【中国ガン】中華帝国の分割は中国人のため

中国ガン】中華帝国の分割は中国人のため

中国ガン・台湾人医師の処方箋」より(林 建良著、並木書房出版)

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中華帝国の分割は世界にとってはもちろんよいことだが、中国人にとってもよいことだろう。帝国を維持することは、莫大なコストがかかるだけでなく、軍事拡充の誘惑に駆られてしまう。当然それによって警戒され、敵も多くなる。だから、さらに軍事拡大路線に走らなければならない。

独裁国家であれば、危険要素がさらに多くなる。独裁体制なら行政も不透明だから、汚職の余地が生まれる。中国ほど大きい国であれば、中央から地方までの行政は何重にもなり、行政の効率が悪いだけでなく、腐敗の温床にもなっている。だから、適正な規模の国になれば、行政が行き届きやすくなるし、腐敗の要素も減るのだ。

一つの中国から複数の国々になれば、互いに牽制し合うため、帝国の要素が消えてしまい、危険性もかなり低減する。それだけでなく、複数の国として競い合うことになれば、自国民へのサービス向上につながる。これこそ胡錦濤が唱えた「和諧社会」(調和のとれた社会)になれるのだ。

面積以外に、中国とヨーロッパのもう一つの類似点は「陸続き」ということである。つまり、基本的に、いま住んでいるところが好ましくないと思えば、他の地域に移ることができる。これが良い意味での競争を生むのである。

中国の歴史を見ると、統一の時代よりも分裂の時代の方が長く、人民にとっては統一時代よりも分裂時代の方が幸福だという側面がある。国の力が弱い方が、富は国ではなく民に集中するからだ。これだけでも、分裂こそが中国を無害化する有効にして現実的な方法であることがわかるだろう。

もちろん、汚職の受益者である中国の統治者は分割どころか、民主化さえも頑なに抵抗している。しかし、民主化への抵抗は分割への抵抗でもある。民主化の行き着くところは中国の分裂であることは彼ら自身がよくわかっている。だから、あらゆる手段を使って、民主化運動を抑え込むのだ。

しかし、一握りの人間の利益のために多数の国民に犠牲を強いる今の中国の統治手法はどう見ても長続きしない。

●烏坎村事件勝利の三つの要素

実は、そんな不合理な統治に穴を開けた例がある。広東省の烏坎(うかん)村である。
そのきっかけとなったのは、二〇一一年九月に起きた村の幹部による土地の不正転売に対する抗議事件だった。抗議の発起人である薛錦波氏が当局に逮捕され、すさまじい拷問の末、「心臓病発作」とされて死亡した。

薛錦波氏の死が村民をいっそう激怒させ、抗議活動を拡大させただけでなく、インターネットを通じて外国のマスコミにも支援を要請した。それが功を奏し、欧米のメディアが次々と現地に潜入して実情を詳しく報道した。この闘争は、結果として村民側の勝利に終わった。汚職幹部たちが更迭され、村民よる初の幹部選挙も二〇一二年の二月一日に行なわれ、抗議活動のリーダーが村長になった。

この烏坎村事件が中国に大きなインパクトを与え、中国の民主化に風穴を開けたと報道もされた。確かに、今まで中国で農地徴用に絡む抗議事件は数十万件にのぼるが、自治権まで勝ち取った例はなかった。しかし、これは村民たちだけの力で村の自治権を勝ち取ったというほど単純なものではない。

烏坎村事件の抗争成功は三つの要素が重なった結果と言えよう。一つ目は、インターネットを通じて映像を大量に流出させたこと。二つ目は、外国のマスコミが現地に潜入して報道したこと。三つ目は、汪洋・広東省書記がこの事件を薄煕来との権力闘争に利用したことである。

今回の事件解決の三点の要素の中では、恐らく三番目の汪洋の部分が一番重要な要因であろう。共産党青年団出身の汪洋は広東省書記になる前は重慶市書記だった。彼の後任となった太子党の薄煕来が汪洋のリベラル路線をことごとく否定し、「唱紅打黒」(革命歌を歌い、悪勢力を打倒)という保守的な共産党思想回帰路線を訴え、人気を得た。
だから烏坎村事件は、共産党路線と対極にある民主化路線で解決したという側面は否定できないが、民主化路線をこれから進めていくというよりは、薄煕来への「アテツケ」と考えた方がいいだろう。

ちなみに、その直後の二〇一二年三月に、薄煕来失脚事件が判明し国際社会を震撼させた。これもまた、団派(中国共産党青年団)と太子党(中国共産党高官の子弟)の権力闘争の一環と見てよい。

しかし、例え権力闘争の一環にせよ、民主化が権力闘争の道具になり、権力者たちが競って民主化を使うことで、結果として中国の民主化に拍車がかかるのだ。

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