【論説】軍拡中国と東アジア情勢

6月23日(水)「時局プレス会議」に林建良氏(「台湾の声」編集長)が登場

詳細は本メール下部をご覧下さい
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【論説】軍拡中国と東アジア情勢

時局心話會 代表 山本 善心

 
 東アジア諸国は沖縄米軍基地や対中政策などわが国の動向に注目し、
気を揉んでいる。とくに、沖縄米軍の移転問題は最大の関心事だ。いまや
中国海軍が東シナ海の領土・領海をわが物顔で闊歩する中、わが国の出
方次第で周辺諸国に大きな影響を及ぼしかねないためである。

 わが国が中国の圧力に屈すれば、他国の動きにも大きく影響する。日本
政府が日中友好の海と呑気に構えているうちに中国海軍はどんどん東シナ
海に艦船や潜水艦を繰り出すようになった。わが国が弱みを見せれば、中
国はその弱みを突いて、東シナ海を友好の海どころか争いの海に変えよう
とするのはなぜか。中国は軍事力と経済力を振りかざしてわが国を脅し続
けよう。

 中国は東シナ海から西太平洋地域にも海洋覇権を求める動きが顕著で
ある。その抑止力となるのが沖縄の米軍基地であった。沖縄に米軍基地が
あれば台湾の現状維持とわが国の安全は確保されよう。それゆえ筆者は
最初から米軍基地は辺野古で妥協するしかないと言ってきた。

崩壊する米国の対中戦略

鳩山前首相の言う米軍の沖縄県外か国外移転が万が一実現すれば、東シ
ナ海は中国の領海となる。つまり、台湾は中国に呑みこまれ、遠からず「一
つの中国」となるであろう。県外・国外移転案は中国に媚びへつらう妥協案
にほかならない。米軍が沖縄基地でわが国を守り、台湾関係法で台湾を守
るのは、米国の覇権領域を手放したくないからだ。これまで中国の傲慢さと
覇権主義に同調する日本の一部勢力らは中国の軍拡を誇大宣伝し、やみ
くもに恐怖心をあおり、結果的に中国に有利な展開を誘導して来た。

 当初、鳩山前首相は去年の交渉で、日米合意がなされた辺野古移転案
を破棄しようとしたが、世論の反対と米国側の意向で覆されている。鳩山政
権がとろうとした安易な決断は、一歩間違えばわが国が進んで中国の属国
になりかねないものであった。4月には、中国海軍の艦船が日本近海で大
規模演習を行ったが、これは制海権と海域安全を担う米国海軍に対する明
らかな挑戦だ。日米台は中国の急速な台頭を牽制する戦略が問われてい
よう。

日台は運命共同体

 李登輝元総裁は大の親日家、知日家であり、その人格や卓越した見識
の深さに加えて、総統時代の実績に対して、多くの日本人が深い敬意を抱
いている。李登輝時代は、「自由と民主主義、人権と法治」を中華圏では初
めての試みとして、台湾人による台湾人のための民主化を完成させた。台
中関係は事実上「国と国の関係」であり、「一つの中国」とは、中国が勝手に
主張しているだけのことだ。中国は刃物を手に軍事侵攻をちらつかせてい
るから台湾人は「現状維持」と言っているにすぎない。

 わが国と東アジアとの安全保障にとって、日台は軍事・外交的にも運命共
同体である。さらに世界で6割強の軍事力を持つ米軍が日台はじめ西側陣
営を守るという強力な武力があるために、東シナ海の安全が保たれてきた。
鳩山氏の米国軽視は米国を中国寄りにし、日本軽視に追いやる政策に他
ならない。

台湾の軍備増強

 台湾の馬英久政権は中国寄りに傾倒して来たが、このところ中国の急激
な台頭に押されて、ついに軍備増強に踏み切る。中国から台湾に向けたミ
サイルは1400基と想定され、台湾はこれまでのミサイル防衛だけでは守れ
ないと判断した。中国は75隻の軍艦、65隻の潜水艦、265隻の船舶を保有
し、台湾上陸に備えて陸・海とも年々軍備増強している。

 馬政権は、最近射程1000キロ以上の中距離弾道ミサイルや巡航ミサイル
の製造を再開した。さらに、空母を迎撃する高速ミサイル艦の開発も検討
し、これまでの守りから攻めに転じる構えだ。

 台湾のみならず、豪州、ベトナム、シンガポールなどの周辺諸国も相次い
で軍備増強に動き出した。米国では太平洋司令官が今年1月、米議会で与
野党議員を前に中国海軍の脅威を訴えた。台湾、沖縄を取り巻く周辺情勢
は緊迫の度を増す。あらためて日米安保の果たす役割がクローズアップさ
れている。

中国の狙いは沖縄・尖閣だ

3月1日、中国は「海島保護法」という新法を施行し、領海域内の島の所有
権は中国にあると一方的に宣言。海洋覇権への並々ならぬ野心を鮮明に
した。中国が領有権を主張する島々は7千島近くあり、そのうち6千島近くが
今後軍事衝突を招く恐れがでている。中国は自国の法律を都合の良いよ
うに改正して、周辺諸国に脅威を振り舞いてきた。

