「台湾地区」総統?―中国色に染まっていく…  迫田 勝敏(ジャーナリスト)

「台湾地区」総統?―中国色に染まっていく…  迫田 勝敏(ジャーナリスト)
【台湾ダイジェスト:2012年3月号】

 馬英九総統の再選は「一つの中国」を認めた九二コンセンサスが台湾人に受け入れられ
たからだとみる向きが多い。果たしてそうだろうか。馬総統のいう九二コンセンサスは
「一中各表」で「中国」とは中華民国と解釈しているはず。ところが現実はそうでもな
い。中国の主張する「中華人民共和国」を中国ではなく、台湾が台湾に少しずつ広げてい
る。台湾が徐々に中国色に染まってきているようにみえる…。

◆「台湾同胞に感謝」?

 「我々は勝った!」―総統選挙で勝利し、両手を挙げた馬英九総統の隣りでマイクを握
ったその人は言った。

「すべての台湾地区の同胞に感謝したい」

 一瞬、耳を疑った。早くも中国の代表が祝賀に駆けつけたのか…と。国民党の選挙本部
の前で勝利の集会を映すテレビの画面を見ると、なんと国民党の名誉主席、連戦氏だった。

 台湾には「台湾地区と大陸地区人民関係条例」などという法律もあるから、台湾地区、
大陸地区という言い方は時にはあってもいいのかもしれない。それに台湾人の多くは今で
も中国のことを「大陸」と呼んでいる。

 だが、選挙は「中華民国」の総統を選ぶものだ。香港の「特別行政区長官」のように
「台湾地区総統」を選ぶのではない。連戦氏はさらに馬総統を選出したこの選挙結果は
「台湾地区すべての同胞が決めたことだ」とも述べた。

 かつては「私は中国人だ」と公言していた連戦氏だけにこのときも自分は中国人だと思っ
て発言したのかもしれない。それにしても与党の名誉主席である。馬総統の再選で今後さ
らに「傾中」が進むとの観測もあった時だけに連戦発言は今後の4年間を暗示するものだな
と思ったが、台湾のメディアはあまり問題にしていなかった。

◆中国軍も台湾軍も「統一」?

 ところが、傾中どころかもっとはっきりと「統一」を言う軍人が出てきた。空軍の退役
大将、夏瀛洲氏がその人。中国の西安で開かれた学術討論会の場で「国軍(中華民国軍)
と中共(中華人民共和国軍)軍は、理念は異なるが、中華民族の統一のため目標は一致し
ている」と述べた。

 スピーチの映像をみると、夏氏の発言で会場は大きな拍手が沸いた。スピーチが終わっ
て席に戻った夏氏に司会者は握手を求め、臨席の中国人はグラスを挙げて乾杯をしてい
た。それはそうだ、中国が喜ぶのは当然だ。夏氏は昨年も北京で「これからは国軍だ、中
共軍だなんて分ける必要はない。われわれはみんな中国軍だ」と発言しているのだ。

 夏氏は、発言は抗日戦争時代の話で、中国側が蒋介石の批判をするので言ったまで、と
台湾紙に答えていた。しかし昨年は「歴史的な任務と使命の(中台)統一に向けてともに
頑張ろう」とまで発言しており、今年の発言を繋げれば、失言ではない。明らかな確信犯
である。

 対する国防部は、台湾は言論の自由があり、夏氏の発言は個人的なものだとして、とく
にお咎めはないよう。夏氏は一般市民ではない。元国防大学学長でもある。税金からたん
まりと退職金をもらっており、「退役大将」として今も活動をしているのである。中国側
が夏氏の発言を台湾政府内の意向と受け取っても不思議ではない。

◆校歌で「中国は祖国」?

 実際、中国をはっきり祖国だと歌っている学校があった。上海の台湾ビジネスマン(台
商)の子弟のための「上海台商子女学校」で、校歌には「…台湾に生まれ、父母に随って
祖国に来て上海に落ち着き…上海は第二の故郷…私は故郷を愛し、祖国を愛する」といっ
た言葉がちりばめられている。祖国は中国というのは蒋介石時代の教育。民主化し、台湾
意識が広がっている今、そう考える台湾人は多くはない。

 この学校は台湾の小学校の元校長が創立したもので、上海当局から副校長が派遣されて
いるが、歌詞を中国が作ったわけではない。校歌の作詞もその校長だった。もっとも校長
は若い時に中国がから台湾に渡り、2005年に上海に戻り、学校を建てた外省人。そう聞け
ば、上海を故郷というのも、むべなるかな、だ。

 問題はこの校歌は民進党政権時代に作られている。しかも中国に3校ある台商子女学校に
は台湾政府の補助金が生徒1人当たり年間3万元が支給されているのだ。現在は3900人近い
生徒に合計1億元である。台湾のカネで中国を祖国と考える若者を育てている。

 「傾中」を否定しようが、批判しようが、現実には台湾はあらゆる面が中国色に染まっ
てきている。野党側は早くも4年後の総統選を目指す動きも出ているが、4年後では遅すぎ
はしないだろうか。

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