【黄文雄の歴史から読み解く】いまだ日中記者交換協定に縛られるメディア

【黄文雄の歴史から読み解く】いまだ日中記者交換協定に縛られるメディア

【黄文雄の歴史から読み解くアジアの未来:2013年12月11日号(第3号)】

 臨時国会の閉幕を受け、安倍首相は12月9日夕方、記者会見を開きました。

 もちろん、この会見については、NHKをはじめ、民放も生中継で伝えていましたが、
同月6日に参院を通過し、成立した特定秘密保護法案について首相が説明を始めると、なぜ
か民放が一斉にCMに切り替えるということが起こったようで、憶測を読んでいます。

 特定保護法案について、マスコミはあれほど「説明が足りない」と批判していただけ
に、首相の説明が始まったところでCMへ切り替えるというのも、何か「国民に知らせた
くない」意図があるのかと勘ぐられています。

 この特定秘密保護法案については、中国も韓国も「軍国主義化だ」と警戒し、批判して
きました。しかし、中国の日本公使が、「これで日本が非難されるなら、中国はとっくに
軍国主義国家だ」と反論したことが報じられました。

 ようやく日本の対中外交も、正常になりつつようです。

 そもそも、この法律は国家機密の漏洩を防ぐためのものですが、なぜか「子供が情報に
アクセスするのができなくなる」とか、反対者が非常に大げさに拡大解釈していることが
問題です。

 2010年、民主党政権下で起きた、尖閣諸島での中国船衝突事件のビデオ流出では、朝日
新聞などは「政府や国に反する流出は許されない」と論じましたが、今回の安倍政権で
は、「日本の正当性を主張するうえで、国民に秘密にするべき映像ではない」として、政
府が秘密にする必要がない情報であったことを明言しています。

 そのことを産経新聞で皮肉られていますが、中国に都合がわるい映像は朝日新聞にとっ
て「特定秘密」なのかもしれません。

 そのことで思い出すのが、1964年と68年に結ばれた、日中記者交換協定です。これは、
日中双方が記者を駐在するにあたって、中国を敵視しない、二つの中国を認めない、日中
国交正常化を妨げないという、三つの項目を遵守することが決められた、要するに真実報
導の禁止です。

 これにより、日本では、中国共産党が行っている自国民虐殺や人権弾圧などを報じるメ
ディアはほとんどなくなってしまったわけです。

 「朝日新聞」などはこれに呼応して、社長の号令で中国に追放されるような記事を書か
ないことが不文律となり、その結果、文革を礼賛し、また林彪(りんぴょう)事件の否定
といった大誤報まで引き起こしたのです。

 そもそも日本がスパイ天国なのは常識です。北朝鮮の工作員が日本人拉致を繰り返しま
したし、在日中国人の大学教授や留学生の多くがスパイだという説もあります。

 台湾でも、2004年時点の話ですが、林中斌元国防次官によると、台湾に潜伏する中国工
作員は5000人以上で、台湾軍事拠点周辺の風俗店を足場に現役軍人から機密情報を引き出
す「ハニー・トラップ」などを仕掛けていると発言しています(米軍事専門紙『ディフェ
ンスニュース』2004年4月27日)。

 中国が東シナ海、南シナ海への野望を明確に表し始め、北朝鮮でも政治的な変化が起き
ていると報じられています。東アジア情勢が緊迫している現在、国家機密を守るのは当然
のことだといえますが、なぜか日本では「進歩的文化人」や一部のマスコミが、国家機密
の漏洩を阻止しようとしているように思えてなりません。これまで何度も繰り返されてき
た風景です。

 そして、そういう人たちは、「原発」「沖縄米軍基地」「憲法改正」にも反対している
人たちと重なるように見えるのは、気のせいでしょうか。

 日本国憲法の前文には、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」とあります
が、彼らは中国や北朝鮮、韓国については、公正さと正義を信じてきました。だから中国
の核実験にも反対せず、北朝鮮の拉致についても、「そんなことはありえない」と主張し
てきたのです。

 しかし、もうそういった欺瞞は通用しなくなっています。だから「報道の自由」「信条
の自由」などが犯されると拡大解釈をして、国民をミスリードすることに必死なのでしょ
う。


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