【AC論説】台湾の長期建設計画

【AC論説】台湾の長期建設計画

            Andy Chang

今月5日、台湾の国会は年初以来の懸案だった「前瞻長期建設計画」
と呼ぶ建設計画を通した。前瞻とは前向きに見ると言う意味
で、台湾の将来に向けての発展計画という意味である。法案は以下のよう
に5項目に分かれている。

1.この建設計画は4年で4200億元の政府予算を持つが、4年経てば各
計画の発展状況を勘案して次期予算の4年計画を立てる。

2.長期建設は大別して八部門に分れている。軌道建設、水環境建設、
緑能(クリーンエネルギー)建設、数位(ディジタル)建設、城郷(都市と地
方)建設、少子化と育児対応、食物安全、人材促進計画である。

3.各計画における経費の来源は政府の特別予算のほかに公債を募集
する。しかし公債の発行は「公債法」の制限により15%に制限される。

4.中央政府が建設計画を立てたあと、これを地方政府に交付し、地方の
議会が検討し実施する。

5.責任の帰趨と追及を厳格にし、計画の進展度が80%に達しない場合、
公務員の失政を究明し、執行機関と責任者を監察院が調査し処罰する。

●八大建設と台湾の将来

メディアの報道は主に軌道建設を重視しているように見える。この計画の
主体は各都市に軽機鉄道を作ることで都会の交通渋滞を軽減し、交通
の効率を上げて観光鉄道を作るなどである。しかし都市内の鉄道建設に
要する国内の部品建造は40%で残りは外国企業の参入となるため、国内
の経済発展に有効とは思えない欠点がある。

このほか、都市計画で交通問題を鉄道に頼るのは都市の発展に寄与す
るかもしれないが、都市と地方の交通は道路に頼るようで、これでは都市
を優先して地方の発展は後回しかもしれない。発展の項目、公平な経費
の分配と金額の多寡など将来の検討に期待したい。

水環境建設とは気候の変遷に対応する為のと水資源の確保と永続、ダム
の建設、台風や豪雨など国土の安全に対応する建設である。台湾は雨
量が多いにも拘らず毎年のように水不足や洪水、集中豪雨で土砂崩れ
が発生していた。

緑能(クリーンエネルギー)建設については主に電力建設、太陽発電と風
力発電の発展計画である。核発電を減し核汚染や放射能災害の予防、
石炭発電の空気汚染解決など。

数位(ディジタル)建設計画はデータの安全とディジタルテロやハッキング
防止、電子事業の発展、次世代の電子科学研究やAI研究などである。

城郷建設とは都市と地方の総合建設計画で、交通渋滞、都市発展、地
方産業計画、文化生活環境、教育と社会改造、食品安全や人口少子化
問題、人材開発などである。

8大建設計画は蔡英文政権の台湾の未来についての綜合計画である。
本法案は建設を主体としているので経済、貿易、国防などは本計画に含
まれていない。

●国民党の反対

この法案は本来8年で8900億元の建設案だったが国民党の反対にあっ
て難航していた。最終的に4年4200億元となり国民党議員の同意を得て
法案が通ったのである。台湾の長期建設計画に國民黨が反対する理由
はいくつかあると思われる。

一つは蔡英文の総統任期は4年なのに8年計画を通せば4年後に国民
党が政権を取り戻しても法案変更が出来ない。従ってたとえ長期建設だ
けれど4年で区切りをつけて4年後に再検討することにしたのである。もう
一つの理由とは建設はつまり「ハコモノ」であるから中央と地方の政治家
の介入は避けられない。この法案を通せば国民党政治家は「うまみ」を民
進黨に取られてしまうから反対なのだ。

メディアの報道によると国民党内では国民党議員が法案に賛成したこと
に不満があったと言う。王金平議員は党内の不満について、「国会にお
ける國民黨議員の数は僅か3分の1を少し上回る34議席だけだから、
民進黨側が採決を強行すれば国民党が反対しても通る。むしろ國民黨
議員が8年8900億元の法案を4年42億元に直して双方が合意したこ
とに満足すべきだ」と述べた。

●責任と処罰

法案の第5項では公務員の責任問題と進展度の監視と取り締まりを規制
しているから、國民黨政権のような工程の遅延や度重なる費用倍増は軽
減できるかもしれない。大型の建設計画にとって官商癒着、不正入札に
よる予算の増加や工事の遅延は大きな問題である。

国民党政権は汚職が酷かった。国家の建設予算の半分以上は汚職で
消えたと言っても過言ではない。第4核発電所は4倍以上の予算追加
で今に至ってもまだ完成していない。

ラファイェット疑獄では最初の軍艦購買予算の二倍以上の金で購入した
が、軍艦の最新武器系統をソックリ中国に贈呈した。そして台湾、フランス
と中国の高官が汚職金を山分けした。そのあと台湾とフランスの事件の調
査では台湾とフランスで各々10人以上の証人が不可解な死を遂げた。し
かも長い交渉の後フランス法廷が二箱の証拠物件を台湾側に渡したら、
法廷が受け取るべき物件を海軍が横取りして「蒸発」させてしまった。この
事件は今でも証拠不十分で未解決である。

民進黨が汚職を一掃出来るかどうかは政権が透明な政治を実行できるか
に関わっている。政府だけでなく民間が今後の建設計画を厳しく監視し
なければならない。

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