【矢板明夫の中国点描】成田空港で中国国歌、職員に暴行・逮捕…中国人観光客はなぜ日本で暴れるのか

【矢板明夫の中国点描】成田空港で中国国歌、職員に暴行・逮捕…中国人観光客はなぜ日本で暴れるのか

産経新聞2018.1.31

 「♪中華民族に最大の危機迫る。一人一人が最後の雄たけびを上げるときだ…」

 25日未明。千葉県の成田空港に、中国の国歌「義勇軍行進曲」の歌声が響き渡った。数十人の中国人が大暴れし、警察官や空港スタッフともみ合いながら、合唱している異様な風景が広がっていた。

 きっかけは飛行機の遅延である。中国メディアなどによると、上海行きのジェットスターの航空便が天候不良で欠航になり、175人の中国人客が成田空港で足止めとなった。数十人は航空会社の紹介でホテルに向かったが、残り100人以上が搭乗口付近にとどまり、食事や宿泊施設の提供などを要求した。しかし、彼らのほとんどが格安航空券を購入。遅延などの場合、自費で対応するのが原則で、話し合いは平行線をたどった。

 深夜2時過ぎ、数人の中国人が立ち入り禁止の搭乗エリアに入ろうとしたところ、航空会社職員の男女2人が制止に入った。しかし突き飛ばされ、女性職員は足に軽いけがをした。通報を受けた空港警察が駆けつけ、一人の男性客を暴行の疑いで逮捕した。

 現場で撮影したとみられる複数の映像がインターネットにアップされた。警察に連行される男を取り戻そうとして、興奮した中国人たちが国歌を歌い強く抗議する様子が映っている。

 飛行機の遅延は世界中の空港でよく起きることだが、集団が自国の国歌を歌って相手を威圧する光景は異常と言わざるを得ない。中国国内のインターネットでこの騒ぎを「辱華事件」(中国を侮辱する事件)と位置付け、「中国語ができるスタッフをすぐに派遣しなかったせいだ」などと航空会社側の対応を批判する意見が多く寄せられた。女性職員に暴行を加え逮捕された男を「抗日英雄」とたたえる書き込みも見られた。

 近年、中国国内で愛国教育が徹底的に行われ、テレビは連日のように、旧日本軍が中国の民間人を虐殺する内容を含む抗日ドラマを放送している。「日本にいじめられている」という被害者感情を多くの中国人がいまだに抱いている。普段は表れないが、日本人と絡むトラブルになればすぐにそれが外に出てしまう。ちなみに歌われた「義勇軍行進曲」は日中戦争時に作られた抗日歌曲である。

 北京在住の知識人の分析では経済発展の恩恵を受け、中国人は海外旅行を楽しめるようになったが「わがままを言えば何とかなる」という契約を軽視する国内の慣習を海外でも通用すると思っている人が多いことも原因の一つだ。2016年12月、北海道の新千歳空港でも同じような事件が起きた。大雪による欠航に中国人乗客約100人が抗議し騒動が起きている。

 しかし一方、中国人たちは自国内の観光地などで同じようなトラブルに巻き込まれたときは、このような形で抗議することは少ない。成田空港事件とほぼ同じ時期、中国東北部の黒竜江省の観光地、雪の郷で、観光客らが相場の10倍以上の料金を請求されるトラブルが相次ぎ、中国メディアに大きく報じられた。

 報道によれば、ほとんどの観光客は一旦要求された金額を払い、雪の郷を離れてから被害届などを出すなど訴え始めた。「観光業者は現地の警察や暴力団一味の可能性があり、騒ぎを起こせば何をされるか分からない」というのが理由だという。中国人観光客の心の中に、「法治国家日本であれば、多少暴れてもよい」という安心感があるようだ。(外信部次長)


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