――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習49)

――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習49)
【知道中国 2383回】                       二二・六・念三

――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習49)

そこで、「農業は国民経済の基礎である。党は我われに大いに農業に励み、力を農業の第一線に注ぐよう呼び掛けている。農業の持続的な躍進を望むだけではなく、工業を大いに振興させ国民経済全体の持続的躍進を果たし、我が国の社会主義をより速く建設し、より速く社会主義強国を完成させよう」(「内容説明」)と、彼女は「社会主義強国」を目指して獅子奮迅の働きをみせる。

舞台は河北省東部に位置する林家荘生産隊。林紅の大活躍は国を挙げて大躍進政策が展開された1959年秋の早朝から始まる。なお、林家荘とは林一族の集落を指す。祝一族の集落を祝家荘と呼ぶように往々にして同一姓で1つの集落を構成している。

厚い暗雲に覆われた空から、大粒の雨が稔りの大地に降り注ぐ。「解放後、人々は政府の指導の下で毎年、堤防の修理を進めてきた。だが、この雨で水かさが急激に増し、堤防決壊の危険性が高まった」。そこで生産隊の書記を先頭に村人が総出で護岸補強工事に向かう。もちろん林紅も友達に呼び掛けて現場へ急行する。毛沢東得意の人海作戦であった。

彼女は逆巻く怒濤に飛び込んで杭を打ち土嚢を積む。まさに男勝りで八面六臂の大活躍である。林紅の自己犠牲を厭わぬ行動は、毛沢東の説く「中国の女性は軍装が似合う」「天の半分は女性が支えている」を実践するものであった。

やがて雨も止み、穏やかな日差しに照り映える川面を2隻の大きな船が船着場に接岸した。積まれているのは政府から生産隊に送られる食糧や生活物資だ。村人の顔はほころび、誰もが川岸に飛んでゆく。

その中に1人、77歳の老人は政府から贈られた籾を手にして、「毛主席、あなたサマはワシのようなモノにまで心を砕いて下さる。あなたサマのご指導があればこそ、ワシらは最後の最後まで戦うことができますんじゃ」と呟き、「解放前のあの苦々しくも苦闘の日々を思い浮かべ、止め処なく感動の涙を流す」のであった。

傍らに控えるのは、もちろん林紅である。

林紅は「私は党の呼び掛けに応え、この村で皆さんと一緒に自然災害や食糧危機と戦い、ここに新しい農村を建設することを誓います」と、キッパリと言い切る。もちろん周囲の村人は誰もが感動の拍手であり、称賛の声だ。

この村は相当に貧しい。過酷な自然環境の改造は焦眉の急だ。消極的な友人を励まし、村人に呼びかけ、彼女は自然改造の戦いの先頭に立つ。

書記が「林紅よ、任務は極めて困難だが堅く覚悟を決めさえすれば、この荒野を聚宝盆(無限の稔りの里)に改造することができるのだ」と呼び掛けると、彼女は「そうです。大叔(おじさん)、党の指導があり、人民公社があれば、どんな困難があろうとも、我われは戦いに勝利する信念を持つことができるのです」と応える。何とも美しく健気な覚悟だ。

数多くの困難を克服し、「林紅と彼女の仲間たちは農業戦線において輝ける勝利を次々に勝ち取り」、「幾千万の林紅は祖国に降り注ぐ春の陽光を浴び、社会主義の新しい農村を建設するため勇猛邁進するのであった」と、林紅の物語は“毛沢東式大団円”で結ばれる。

64年出版で手許にある『草原児童団』と『林紅和?的?伴』の2冊だけでは、当然のことながらこの年の政治動向を炙り出すことはできそうにない。だが敢えて2冊に共通するテーマを見つけ出そうとするなら、やはり文革につながっている。

前者が描き出すのは大人と一緒になって抗日戦争に参戦する「小さな大人」である。後者の主人公はうら若き乙女だが、男女の違いを乗り越え村人を率い、「社会主義強国」の建設に邁進する。子どもであろうが女であろうが、共にイデオオロギーのために雄々しく戦う姿――文革の過程で次々に登場する“毛沢東式英雄像”の魁といったところ・・・か。《QED》

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