【報告】暑さにも負けず呉正男氏と川村純彦氏を講師の「台湾セミナー」は大盛会!

【報告】 暑さにも負けず呉正男氏と川村純彦氏を講師の「台湾セミナー」は大盛会!

日本李登輝友の会日台共栄より転載

 本会は去る7月27日、東京・文京区内のアカデミー茗台(めいだい)において、呉正男
(ご・まさお)氏と川村純彦(かわむら・すみひこ)氏の2人を講師に「第9回台湾セミナ
ー」を開催した。

 お天気を気にしつつの開催だったが、蒸し暑い中を約50名が参加し、2人の話に聞き入っ
た。この日は隅田川の花火大会と重なり、参加者の中にはセミナーが終わってから見に行
くという人もいた。ただ残念ながら、予想どおり天気が崩れて大雨となり、隅田川の花火
大会は開会30分ほどで中止となった。

 司会は柚原正敬・事務局長がつとめ、常務理事の石川公弘(高座日台交流の会会長)が
開会の挨拶を述べ、まず呉正男氏が「映画『台湾アイデンティティー』と台湾人のアイデ
ンティティー」と題して講演。

 映画「台湾アイデンティティー」に出演している呉氏は、18日間で平均170人が映画を観
に来ていることや、台湾で中国語の字幕を付けての公開が決まったことなど、好調ぶりを
報告するとともに、8年前にさかのぼる酒井充子(さかい・あつこ)監督とのお付き合いに
も触れ、昨年末、映画出演の依頼があったときは「来たか」という感じで淡々と受け入れ
た心境を披露した。

 呉氏は自らの来歴を話しつつ、中学受験に2度失敗したお蔭で日本に来ることができた、
ソ連に2年間抑留されたお蔭で2・28事件渦中の台湾に帰れなかったので命拾いしたなど、
塞翁が馬のようなプラス思考で生きてきたことなども披瀝。

 日本への帰化申請について、軍人としての経験もあるので簡単に手続きできるのではな
いかと考えていたら、窓口で3度も「申請しても出ないことがある」と言われて嫌気がさ
し、その上、日本人の夫人から「今さらなぜ申請するの? メリットもデメリットもない
なら止めたら」と諭されたことや、夫人が旧姓をけっして名乗らず「呉」で通してきたこ
とも併せて紹介された。

 映画の中で、酒井監督から「呉さんは何人ですか?」と聞かれて「台湾人」と答えた
が、その後、台湾に住む人々の中には今でも「中国人」と名乗る人がいることに疑問を覚
え、「今なら台湾籍日本人と答えたい」と述べ、約1時間にわたった講演を締めくくった。

 5分ほどの休憩の後、「なぜ日本は『日台関係基本法』を制定しなければならないのか」
と題した川村純彦氏の講演が始まった。

 川村氏は、本会の「日米台の安全保障等に関する研究会」の座長もつとめる防衛問題の
専門家。尖閣諸島をめぐって浮上してきている中国の動向やその目的、台湾の重要性につ
いて詳しく分かりやすくお話しいただいた。

 中国の目的はアメリカと肩を並べる覇権国家になることであり、核を積める潜水艦を持
ち、航空母艦を備えることなどによって、その潜水艦を沈めておくために南シナ海を核心
的利益としていると指摘。南シナ海を聖域化したいために、東シナ海の制空権や制海権を
確保したいがために尖閣諸島への挑発行為を繰り返しているとも指摘。

 しかし、中国軍には航空母艦はあるが飛行機を飛ばせるような状態ではなく、中国自身
も南西シーレーンを使っているのでマラッカ海峡を封鎖すれば国内は大混乱に陥るなどの
弱点も少なくなく、逆に日本は対潜哨戒機P3Cを100機や優秀な潜水艦もあると説き、日
中の軍事力では日本が優っている現状を紹介した。

 しかし、日本にとって台湾はシーレーン防衛上も大事なポイントであるにもかかわら
ず、台湾との法的関係が一切ないという状態は危険であり、アメリカが台湾関係法を制定
しているように、政策提言の4つのポイントを紹介しつつ、日本も日台関係基本法を制定す
るようしなければならいと強調された。

