【台湾有情】打倒共匪が懐かしい?

【台湾有情】打倒共匪が懐かしい?

2013.2.8 産経新聞

 官民ともに「財政難」「忘年会は自粛」といいつつも、9日からの春節(旧正月)の9連休を前に、台北の街は「年の瀬」らしい活気に包まれている。

 週末、食料品や衣料品の老舗が並ぶ市西部の迪化街などを歩いたが、カラスミや干しアワビ、菓子、正月飾りなどを求める人々の行列で汗ばむほどの雑踏だった。

 そんな中で、一体誰が買うのかと、ドキッとさせられる商品に出くわした。

 「解救大陸同胞」(大陸同胞を救え)「保密防諜」(スパイご用心)に始まり、中国への敵愾(てきがい)心を込めた「打倒万悪共匪」など、かつての戒厳令下の台湾の標語ステッカーがそれだ。

 店のおやじさんに「陸客(中国人観光客)が面白がって買うんだよ」といわれて気づいたが、身近で庶民的な繁華街や夜店街にも、最近は中国人観光客の姿が少なくない。

 昨年1年間に中国から台湾を訪れた旅客は約260万人で台湾から中国は314万人。これに次ぐのが日本から台湾の143万人と台湾から日本の156万人だが、万事「中国」の比重は大きくなりつつある。

 「日本人も日本(統治)時代の建物を見て回ったりするじゃないか。それと同じで一種の郷愁だよ」といわれたが、そういわれると、近いような、イヤ、全く違うような…。(吉村剛史)

参考 「中国ガン・台湾人医師の処方箋」P215より

http://www.amazon.co.jp/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%82%AC%E3%83%B3-%E6%9E%97-%E5%BB%BA%E8%89%AF/dp/4890633006/ref=sr_1_2?ie=UTF8&qid=1356076869&sr=8-2

 もう一つ、中国人観光客が興味を示すのは、台湾の反中国的な部分である。さまざまな中国批判や共産党批判の書物、毛沢東の宿敵である蒋介石の記念堂、あちこちで出会う法輪功の反共産党宣伝ビラなど、中国で見ることのできない政治思想や歴史記述が彼らの目を引いている。

 このような発見は、単に一外国での新鮮な見聞だけではなく、そこにあるのは自分に関係する歴史の真実である。共産党も国民党も嘘つきな中国人体質だが、相手の悪口の部分なら信じられるのだ。台湾旅行がこのようなところで中国人たちにインパクトを与えていることは、おそらく中国の当局も予想しなかったのであろう。

 私も似たようなインパクトを経験している。戒厳令が敷かれていた一九八七年に日本に留学してきた私が最大の関心を持っていたのは、台湾で触れることのできない台湾の真実であった。

 台湾で禁止されていたいろいろな書物を読み進むにつれ、長年、自分を騙してきた国民党政権への憎悪がさらに深まり、それが私の台湾独立建国運動への参加につながった。台湾で中国共産党に関する文献や書物に触れる中国人も、同じような気持ちではなかろうか。

 こうして台湾は、中国政府の思わぬところで中国の変化を促している。中国にとって台湾は「美味しい獲物」から「扱いにくい厄介者」に変身しつつあるのだ。


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