【戦略的変化】米「台湾旅行法」の意義

【戦略的変化】米「台湾旅行法」の意義

 
「台湾の声」編集長 林 建良(りん けんりょう)

 「228事件記念日」に合わせたか、米下院に続き米上院も2月28日に「台湾旅行法」を全員一致で通過させた。この法案にトランプ大統領が署名すれば発効し、今まで外交の慣例によって制限された米台両国の高官による相互訪問も可能になる。

 本来、台湾にもアメリカにも高官の相互訪問を禁止する法律は存在せず、この法案がなくても、米台高官の相互訪問が可能なはずだが、アメリカは中国の圧力に屈して米台間の高官訪問を自己規制している。しかし、「チベット旅行法」という法案がないにも関わらず、歴代の米大統領はよくダライ・ラマをホワイトハウスに招待して会談する。

 なぜダライ・ラマがホワイトハウスを訪問できて、台湾の高官がワシントンに足を踏み入れることすら許されないのか。理由の一つは、ダライ・ラマが多くの米国民にも敬愛されている宗教家だからである。つまり、中国の圧力を撥ね退けてダライ・ラマのホワイトハウス訪問を可能にしたのは、アメリカの民意なのだ。しかし残念なことに、「タイ」と「タイワン」の区別もつかない一般の米国民にとって、台湾の高官がワシントンを訪問できるかどうかは、それほどの関心事ではない。幸い、最近になってアメリカの識者がようやく中国の脅威を真剣に直視するようになった。その流れに合わせ、トランプ政権も中国をライバルと位置付けたのである。こうした戦略的変化は
遅きに失した感もするが、変わらないよりはマシだ。

 そもそも敵のことを慮って最前線で対峙している盟友を締め出す理由はどこにもないはずだ。しかしアメリカはこの単純なことに気づくのに40年もの時間を要した。その最大の理由は中国利権のブローカーであるキシンジャーの暗躍だ。実際今まで所謂キシンジャー主義が国務省で蔓延していた。こうした、台湾を軽視して「中国を刺激しない」キシンジャー主義が、アメリカの対中戦略を無力化してしまっているのだ。

 ようやくアメリカの政治家がこのいびつな現状に気づき、米台高官相互訪問を約束する「台湾旅行法」を上下両院ともに全員一致で通過させた。日本はいつになれば、台湾総統の訪問を受け入れてくれるのだろうか。

 


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