【尖閣】弥縫策を重ねてブレにブレる馬英九氏の尖閣対応

【尖閣】弥縫策を重ねてブレにブレる馬英九氏の尖閣対応
   尖閣侵入の全家福号に3ヵ月の出航停止処分

 日本李登輝友の会メルマガ「日台共栄」より転載

 1ヵ月前のことになるが、尖閣諸島の領有権を主張する台湾の民間団体「中華保釣協会」
の黄錫麟総幹事らメンバー4人や香港の衛星テレビ局「フェニックステレビ」のカメラマン
1人を含む7人が乗った台湾の漁船「全家福号」が尖閣諸島の接続水域に侵入するという事
件が起こった。台湾の海岸巡防署の巡視船4隻も同行していた。

 周知のように、海上保安庁の巡視船が放水して全家福号を排除したが、このとき中国の
監視船3隻が台湾の巡視船に接近してきた。

 そこで台湾の巡視船は「釣魚台問題での両岸連携という誤解を招かないよう、海巡署は
電光掲示板などで『釣魚台は中華民国の領土であり、ここは中華民国の領海だ』と警告、
大陸の公船に即刻立ち退くよう求めた」(中央通信社:2013年1月24日)。

 産経新聞は「中台の船舶が同時に尖閣沖に現れるのは異例だ。中国船が台湾船に協力し
ようとする動きも見せており、中国側には中台“共闘”を日米両国にアピールする思惑が
あったようだ」と報じた。また、台湾に戻った中華保釣協会の黄錫麟総幹事が「尖閣防衛
のために、台湾と中国は手を結ぶべきだ」と主張する場面もあった。

 1月末、中華保釣協会は海上保安庁の放水で漁船が損壊したとして、交流協会の樽井理事
長と海保巡視船の責任者2人に対して損害賠償500万台湾ドル(約1580万円)を求める民事
訴訟を台北地方検察に起こしている。2月20日には日本交流協会台北事務所に抗議文書を渡
し、改めて「台湾と中国大陸は釣魚台問題で連携すべきだと強調」したという。

 一方、日本とアメリカ両政府は2月6日、全家福号の侵入行為を「挑発行為」とみなし、
正式な外交ルートを通じて台湾当局に抗議を申し入れたと伝えられている。

 すでにアメリカ側は1月18日、クリントン米国務長官(当時)が尖閣諸島を巡って「日本
の施政権を侵すあらゆる一方的な行動に反対する」と表明していた。それにもかかわらず
台湾の馬英九政権が全家福号の出港を許可したことに対し「米国から馬総統の対応に疑問
が投げかけられた」とも伝えられている。

 全家福号が出航したとき、台湾政府は確かに全家福号が無線通信員が乗船していなかっ
たため、台湾から約44キロを超えて航行した場合、台湾に戻った後に処罰する方針を伝え
てはいた。しかし、「尖閣諸島の主権を主張し、民間漁船の出港を阻むことは法律上も不
可能だ」とも説明していた。

 しかし、馬英九政権は日本とアメリカの強い姿勢に驚いたのか、2月22日になって、全家
福号に3ヵ月の出航停止処分を下した。その理由がふるっている。「全家福号は無線通信員
がいないのに出港した。船長と雇用関係にない外国人労働者を乗船させた−−などが違反に
当たるという」(毎日新聞:2013年2月22日)。

 一方で「民間漁船の出港を阻むことは法律上も不可能だ」と言って出航を許可し、日米
の強い姿勢に接し、米国から馬総統の対応に疑問が投げかけられるや出航停止処分を下
す。ブレにブレる馬英九政権の尖閣対応だ。

 無線通信員がいないのも、雇用関係にない外国人労働者を乗船させていることも、出航
前に分かっていた。しかし、馬英九政権は中国政府の顔色を見ながら出航を許可した。と
ころが、そこに中国の監視船が台湾の巡視船に接近するという前代未聞の事態が起こっ
た。馬英九政権が招いた事態だ。

 それこそ「水際」で撤退させたものの、中国側の「中台“共闘”を日米両国にアピール
する思惑」はまんまと成功した。

 そこで馬英九氏は改めて2月18日、中国に拠点を持つ台湾企業の関係者(台商)との会合
で、尖閣問題について「中国と連携しない」「中国との共闘はありえない」と表明すると
いう「弥縫策」を打った次第だ。そして22日に、全家福号に3ヵ月の出航停止処分を下して
みせた。

 だが、「東シナ海平和イニシアチブ」とその推進綱領で、中国を引き入れて漁業会談を
開き、共同で資源を開発しようと提案しているのは馬英九氏自身だ。これを破棄しない限
り、「中国と連携しない」という発言は絵空事にしか聞こえない。また、このような弥縫
策をいくら重ねても、弥縫策は後手であり、弥縫策でしかない。このような誠意のないパ
フォーマンスで尖閣問題を処理しているかぎり、日米の信頼は得られまい。


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