 中国が狙う最大の軍事攻略地点とは沖縄であり、尖閣諸島だ。筆者は10
年前から中国最大の狙いは沖縄だと確信を持って主張してきた。それは、
沖縄を取れば、台湾が採れるという算段からである。沖縄はかつての「琉
球諸島」として、中国歴代王朝の勢力圏であった。しかし沖縄に米軍基地が
ある限り、台湾を取ることはできない。

「軍拡」喧伝で威嚇

 中国は米国と正面衝突の戦争をしたいわけではない。何といっても米軍
は世界最強の軍事力、技術力、戦闘能力を有している。米軍が動けば、日
本、台湾、韓国をはじめ周辺西側諸国が加わり、大戦争に発展しよう。そこ
までの覚悟は中国にはない。現代の装備や近代化では米軍に勝てないこ
とをわかっているからだ。 

中国は軍拡を声高に喧伝することで、他国を威嚇することが常套手段で
ある。かつての清の時代も、清国は軍拡を誇示し、海軍力をアピールした。
しかしいざ日清戦争となると清国海軍は意外に弱かったという戦争経験者
の記述を目にしたことがある。

 中国の急速な軍拡という一面だけを捉えて米軍が身動きできない状態で
あるような「中国優位」の記述を目にするたび、国民に恐怖心を煽る演出に
翻弄されて来た。中国は武器の質や性能、また兵士の質や武器を扱う技
術など真の軍事力を身に付けるにはさらに長い年月が必要だ。

危険をはらむ中台経済の一体化

 米軍基地移転は紆余曲折を経て辺野古に決定した。筆者は昨年来、この
問題は辺野古に落ち着くと明言してきた。辺野古への米軍基地設置が決ま
れば、中国の武力による「中台統一」は限りなく不可能に近い。しかし、中国
は「先経後政」(経済を先に政治を後に)を掲げるしたたかさで台湾侵略を
狙っている。

 馬政権は中台経済の一本化に向けて、6月中の自由貿易協定(FTA)と中
台経済協力枠組み協定(ECTA)の締結を目指している。中台間の貿易総額
は、約9兆8千億円であり、さらに枠組み協定の実現でゼロ関税が必要だ。
しかし中国経済は対外輸出拡大による経済成長は限界点に達しつつある。
今後は内需拡大に目を向けるしかない。

 しかし、馬政権の中台経済の一体化政策はやがて危険領域に踏み込む
ことになりかねない。中国が上昇気流にあるうちはよいが、登りつめた段階
から間もなく下降トレンドがやって来る。それゆえ台湾は中国との関係を堅
持しながら、インドをはじめアジア諸国との経済関係を調整し、方向転換を
模索せざるを得まい。わが国ではいまや中国から他のアジア諸国に目が向
き始めている。

台中抑止力の構築

 台湾が中国に傾斜すればするほど、中国のペースから抜けきれなくなろう。
馬政権の支持率39%、不支持43%(聯合報)と低迷しているが、多くの台湾
国民は行き過ぎた対中政策に不信を抱いている。それゆえ、馬政権は中台
新協定に挽回の望みを託すしかない。

 これまで述べてきたとおり、日台間には共通の安全保障と経済問題が山
積している。日台は決して中国の存在を否定するものではなく、経済的には
今後も持ちつ持たれつであることにかわりはない。それと共に米軍との安全
保障問題をあいまいにしてはならない。台湾民進党の蔡英文主席は5月25
日、「中華民国は亡命政府」と宣言。中国主体、台湾客体の終わりを宣言し
た。国内の台湾主体意識が高まり、いまや台湾は大きく変わろうとしている
が、それには日本の協力が必要不可欠だ。日台両国は政治と経済が一体
化した新しい関係を構築すべきである。

 李登輝元総統による台湾の民主化は実質的には東アジアの平和と安全
を守る重要な砦を築いた。李氏はわが国の先人たちが台湾に残した近代
化と日本精神に感謝の念を唱え高く評価されて来た。わが国先人たちが営
々と築いた来た過去の偉大な功績と歴史に感謝し、日台関係の未来を確か
なものに継承すべきだ。若い政治家や、企業家による日台交流に向けた積
極的な関係構築を求めて止まない。
             

◆◆◆◆◆◆◆◆◆6月23日「時局プレス会議」ご案内◆◆◆◆◆◆◆◆

   
   「台湾は中国に飲み込まれるか」
 講師/林 建良氏 「台湾の声」編集長

 馬英九政権下で、急速な対中接近によって、益々深まる経済の中国依存、
堰を切ったような中国人の流入、台湾はいずれ中国に飲み込まれるのでは
ないかとの観測が高まっている。そこで、台湾内部の実情はどうなっている
のか、中国に併呑されることは時間の問題なのか?台湾問題のスペシャリ
スト、林氏の登場は今ここに来て画期的な企画だ。

日 時/6月23日(水)午後6時
会 場/日本外国特派員協会
   20F「メディアルーム」
   東京都千代田区有楽町1-7-1
     有楽町電気ビル北館20F 
    �03-3211-3161
参加費/10,000円(食事付)
連絡先/時局心話會  担当:鈴木聖子
    �03-5832-7231