【澁谷司】郭文貴による「王岐山スキャンダル」の暴露

【澁谷 司】郭文貴による「王岐山スキャンダル」の暴露

一般社団法人日本戦略研究フォーラムブログより転載

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これは中国の政治を揺るがす大きなスキャンダルですが、残念ながら中国に対する配慮か、日本の大手マスコミはほとんど報道していません。

「台湾の声」編集長 林 建良(りん けんりょう)

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 周知のように、現在、米国在住の郭文貴は、中国大陸から逃亡した大富豪である。その郭がVOA(Vice of America、「美国之音」)に何度も出演しては、中国共産党のスキャンダルを暴露している(一度、郭が同番組に出演した際、急に放映が途切れたことがあった)。

 なぜインターポール(国際刑事警察機構)から「国際指名手配」された郭がVOAに出演して、中国共産党の最高幹部(特に王岐山)を非難しているのか。

 当然、トランプ政権の意志が働いていると見るべきだろう。米国政府がしっかりと郭を保護している。

 ホワイトハウスでは、嘆願書が30日以内に10万以上の署名で集まれば、自動的にその嘆願書の受付を検討するのが原則である。

 ところが、郭逮捕を求めるホワイトハウスへの嘆願書は、途中で閉鎖された。勿論それはトランプ政権の意向だろう。米国政府は郭を逮捕しないばかりか、郭には好きなようにしゃべらせている。

 一方では、おそらく中国共産党の引退した最高幹部が郭の後ろ盾になっているはずである。

 無論、江沢民の「上海閥」か、胡錦濤の「共青団」しか考えられない。とりわけ習近平政権の「反腐敗運動」で大打撃を受けているのが「上海閥」である。そのため、江沢民や曾慶紅辺りが郭の黒幕である公算が大きい。

 しかし、「共青団」系も「上海閥」と同じように一定の打撃を受けた。胡錦濤や温家宝(正確には「共青団」ではないが、「共青団」に近い)辺りが、郭の黒幕となっているのかもしれない。

 場合によっては、「上海閥」と「共青団」がスクラムを組んで、郭を支援している可能性も捨て切れない。

 さて、郭によれば、王岐山には最低2人の隠し子(いずれも女性)がいるという。

 実は、王と姚明珊の間には子供がいない。妻の姚(姚依林の娘)は子供が産めなかったのだという。そのため、王は愛人に子供を産ませたのだろう。

 王の娘の1人は、オーストラリアに住む于歌だという。既に于には、女の子(王の孫にあたる)がいる。確かに、于は父親と目される王に似ている。もう1人は、米国カリフォルニア州に住む孫瑶(アニータ)である。彼女は王に殆ど似ていない。

 更に郭は、王には2兆元(約30兆円)もの資産があると暴露した。一例として、郭は、王が米国内に豪邸を持つ事を明らかにしている。因みに姚は米国グリーンカードを持つ。

 また、郭によれば、王は海航集団(HNAグループ)から、様々な便宜供与を受けてきたという。

 香港情報では、王は、海航集団の創業者で董事長の陳峰とは旧知の間柄だったことが指摘されている。

 1988年、王が世界銀行からの借款を利用し、中国農業信托投資公司の総経理になった。同年、陳は、同公司世界銀行貸与項目室主任となっている。

 更に2002年、今度は王が海南省委員会書記へ転出した際、王は再び陳の上司になった。

 習近平政権としては、既に米国へ中国の公安や検察を送っているはずである。あわよくば、郭を逮捕して中国へ連れ戻すか、或いは郭の命を狙っているに違いない。

 他方、「反政府」系女性ジャーナリストの高瑜は、郭を応援しており、それに刺激を受けて、鮑ドウ(かつての趙紫陽秘書)も郭を絶賛している。

 だが、最近SOHOのトップである潘石屹が郭に関する発言を行うようになった。潘は屡々中国メディアに登場し、郭が全くのデタラメを言っていると郭を批判している。

 潘は「太子党」或いは「之江新軍」(習近平主席の派閥)周辺から、郭批判を依頼されたに違いない。そうでなければ、わざわざ郭を非難する理由はないだろう。

 郭のターゲットは王岐山である。郭が、習近平―王岐山ラインを崩そうとしている思惑が透けて見える。もし習王コンビが崩壊すれば、「反腐敗運動」継続に重大な障害が起きるだろう。

 事実、習近平主席は、既に王岐山の腐敗調査を開始したとの情報もある。両者の間に亀裂が入ったことは想像に難くない。

 仮に、郭の「王岐山スキャンダル」が事実ならば、王は今秋の「19大」で政治局常務委員として残るのは難しいだろう。

澁谷 司(しぶや つかさ)

1953年、東京生れ。東京外国語大学中国語学科卒。同大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学東京外国語大学等で非常勤講師を歴任。2004〜05年、台湾の明道管理学院(現、明道大学)で教鞭をとる。2011〜2014年、拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。現在、同大学海外事情研究所教授。
専門は、現代中国政治、中台関係論、東アジア国際関係論。主な著書に『戦略を持たない日本』『中国高官が祖国を捨てる日』『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)、『2017年から始まる!「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)等多数。

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