【台湾観光業デモ報道】日テレは台湾の親中デモに好意的か

【台湾観光業デモ報道】日テレは台湾の親中デモに好意的か

ブログ「台湾は日本の生命線」より

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■中国の宣伝に惑わされる日本メディアの台湾報道

日テレNEWS24は九月十二日、「台湾 中国からの客減少で観光業者がデモ」と題するニュースを配信。「台湾では今年5月、独立色の強い政権が誕生して以降、中国からの観光客が減少し続けている。12日、観光業者らがデモを行い、政府に窮状を訴えた」と伝えた。

それにしてもこのように、台湾の民進党政権に関する日本のマスメディアの報道には注意が必要だ。

どこもが民進党を「独立色」「独立志向」と形容したがるが、それは同党を「台独分裂」勢力と位置付け、トラブルメーカー扱いにする中国の宣伝に惑わされているからだろう。

好く考えればわかることだが、そもそも台湾は中国の領土ではなく、そこからの「台湾独立」という問題は存在し得ないし、民進党にしても「中華人民共和国からの独立」を目指したことなど一度もない。

中国が、同党が台湾と中国が異なる別々の主権国家であるとの現実を強調することを以って「台独分裂」活動と批判するからといって、そんなデタラメなプロパガンダになぜ踊らされるのか。

今回の日テレの報道もそうした類だろうか。更に内容を見てみよう。

■責めを負うべきは民進党政権ではなく中国だが

次のようにある。

―――デモを主催した観光団体などによると、参加したのは旅行会社などの社員ら約1万人で、政府に対し、中国人らへの観光ビザの要件緩和を求めた。

―――台湾では、今年5月、独立志向の強い民進党が政権を取ると、中国側が当局同士の対話を中断。中台関係が冷え込み、地元メディアによると、先月には、中国からの観光客が去年に比べ、55%減少したという。

民進党は「独立志向の強い」と執拗に強調しているが、もしや「中台関係が冷え込」んだのは民進党のせいだと言いたいのだろうか。

関係の冷え込みは間違いなく、中国側の意向に従ってのものだ。民進党は「一つの中国」原則(台湾は中国の領土の一部であるとする虚構宣伝)を受け入れない「台湾独立分裂勢力」だとして、対台交流を一方的に停止し、台湾の政府、国民を揺さぶろうとしているところであり、中国人客の減少も、その一環として行われる台湾への観光ツアー数の規制の結果である。

そう考えれば関係悪化の責めを負うべきはやはり民進党政権ではなく中国だろう。

しかし今回取り上げられたデモは、中国ではなく民進党を批判するものだったのである。

■観光業界は潤っているのに「生存」を求めるデモを

デモの名称は「912百万観光産業自救大遊行」。旅行業、運輸業、製造業など十一の同業者団体で作る「百万観光産業自救会」が主催した。

自由時報はデモの前日、次のように書いている。

「観光業界は中国人客の減少で、二千万元(※一年間に中国人客がもたらす収益)が蒸発するのを怨んでいる。交通部観光客の八日のプレスリリースによれば、今年一月から七月までの観光業界の外貨収入は昨年同期比で二百億元増であるにもかかわらず、百万観光産業自救会はそれでも十二日、街頭に繰り出して緊急支援、生存、仕事、温かな生活を要求する」

これによれば、中国人客の減少は観光業界に大きな打撃を与えていないようだ。上記の観光局の発表によれば、昨年同期比で韓国人客は二九・一%増、日本人客は一七・四六%増、マレーシア人客は八・〇一%増、香港・マカオ、欧米は七%増。

中国人客も確かに五月以降はマイナス成長に転じたが、それでも〇・四一%増である。しかしそれでも業界の「生存」を求めるデモが行われるのはなぜなのか、と自由時報は訝しんだのである。

