【論説】中国メディアが見抜く日本の「抑止力」低下

【論説】中国メディアが見抜く日本の「抑止力」低下ー中国支配秩序下に転落の兆し

        永山英樹

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■日本の弱体化は中国の一般認識   

もし台湾が中国に併合されれば、東アジアの海域は中国の内海となり、日本はシ
ーレーンを扼されて中国に従属を余儀なくされるだろう。そして中国を盟主とす
る東アジア共同体のような新秩序が形成され、その下で日本の国家主権は大きく
制約されることだろう。

だからそうした事態を回避するため、日米同盟は台湾を防衛範囲に組み入れてい
るのである。

このように第一列島線で中国の膨張から東アジア、西太平洋を守ろうとする日米
同盟と、第一列島線を越えた第二列島線までを勢力下に置き、新たなアジア秩序
を構築したい中国との対立構造があるわけだが、今日の民主党政権の危険さは、
外交基軸をこの日米同盟から、よりによって東アジア共同体構築へと移行させよ
うとしているかに見えることだ。

つまり東アジアにおいて勢力を拡張する中国への抑止力に低減の兆しが見て取れ
るのである。

少なくとも中国では、そのような見方が一般的になりつつある。

■王毅氏が来日―「日台接近」の阻止担い

かつて中国の駐日本大使だった王毅氏が二月十七日から二十一日まで、日本を訪
問した。

王毅氏は現在、国務院台湾事務弁公室の主任を務めている。就任は台湾で国民党
政権が発足した直後の〇八年六月だが、ではなぜ対台湾工作執行機関の責任者に
起用されたか。実はそのころまで日本と台湾との関係は非常に強固なものとなっ
ており、それが中国側を焦燥させていたからだ。

産経新聞はその年の五月三十一日、王毅氏の起用に関して次のように報じていた

―――外交の現場での交渉経験が買われたわけだが、この人事には日本各界に豊
富な人脈を持つ王氏を通じて、近年顕著となってきた日台接近を牽制する狙いも
ある。

―――近年の米台関係の悪化に伴い、台湾と日本の政治家や高官の相互訪問が頻
繁に行われるようになった。今月20日に就任した台湾の馬英九総統は、知日派
の李登輝元総統の協力を得て、改めて日本重視の姿勢を打ち出している。

―――駐日大使任期中にゴルフなどを通じて日本の政官財界との人脈を培った王
氏は、その影響力を行使して日台接近を阻止する役割を求められているようだ。

■安倍氏、麻生氏らを「親台派」と警戒した中国

産経の記事はこうも伝えていた。

―――ある中国筋は「台湾問題における日本の存在感がますます高まっている。
とくに日本の安倍晋三前首相や麻生太郎元外相ら保守派グループと台湾当局との
提携を警戒しなければならない」と語っている。

実際に中国は戦略上、安倍氏、麻生氏などを「親台派」「タカ派」として強く警
戒していた。「親台派」「タカ派」とは、中国の言うことを聞かない日本の政治
家の代名詞でもある。

台湾を喪失することで大きなダメージを受けるのは米国以上に日本である。だか
らたとえ米国が台湾と疎遠になっても、日本の「親台派」だけは自国の主権を防
衛するため、台湾の後ろ楯になろうとするはずだと中国は考えてきた。

ところがその日本に王毅氏が来てみると・・・。

■もはや従順な日本に圧力は必要ない

中国の御用メディア、中国評論新聞(香港)の三月二十一日の報道を読む限り、
「日本牽制」の任務は順調だったようだ。

―――王毅氏の今回の訪問の主要目は、日本政要に中国大陸の平和発展的な対台
湾政策と両岸関係(※台湾と中国の関係)の変化を紹介することにあった。

―――主に日本に対し台湾の政治に介入するなと戒めるのが、これまでの中国要
人の日本との交流の在り方で、火薬の臭いが濃厚だった。

―――しかし今回、王毅氏が力を入れたのは、両岸平和の発展の方向を日本に報
告すると言う、多くの善意と誠意を伴うことだった。

もはや牽制、圧力掛けの必要もないほど、日本の政界は中国側に従順な姿勢を示
したと言うことのようだ。

■台湾の中国との「関係改善」は「降伏」だ

次のようにもある。

―――王毅氏は日本できわめて高い待遇を受けた。天皇には会えなかったものの
、会うべき政治的要人とはみな会った。鳩山由紀夫首相、谷垣禎一自民党総裁、
岡田克也外相、小沢一郎民主党幹事長、河野洋平前衆議院議長、高村正彦日中友
好議員連盟会長、仙谷由人国家戦略担当相、そして亀井静香金融担当相などだ。

