
生まれの台湾人知識人の眼に映った、伝統的な台湾人の大家族の葛藤、前近代と近代、日
本教育、友情、屈折、ハングリー精神、師弟関係、内地旅行、旧制高校の生活、戦時下の
台湾、終戦後の台湾、日本人の引き揚げ、中国(国民党)軍の進駐、治安・規律の悪化、
インフレ、228事件、無実の兄の処刑、筆者に届こうとする中国国民党の魔の手が描か
れている。

 自伝部分は、著者の台湾脱出までしか書かれていないが、巻末に32ページにわたる「そ
の後の足跡」という部分があり、王氏の日本人に台湾を考えさせることも含む台湾独立運
動への献身がまとめられている。

 読者は筆者の眼を通じて、台湾人の親が子に望むこと、大きくて複雑な家族内の軋轢、
兄弟姉妹の情、台湾の結婚にまつわる風習、女性へのときめき、台湾人の眼に映った日本
人、学問への思い、演劇指導と脚本執筆、中国人上司の言葉などを追体験し、時に筆者と
共に涙し、なぜ筆者が台湾独立に一生を捧げたのか理解できるに違いない。

 また、倉石武四郎博士の人柄、邱永漢氏との交流や李登輝氏との接点についても触れら
れている。

 「植民地」に対して、「謝罪」しか思いつかない日本人が多いが、まず本書を読んで、
台湾人がどう感じ・考えていたのか知ってほしい。そうすれば、どのようにすることが正
しいことなのか自ずと明らかになるであろう。

 また、台湾独立運動が「一部の日本時代の特権階級のもの」であるかのような宣伝があ
るが、本書を読めば、決してそのようなものではなく、民主的な法治社会を求めるすべて
の台湾人のための運動であることがよく分かる。

 筆者は台北高校弁論部在籍中に「人生は短く、芸術は長し……されど宗教はさらに長い」
と論じたという。筆者自身が、教師から学んで人格形成をしてきたが、戦後は台南一中の
教師として学生を感化し、そして、世界中に広がる台湾独立運動を指導した。自らの名声
ではなく、台湾のため、台湾人民の自決のために身を捧げて燃え尽きた王育徳先生の後姿
こそ、朽ちることなく永遠に続くのではないか。

 本書が出版されたことは、人類共通の価値観に訴えかけ、後に続く人々の心に種を撒き、
糧となるであろう。

■署  名:「昭和」を生きた台湾青年─日本に亡命した台湾独立運動者の回想1924-1949
■著  者:王育徳
■編集協力:近藤明理
■版  元:草思社
■体  裁:四六判、上製、328ページ
■定  価:2310円(税込み)
■発  売:2011年3月25日

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