そこでその「なぜ」を考えるため、今少し日テレNEWS24の報道をチェックしよう。

■台湾国内ではあまり同情されない人々のデモ

こんなことも言っている。

―――特に、団体客の減少が目立ち、観光バス事業者や、観光業への依存が強い、台湾中部、南部の飲食店などに、大きな影響が出ているという。

―――参加者らは、「両岸は一つの家族のように親しい」などと書かれた旗を持ち、関係改善を訴えている。

要するに、今回のデモは中国人客への依存度が高い故に損害を被った業者によるものなのだろう。自由時報は「観光業者による初めての街頭抗争を後ろで画策しているのは、主に中国人ツアーの減少で打撃が一番大きい一条龍業者だ」と伝えている。

この「一条龍」とは中国・香港資本によって一体化された旅行会社、観光バス、ガイド、ホテル、レストラン、土産物屋等の業者のこと。これらの独占で台湾の業者が恩恵にあずかれないのが問題になっているところだ。日テレのいう「大きな影響」とは主に、そのような業者なのだ。

だから台湾国内ではデモに冷ややかな声が多い。「百万」などと鳴り物入りではあったが、当日集まったのは一万人にも満たなかったのではないか(警察発表では一万人らしい)。

■デモが掲げたスローガンは習近平のセリフと同じ

それはともかく、日テレ報道で注意したいのは、デモでは「両岸は一つの家族のように親しい」と書かれた旗が出され、台中の「関係改善」が求められたという点だ。

この「両岸一家親」(両岸は一つの家族のように親しい)とは、特に二〇一四年以降、中国の習近平主席が台湾籠絡工作の上でしばしば口にし、話題になってきた言葉でもある。

例えばその年の五月、台湾の宋楚瑜・親民党主席と会見した際、こんな発言を行っている。

「我々は両岸一家親という理念から出発しさえすれば、解消できない蟠りはなく、克服できない困難もない」

これに対して宋楚瑜はまるで臣下の如く、こう応じているのだ。

「親民党は、両岸は一つの中国であるとの立場を堅持し、台湾独立には反対するとの基本的信念を揺るがせたことはない。両岸一家親の理念に基づき、中華の夢という共通の理想を実現するため努力したい」

■実は中国の謀略と歩調を合わせる政治活動

今回のデモは、やはり中国の忠臣の如き勢力が、あの国の意向を受けて実施されたデモではなかったか。

実は計画当初、デモの目的は、民進党政権に対し九二年合意の受け入れを求めることにおかれていたそうだ。

この九二年合意とは、「一つの中国」での台中間の合意とされるもので、合意が実際にあったかは疑問だが、少なくとも中国は、これを対中交流の政治的基礎と位置付け、それを受け入れない民進党政権に交流停止という報復を行っている訳だ。

しかしそのような要求を前面に出せば政治的色彩が強くなるということで、観光業界の「生存、仕事」等々の要求に切り替えたのだった。

もっともデモでは「九二年合意」の受諾を求める声は上がったし、「両岸一家親」のスローガンも掲げられた訳である。

中国が台湾に大量の観光ツアーを送り込むのは「以商囲政」(台湾で経済界を促し政府を包囲する)という謀略に基づくもので、台湾の観光業界の対中依存度を過度に高めさせ、その上で台湾政権に圧力を加え、政策変更を余儀なくさせようと狙ってきた。そして今回のデモなどは、まさにその「囲政」の一環だったということだろう。

それにしても、中国は千数百基ものミサイルを台湾に向けながら、何が「一家親」だろうか。

まるで発達障害の如く、他国民の感情をいつまでも理解できないのが中国という国だ。「一家親」なる言葉にしても、多くの台湾国民がそれに嫌悪感を抱いていることを、いつまでもわからないでいるらしい。

そしてもしや日テレまでもが、そういったことに気付かずにいるのだろうか。

もし今回のデモを台中の「関係改善」を民進党政権に訴えるものとして好意的に取り上げたのであるなら、やはりこのテレビ局は中国の宣伝に惑わされ続けているとしか言えないのである。


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