平成23年6月19日日本李登輝友の会第6回総会
記念講演会
東アジアにおける我が国家戦略
講師 西村眞悟 前衆議院議員
 日本国憲法が如何にわが国の存立の毒になっているか、前文第一、二、三文章だけで十分分かる。

【日本国憲法】第一文章
 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。
解釈:国民が主権者であるが、その主権者が作った政府が国民に戦争の惨禍を与える、と書いてある。
第二文章
 そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
解釈:わが国の伝統を断絶するもので、敗戦前の日本は、人類普遍の原理におぼつかないもので、昭和二十年八月十五日までの日本は否定する、と書いてある。法律条文は、抽象的に読むのではなく、それが与えている現実から読まなければならない。大日本帝国憲法、皇室典範、教育勅語、全てを否定された。

第三文章
 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。
解釈:第一文章を合わせて考えなければならない。
 マッカーサーは、国民に主権を与えてやったが、自分たちの作った政府は、戦争の惨禍を与えるので、信頼するな。平和を愛する諸国民の公正と信義を信頼しろ、と書いてある。
 この中で、一昨年の選挙で民主党に入れた奴、手を上げてください。現にそうなっているでしょう。この憲法を後生大事にしてきた結果がここにある。
【憲法第一条】
 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く

 この憲法第一条、これが一番の毒。この憲法を解釈して一昨年十二月、小沢一郎は、天皇陛下と習近平(しゅうきんぴら)と会わせた。反対する記者に「お前は、憲法を読んだことがあるのか?あ〜ん」と。
 この憲法を小沢一郎の解釈でいけば、習近平どころか、どこの馬の骨とも分からない者も会わせられる。天皇の地位は国民の総意に基づくものだから、国民の総意は、選挙の結果だと。選挙に勝った俺たちが天皇の地位を握っているのだと。だから俺たちは誰であろうと会わせることができる。

 これは、国体の破壊である。これは朝鮮民主主義共和国となんら変らない解釈。ずばり、選挙で勝てば、天皇の廃止もできると。完全な、反国家的第一条である。3月11日の国難で明らかになったのは、天皇は、最大の危機管理機構としての天皇の存在。わが国に降りかかる危機を乗り越えてきたのは天皇の存在があるから。最大の危機管理機構を否定している。3月16日の今上陛下のお言葉をじーっと聞いていると、昭和20年の憲法など、朝日の霧の如く消えていった。

 天皇陛下は、被災地での自衛隊へ感謝と労いのお言葉をかけられた。菅直人が、自衛隊は違憲だから被災地から撤収しなさいと言ったなら国民から殺されたであろう。したがってこの憲法はもう無い。今上陛下のお言葉で無くなったことが確認できた。

 では、天皇の立場は何か。最大の危機管理者である天皇の立場は、統治者の立場。象徴という曖昧なものではなく、具体的に力を持った統治者であり、菅直人が一万人いても適わない統治者である。九条については前文の解釈で申し上げたので、ここでは申し上げない。

第三章 国民の権利及び義務、
 これで我々は教育が不能になった。これが、原理だと思っているから教育が不能になっている。小学校一年の自動に思想信条の自由がありますか?ないでしょう。しかし、あるという前提で教育が行われている。子供たちに国旗に整体し君が代を歌えとはいえないでしょう。子供に思想の自由と権利があるから。こんな馬鹿な憲法がありますか?福澤諭吉は、ライトを権利と訳してはならないと言ったのは正しい。ライトを道理と訳しましょう。人間の道理を教えるのが教育だ。子供たちに日本人としての人間の道理とは何かを教える。日の丸を国家と思い大切にする。敬意を表すること。こう解釈すれば、やっと教育が可能になる。しかし、今それができない。わが国の崩壊に起因する教育の崩壊が、ここから始まっている。

 では、今、わが国を支配しているのは何か、GHQなきあとにGHQ日本統治基本法を我々の根本規範として運営してきたに過ぎない。現憲法は無効なのです。
 つい最近、安倍晋三君らが、憲法九十六条の改正規定を改正する会を結成したが、これは無効なもの。GHQの日本占領基本法を憲法として固めてしまうことになる。国家として最大の反逆になる。無効なものは無効であり、無効なものを改正するわけには行かぬ。
国家戦略を語るのにこの部分から語らなければならないというのが、この国の現状。アメリカであれ、イギリスであれ、中国であれこんな前提はない。国家の基本法をズバッと持っている。わが国は基本法が分からない。分からないどころかGHQの日本統治法を憲法だと思っているから、これを確認しなければ国家戦略など成り立たず、語れるものではない。
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