李登輝学校で学んだこと

李登輝学校で学んだこと 

【岐阜新聞:2015年9月5日「素描」欄】

阿部 伸一郎(セントラルグループ代表)

 現在、「日本李登輝友の会」岐阜県支部副会長及び東濃分会の会長職を拝命している。その縁が
もとで、これまでに3度訪台し、李登輝元総統をはじめ、元駐日大使や大学教授などが講師をつと
める李登輝学校で学んだ。

 台湾は先の震災の際にどの国よりも多くの義援金を寄せてくれた。前述の講師は、その理由を熱
弁した。「台湾は大の親日国である。それは、日本の大方のマスコミの論調とは違い、日本統治時
代に起因する。日本の統治手法は、統治国を自国と同様に扱う『内地延長型』であった。これは欧
米列強の『搾取型植民地支配』とは真逆で、日本のおかげで台湾は近代的国家となり得た」。

 1895年。台湾は清国から日本に割譲された。当時の台湾はマラリアなどの風土病や原住民の反乱
が多発しており、清国は文化や文明の及ばない「化外(けがい)の地」として放置していた。加え
てアヘン中毒者があふれ人身も土地も荒廃していた。

 そこにやって来た日本は、台湾中に学校を建て、優秀な教育者を派遣した。同様に各地に病院も
建設し、解決不能といわれた衛生状況を一変させ、アヘン吸引の根絶にも成功した。また、ダムや
灌漑用水路を建設し、全域に電気を供給。不毛の地をアジア有数の穀倉地帯に変えた。台北に水道
が完成したのは、東京よりも早かったという。

 日本の統治を全肯定する気は毛頭ない。しかし「日本が行ったことは全て間違っていた」とい
う、今日我が国に蔓延(まんえん)する価値観も、正しくないことを、かつて日本の統治下にあっ
た台湾で学んだ。

 学校教育しかり、マスコミ報道しかり、伝える側の省察が求められる。


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