 その後に開かれた懇親会には、講師の呉氏や川村氏をはじめ24名が参加、セミナーで聞
き洩らしたことなどを質問したり、台湾の話題で遅くまで盛り上がった。お開きのころに
は、文京区内を襲った大雨もあがっていた。

 取材に来た「台湾新聞」が、当日の写真とともに講演内容を詳しくレポートしているの
で下記にご紹介したい。

 なお、この台湾セミナーは6月から毎月開催することとなり、今後は月末の土曜日開催と
なる。8月は31日の午後2時から「アカデミー茗台(めいだい)」で、9月は28日の午後2時
からやはり「アカデミー茗台」での開催を予定し、近々、8月セミナーを案内します。

—————————————————————————————–

呉正男さん、川村純彦さん、W講師の講演会が開催
【台湾新聞:2013年7月30日】
http://blog.taiwannews.jp/?p=14844

 日本李登輝友の会主催の「第9回台湾セミナー」が7月27日、都内で開催され、日本李登
輝友の会理事でもある呉正男さん(横浜台湾同郷会最高顧問)、同会の常務理事でもある
川村純彦さん(NPO法人岡崎研究所副理事長)が講演を行った。

 冒頭、司会の日本李登輝友の会の柚原正敬事務局長は、「本日は、呉正男さんの『映画
台湾アイデンティティと台湾人のアイデンティティ』と題する講演と本会が政策提言を行
っている『日台関係基本法』について川村純彦さんに講演を行っていただきます」と挨拶
し、開会宣言を同会の常務理事でもある石川公彦さん(高座日台交流の会会長)が行っ
た。

 呉正男さんは、東京・ポレポレ東中野で7月6日からロードショー公開された、自らも出
演しているドキュメンタリー映画「台湾アイデンティティー」の好調な観客動員を喜ぶと
同時に、「親台湾の多くの方々にPRしていただき感謝したい。こうした状況は、何より
最近の台湾人に対する日本人の関心の高まりが大きな原因だろうと思います」と述べた。

 呉さんは続けてこの映画の宣伝に力を入れていること、酒井充子監督との出会い、自ら
の戦争時代の体験談、映画出演への思いを熱心に語った。

 最後に、呉さんは「映画のなかで酒井監督に『呉さんは何人ですか』と質問されて『台
湾人です』と答えたが、後で考えて後悔している面もある。外省人がもう台湾で何十年も
住んでいるのに『中国人』と答えているのはおかしいと思うから。今、言うなら自分は
『台湾籍日本人』というのが正確だと思います」と力を込めた。

 一方、川村純彦さんは、中国が尖閣諸島問題で日本に仕掛けてきている背景のひとつに
は中国国内問題があるとし、格差拡大、環境破壊、人権問題、少数民族問題、共産党幹部
の汚職問題などを挙げた。「こうした問題が自分に向かわないよう、日本という国向けた
いというのが中国の考え方です」(川村さん)

 川村さんは東シナ海、南シナ海の軍事上の意味と中国の軍事戦略、中国の軍備・兵器の
現状、脅威と欠点などについて詳細に分析した上で「こうした中国の行動の基本になって
いるのが1992年に、尖閣諸島、西沙諸島、南沙諸島を中国の領土であると規定した『領海
法』を施行したことです。これは国内法で国際的には意味がないわけですが、我が国はこ
のとき、きちんと抗議をしなかった」。

 川村さんはまた、仮に台湾が中国の側につけば日本の防衛はスカスカになり、その意味
で台湾は日本にとって運命共同体であるにもかかわらず、国交がないのは大きな問題。ア
メリカが国交断絶の際、台湾関係法を制定したように我が国も法の整備が必要だと説い
た。

 川村さんが日本李登輝友の会の政策提言で訴えている政策の柱は大きく4つあるが、その
一番目。

「緊迫するアジア太平洋地域において我が国と台湾との関係は、現行の経済、社会、文化
に限定した民間の実務関係だけで律することは極めて困難となっており、交渉相手の台湾
の地位を法的に明確に規定するとともに、台湾との総合的な外交を行うための根拠法規日
台関係基本法を作る必要がある」。

 こうした政策提言に対し、質疑応答が活発に交わされていた。