【産経新聞が修正報道】「トランプ氏は『米国の「一つの中国」政策』を尊重すると表明」

【産経新聞が修正報道】「トランプ氏は『米国の「一つの中国」政策』を尊重すると表明」

日本李登輝友の会メールマガジン「日台共栄」より転載

 2月9日夕に行われたアメリカのトランプ大統領と中国の習近平・国家主席による電話会談におい
て、トランプ大統領は中国が主張する「一つの中国」を認めたかのような報道に対し、本誌ではこ
れを誤報とする林建良氏、アンディ・チャン氏、藤井厳喜氏の発言を紹介してきた。

 トランプ大統領が述べた内容については、ホワイトハウスが正式発表した「honor our “one
China” policy」しか確認できない。ここに言う「our」(我々)とは米国のことだ。そこで、トラ
ンプ大統領は「米国の『一つの中国』政策を尊重する」と述べたのであり、中国が主張する「一つ
の中国」政策を尊重すると述べたのではないと繰り返し指摘してきた。

 また本誌では、台湾の総統府報道官がトランプ・習近平の電話会談について「米国とは相互に密
接に意思疎通しており、意外性は生じない」というコメントを出したことも紹介、米国から事前に
会談内容を知らされている可能性を否定できないこともお伝えしてきた。

 この電話会談について、2月10日付の産経新聞は「トランプ米大統領が9日、中国と台湾は不可分
の領土だとする『一つの中国』原則を尊重することを受け入れた」と報道していたが、16日付の
ウェッブ版で「トランプ氏は電話会談で『われわれ(米国)の「一つの中国」政策』を『尊重す
る』と表明」したと報じ、事実上修正し、トランプ大統領が前言を翻していなかったことを明らか
にした。

 また、「電話会談の前に、『一つの中国』に関するトランプ氏の発言の概要を米側から通知され
ていたことが15日、分かった」とも伝えている。

 さらに、中国側がトランプ発言をどう受け止めたかが重要なポイントだが、これについても「習
政権も実際には米中の認識の差を理解しているもようだ」と伝えている。

 なお、産経新聞の記事は「一つの中国」に関する米中の立場について説明し、米国の立場につい
て3つの共同コミュニケと台湾関係法の2つを挙げているが、実はもう1つある。それが「6つの保
証」だ。アメリカはこの「6つの保証」を米台関係の基礎と位置づけている。

 ロナルド・レーガン大統領時代の1982年7月14日、台湾への武器供与などに関して下記の「6つの
保証」を定め、台湾側に伝えている。

(1) 台湾への武器供与の終了期日を定めない。
(2) 台湾への武器売却に関し、中国と事前協議を行なわない。
(3) 中国と台湾の仲介を行わない。
(4) 台湾関係法の改正に同意しない。
(5) 台湾の主権に関する立場を変えない。
(6) 中国との対話を行うよう台湾に圧力をかけない。

 その後、大統領選が行われていた昨年5月16日には、米国連邦議会下院が「『台湾関係法』と台
湾に対する『6つの保証』を米台関係の基礎とすることを再確認する共同決議案」を可決し、7月6
日には、同議会上院が「『台湾関係法』と台湾に対する『6つの保証』を米台関係の基礎とするこ
とを再確認する両院一致決議案」を可決している。

 アメリカは3つの共同コミュニケで「台湾は中国の領土の不可分の一部」とする中国の主張を認
識(acknowledge)するとのみ表明し、けっして承認したわけではなかった。

 もしトランプ大統領が中国が主張する「一つの中国」を受け入れたとするなら、アメリカにとっ
ては1972年以来の大きな対中政策の転換となるはずで、台湾も黙ってはいなかったはずだ。

 トランプ大統領は、1972年の米中共同声明(上海コミュニケ)の原点に戻ることを主張し続けて
いるのだ。メディアは、ホワイトハウスの正式発表もさることながら、台湾政府が「意外性は生じ
ない」とコメントし、平静に受け止めていたことの背景にもっと注意をはらうべきであろう。

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米中会談、台湾・蔡英文政権に事前通知 「一つの中国」発言概要
【産経新聞:2017年2月16日】

 【台北=田中靖人】台湾の蔡英文政権が、トランプ米大統領と中国の習近平国家主席の9日の電話
会談の前に、「一つの中国」に関するトランプ氏の発言の概要を米側から通知されていたことが15
日、分かった。蔡政権の高官が明らかにした。

 トランプ氏は電話会談で「われわれ(米国)の『一つの中国』政策」を「尊重する」と表明。こ
れについて高官は、「完全に状況を把握し、不必要な反応はしなかった」と述べ、事前に発言を承
知していたことを示唆した。

 「一つの中国」に関する米国の「政策」と、中国の「原則」は内容が異なり、米国は中国の立場
をそのまま受け入れてはいない。

 電話会談後、中国側は米側の発言を「称賛」したが、会談を伝えた中国国営新華社通信は用語を
使い分けており、習政権も実際には米中の認識の差を理解しているもようだ。

 一方、蔡政権は「一つの中国」をめぐる米中の発言内容に反応しなかった。米国の立場に大きな
変更がなく、台湾側に有利にもなると判断したためとみられる。事実、ティラーソン国務長官は承
認時に「中国の台湾への主権を公式に承認しない」などとする1982年の「6つの保証」に自ら言及
している。

 蔡政権は「一つの中国原則」を受け入れていない。トランプ氏は昨年末、「一つの中国政策」に
縛られない考えを表明。台湾側はこれを歓迎する一方で、交渉カードにされて米側が譲歩し、不利
になる懸念も出ていた。

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■「一つの中国」に関する米中の立場

 中国の「一つの中国」の「原則」は、台湾当局が名乗る「中華民国」を念頭に(1)(世界に)
中国は一つしかない(2)中華人民共和国政府は中国の唯一の合法政府(3)台湾は中国の領土の不
可分の一部分─とする3要素からなる。

 一方、米国の「政策」は1972年、78年、82年の3つの米中共同声明と、台湾との非公式関係や武
器供与を定めた79年の国内法「台湾関係法」に基づく。共同声明で米国は、中華人民共和国政府を
「承認」する一方、「中国は一つであり、台湾は中国の一部」の2点は、中国側の「立場を認識す
る」にとどめている。

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