その際、鳩山氏は王毅氏に対し、「日本は十分に台湾問題の重要性を理解してい
る」「政権は交代したが、日中共同声明の原則に従い、如何なる台湾独立の動き
も支持しない」「政府は最近の両岸関係が改善と発展を見せていることに安心し
、喜んでおり、両岸双方が対話を通じ、台湾問題を平和的に解決することを支持
する」と述べたそうだ。

中国側が軍事恫喝を行った上で、台湾側を平和統一(武力ではなく協議による併
合)に向かわせつつあると言うのが「両岸関係の改善と発展」なるものの実相だ
が、このように報じられると、まるで鳩山政権はそれを支持しているかに見えて
くる。

■鳩山首相が「台湾併呑」を容認か

もっともこうした表明は基本的には、安倍政権、麻生政権を含む歴代政権も行っ
てきたリップサービス的なものではある。とくに台湾を中国領土と承認したわけ
でもないし、「台湾独立を支持しない」と言うのも「台湾独立に反対する」との
意味ではない。

ただ鳩山氏はこのとき、次のような発言もしたらしい。

「両岸関係の改善と発展は本地域の平和と安定にも有利だ」とした上で、「それ
はまた東アジア共同体構築にとっても積極的な要素となる」である。

現実として台湾は中国に併呑されない限り、東アジア共同体には加盟できない。
あるいは日本も台湾防衛を続ける限りは加盟できない。なぜなら、中国がそれら
を許さないからだ。

鳩山氏のこの発言が事実だとしたら、台湾併呑容認の意思表示を行ったことにな
る。

■日本の能力は「弱体化の趨勢」と中国メディア

こうした日本側の対応を受け、記事はさらにこう書く。

―――日本の政界は中国大陸最新の対台湾政策と両岸関係発展の性質を非常によ
く理解しようとしている。

だから王毅氏との意見交換を重視した、と言うわけだ。そして次のように結論付
けるのである。

―――我々は日本が両岸関係を制約する力を喪失しつつあることに気が付く。専
門家が指摘しているように、日本は今後も長期間にわたり、台湾問題への関与、
干渉を止めることはないだろう。しかし関与、干渉する能力が弱化する趨勢にあ
ることも顕在化するだろう。

―――日本が米国に代わって台湾独立の外部の支持者となり、台湾問題における
最大の外部的な妨害要素になる可能性はない。

このような分析はもっともだ。民主党政権が日米同盟を自ら空洞化させようとす
る愚行を見るだけでも、こうした結論に行き着くだろう。

■このままでは東アジアは中国のものに

終戦までの日本の生命線は満蒙だった。日本が国際社会での孤立も、戦争もあえ
て厭わず満蒙を守ろうとしたのは、それを放棄すれば東アジアがロシア=ソ連の
席捲するところになることを知っていたからだった。

今日の生命線は明らかに台湾だ。従って米国が台湾を放棄しても、日本は単独で
もその独立状態を守らなければならない宿命にある。しかし中国評論新聞が分析
するように、日本には「関与、干渉する能力」を喪失しつつあるのだ。

日本がここまで凋落していると言うことを、国民のいったいどれだけが気が付い
ているだろうか。

このままでは東アジアは、中国の席捲を受けざるを得なくなる。

■在日中国人に侵略翼賛を訴える

一方、日本滞在中の王毅氏は意気軒高だった。中国共産党機関誌人民日報の姉妹
紙である環球時報(三月二十五日)によれば、在日中国人たち(台湾籍も含むと
か)との座談会で次の如く述べている。

―――在日同胞は海外同胞の重要な一部にして、愛国主義と言う優良伝統を具備
する、民族の独立推進、国家統一防衛のための積極貢献の重要なパワーだ。

―――目下、両岸関係の平和的発展、中華民族の偉大なる復興が重要な機会に直
面する歴史的な新時期を迎えている。民族の大義を重んじ、団結奮闘し、中華を
振興しよう。

「国家統一」とは「台湾併合」、つまり「侵略」である。台湾を侵略して「中華
振興」、すなわち中国中心の新たな国際秩序を実現しようと訴えているのだ。

台湾統一は中国の対外領土拡張、つまり侵略以外の何物でもない

■台湾問題は日本の死活問題との認識が必要

日本において政府要人と握手をする一方で、在日中国人コミュニティに向けては
侵略政策への翼賛を呼びかけているのだから傍若無人である。

しかし民主党政権は、こうした在日中国人にも参政権を付与すると言うのだから
、あまりにも無防備だ。

民主党政権とは日本の「凋落」「転落」の過程において、発生すべくして発生し
た中国の傀儡政権なのだろうか。

国民の一刻も早い平和ボケからの覚醒が求められている。そして先ずは、台湾防
衛問題が日本の死活問題であるとの認識を持つことから始めなければ・・・。


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